デジタリズム @ 渋谷AX (19th Feb. '08)
スパ! デジタリズム
機材にグルリと囲まれながらも、左端にはエレクトロドラムを叩きまくるイシュマルの姿、中央に配置されたマイクで堂々と歌うジェンス。ロックバンドそのものを感じさせるクロスオーヴァーなデジタリズムのステージスタイルは、もはや衝撃というよりも近い将来のスタンダードを感じさせ、ちょっと感動。
オーディエンスのほうが準備できてない空気なのに、いきなり2曲目でサクッと"I Want I Want" 演奏しちゃったりするKYな部分も好印象だったり。忘れられないギターのイントロ、ちょっと切ない美メロで繰り返されるAm I not always be wanting this?のフレーズで否が応にも盛り上がる。ドイツっぽいハンマービートにちょっとヘッポコなジェンスのヴォーカルが絡んで絶妙なかっこよさ。かっこいいといえば、デジタリズムは世界有数のオシャレ・レーベルであるキツネ所属のアーティスト。キツネと言えば音楽のみならずファッション界とのコラボレイションも盛んなフランスのオシャレ・レーベルなのは周知の通り。しかしながら、イシュマルとジェンスの二人には、正直オシャレさの片鱗すらもない。特にイシュマルはこの日ストーンズの顔Tを着用、ステージを駆け回る彼の巨体と揺れる肉にハラ踊りの面影を見てしまったのは私だけではないと思う。まあ、オシャレというものは頑張ればガンバルほどにかっこ悪くなるという皮肉なシロモノなので、今のままでよいのかもしれないです。それに、幸い、ファッションと違って音楽というものは努力がそのまま作品に反映されるものだから。
"Apologize"を挟んでキラーチューンの"Pogo"では文字どおりポゴダンスがフロア中で炸裂。Yeah, woohooを合言葉にハッピーと切なさとが空気感染してAXにいる誰もが踊らずにはいられない。
歌モノの続く前半から、後半は"Idealistic"、名曲"Ztarright"と、クラブのり全開。歌モノもいいけど、それだけがデジタリズムじゃないんだゾとばかりに反復ビートとスペイシーな音の応酬で圧倒してくる。やっぱドイツだな!ってくらいゴン太いサウンドの威圧感はお見事なんだけど、シリアスすぎないのが彼らの最大の魅力。ガチガチでないラフなチャーミングさは、まさに今の空気感だ。彼らのSF世界を表現するようなビジュアルとともに、どっぷりとレトロスペイシーな世界に連れて行かれる。好きな音楽でモヤモヤを吹き飛ばしてくれて、汗もかいて、デトックスされて、これで5800円なんてエステより安くてよっぽど良いのでは?と、思わず、頭の中で電卓叩いてしまった。そんなヨコシマな考えをよそに、世界とともに五臓六腑が開いていくような錯覚を感じさせる"Jupiter Room"でシメ。美しいラストをありがとう。
ダンスミュージックとロックの垣根を壊して、ボーダーレスなサウンドを提供するアーティストが世の中を席巻してくれて、どっちにも片足突っ込んでいる人に、このムーヴメントは嬉しい今日この頃である。デジタリズムは間違いなくそんなシーンを牽引するアーティストだと思う。この手のシーンをひとまとめにして「ニューレイヴ」などという新たなジャンルをメディアがこぞって使いたがるけれど、シーンを大きくしたいなら、名称をどうにかしたほうが良いんじゃないかなあ?個人的にはそんなダサいネーミングのジャンルに自分の好きなアーティストが放り込まれるのが甚だ不満である。
1時間弱という、あっという間のステージに少々あっけなさも感じてしまったのは私だけではないようで、照明がついて撤収舞台がチラチラとステージに現れても、フロアのそこかしこで「アンコール!チャチャチャッ!」と盛り上がっていた。いよいよ追い出し気味にフロアに音楽がかかると「えぇ〜〜っ?!」のどよめき。この残念オーラに溢れたどよめき、久々に聞いた気がします。とはいえ、短いながらもデジタリズムのエッセンスは凝縮され濃厚に味わえたのは言うまでもないのだけど。
この日はキツネの主宰者、ジルダのDJセットもあり、さすがジルダ!という盛り上げ方がハンパないキラーチューンぶりであった。ブルースブラザーズにプロディジーをマッシュアップさせ、ダフトパンクからクラクソンズのマイピープルと、パーティー百戦錬磨の面目躍如といった楽しさで躍らせてくれた。
-- set list - -
ANYTHING NEW / I WANT I WANT / APOLOGIZE / POGO / MAGNETS / MOONLIGHT / ECHOES / HOMEZONE / IDEALISTIC / ZDARLIGHT / DIGITALISM IN CAIRO / JUPITER ROOM
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