buttonハンバート・ハンバート
@ 心斎橋クラブクアトロ (24th Feb. '08)

声の魅力に出合った夜

Humbert Humbert
 静かに登場した2人の、特に、出産を間近に控えていた佐野遊穂に集まるオーディエンスの視線。だが、それから間もなく1曲目の"喪に服すとき"が始まれば、集まった人々の集中はすぐに目から耳へと切り替わっていった。まさに、心奪われる音。そんな至福の時間が、この日も佐藤良成のフィドルから始まった。

Humbert Humbert ふたりだけでステージに立つ、ハンバートハンバート春公演「おいらの船」の最終日。他公演同様ソールドアウトとなった心斎橋クアトロの観客はあたたかく彼らを迎え、そして静かに聴き入ろうとする姿勢を見せている。「大好きな大阪で行うことができて嬉しいです」という佐野のMCも、きっと素直な気持ちからの言葉に違いない。

 セットリストは東京とほぼ同じで、最小限の構成によるシンプルな、それゆえにメロディーがオーディエンスへ明確に伝わるようなセットである。ほぼ半数がリリース前であることは特に関係ないといった様子で、オーディエンスは目を閉じて静かに音を取り込んだり、手拍子を入れたり、歌詞に合わせて口を動かしたり……思い思いの時間の過ごし方でいる様子が見て取れる。誰も彼も、眉間にしわなど入っちゃいない。そのひとときを生んでいるのが、観客の前に立つ2人からの心地よい音なのだ。

Humbert Humbert 彼らの魅力はそれだけではない。演奏された新曲のうちの1つ"蝙蝠傘"は、1人がつぶやき1人が歌うというスタイルのもので、同じく新曲の"バビロン"は、並んだ2人から左右別々の歌詞が同時に歌われた。それら新曲や、会話のような形でふたりの物語を歌う"おなじ話"のように、ハンバートハンバートは、歌の良し悪しが単にメロディーのそれだけでないことを教えてくれる。ギターや笛、ハミングに乗る言葉の不思議さ面白さ、それが出てきた時の小気味よさを私が知ったのは、彼らのステージに対峙してからのことだ。言葉と音 -- その両方を声は持っていて、それを操ることで聴き手をどうかしてしまうのが歌い手というものであり、なにより彼らハンバートハンバートなのだろう。

 歌詞の間違いなど、多少ラフな展開も垣間見せつつ18曲を歌い上げ、声の魅力に酔いしれるには十分な時間が終わり、アンコールは“おいらの船”から“If I had a hammer(イフ・アイ・ハド・ア・ハンマー)”の流れでリズムを弾ませる。そして最後は“旅の終わり”で笛の音色に郷愁を混ぜて聴かせた…というのは当初セットリストに印字されていた流れだが、おそらく急きょ決まったのであろう、リストには手書きで1曲が書き加えられていた。

Humbert Humbert 前日に大阪で行われていたライブで佐藤がゲスト参加したお返しか、キセルがステージに登場。演奏された曲は、従来よりお互いがカバーしているので馴染み深き「先輩」・高田渡の"ブラザー軒"。過去のリリース作品にて既に歌われているものだが、キセル辻村兄弟のノコギリとギターが仲間に加わったことで、浮遊感(高田風に言うなれば酔いどれ感)が増していた。

 現在、佐野の産休に伴ってハンバートハンバートは活動を休止している。期待されるニューアルバムは6〜7月ごろ発売の予定だそうだが、下北沢ラ・カーニャを始め、佐藤は頻繁にソロライブを行っているので、我慢できなくなれば是非そちらへ。次のライブは9月ごろの予定なので、秋めいた街にお似合いの音が届く日もそんなに遠くはなさそうだ。


-- set list - -原文ママ)

喪に服すとき / アメリカの恋人 / 蝙蝠傘 / 怪物 / 日が落ちるまで / 白夜 / おなじ話 / どこまでも一緒よ / 透明人間

-- break --

長いこと待っていたんだ / 街の灯 / 大宴会 / 願い / 天井 / 国語 / バビロン / メッセージ

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おいらの船〜If I had a hammer(Peter Paul and Mary) / ブラザー軒 with キセル / 旅の終わり
Humbert Humbert
report by ryoji and photos by funabashi
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