ギャロウズ @ アストリア、ロンドン (29th Feb. '08)
命燃え尽きるまで
冒頭から予め断りをいれておくけれども、ギャロウズの音楽は決して万人が好むタイプのものではない。ゴリゴリに硬質で、緊迫感だけで支えられているようなサウンドも、シャウトやデス・ヴォイスまみれのヴォーカル・スタイルも、青少年の親御さんが小首を傾げたくなるくらい理解不能で、こんなの吠えてるだけで音楽じゃあ無い!とばっさり斬られておしまいだろう。優等生ポップスしか知らない彼女を持つ男児達には間違ってもデートに誘える類のライヴではない。じゃあどうしてそんな彼らをここで取り上げるのか。ギャロウズの豪速ライヴ・パフォーマンスと、それに全身全霊で熱く賛同する当地のキッズ達のパワーに圧倒されたからだ。今も昔も、マイノリティの音楽はこうして鬱屈を抱える青少年達が盛り上げていったのだ、と改めて英国人の負の力の強靭さを前にただただ感服するよりほかなかった。
パンクなんてなまっちょろいほどに、ギャロウズの音は剃刀のように鋭敏で、近づき難い恐さがある。別に切り刻まれそうだからというのではなく、気が立っているというか、獰猛な寅が5匹ステージ上で暴れている様な印象だ。激走するツイン・ギターが主軸をなしたハードコア、デス・メタル寄りの楽曲が目立つが、過去に彼らの前座にもなり、親交もあるというリーサル・ビズルというラッパーと組んだナンバーでは、一瞬リンキン・パークとジェイ・Zが昔競演した場面を思い出させたりもした。かといって、ギャロウズは彼らの様にキャッチィではないので、おどろおどろしさがほんのり和らぐ程度のラップに意表を突かれる程度だが、こういった異ジャンルの共演が、多様化する現代のロックをますます面白くさせていくのだな、と思う。つまり、ラップしか、ハードコアしか興味ない、なんぞと白けている場合ではなく、それを機に新たな発見を引き出してくれる糸口を、ミュージシャン自らが身を持って先導しているのだ
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単に暴れたくて、ダイヴしたくてたまたまギャロウズを観に来たキッズも多いのだろうと思う。また、その目に焼け付く入れ墨だらけのヴィジュアルが、何となく、悪くてズレていてクールだと若者の心を捉えているだけなのかもしれない。彼らにとってはこのライヴが鬱憤の捌け口でしかないとしても、ギャロウズは最初から最後まで全速力で走りきっていたし、息が上がるまでステージの上を乱舞していた。客席にいた一部のドラッグ中毒者による挑発にヴォーカルのフランクが本気になって怒りをあらわにするまで最高の盛り上がりを見せていた彼らのパフォーマンスに、ライヴの高い緊張感とスリルを久し振りに味わった。儚いバンド生命であるのは火を見るより明らかなのかもしれないが、この瞬間を熱く吐き出す彼らの姿は、今焼き付けてこそ。
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report and photos by kaori
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命燃え尽きるまで : (08/02/29 @ Astoria, London) : review & photos by kaori
食らえ、ライオット : (07/09/26 @ Electric Ballroom, London) : review & photos by kaori
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2008
命燃え尽きるまで : ギャロウズ : (29th Feb. @ アストリア, ロンドン)
みんなの、ミーカ : ミーカ : (28th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア, ロンドン)
2007
一等星はかがやく : パトリック・ウルフ (21st Dec. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア, ロンドン)
年忘れ音頭でヨヨイ : カイザー・チーフス (15th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン )
近未来の戦士達 : クラクソンズ (6th Dec. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン )
ゴス壇場の帝王 : マリリン・マンソン (5th Dec. @ ウェムブリィ・アリーナ、ロンドン)
隠れ最強ロック : ザ・ハイヴズ(23rd Nov. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
身近なプリンセス : ケイト・ナッシュ(13th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
結束したバンド力 : ザ・ナショナル(8th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
秋の夜長はシンズがいい : ザ・シンズ(7th Nov. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
今を燃やし尽くせ : エンター・シカリ(6th Nov. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
現役に勝る者無し : ザ・シャーラタンズ(5th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
醒めない夢のひとときよ : ルーファス・ウェインライト(31st Oct. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
飾り気無しの痛快ロック : ザ・クリブス(17th Oct. @ フォーラム、ロンドン)
四次元グルーヴ : バトルス(11th Oct. @ ココ、ロンドン)
グレイ・ゾーンを脱却して : エディターズ(8th Oct. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
大所帯カントリィ : ザ・ニュー・ポルノグラファーズ(4th Oct. @ ココ、ロンドン)
現代版、グラム・ロック : ザ・ダンディ・ウォーホルズ(3rd Oct. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
痙攣ギターの暴走は止まらない : フォールズ(2nd Oct. @ スカラ、ロンドン)
食らえ、ライオット : ギャロウズ(26th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
おしゃべりさえも歌になる : ファイスト(24th Sept. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
マイノリティの救世主 : ザ・ゴシップ(14th Sept. @ フォーラム、ロンドン)
どうした!?ゴー!チーム : ザ・ゴー!チーム(12th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
せつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
やんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
あまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
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