buttonスフィアン・スティーヴンス
@ 渋谷クラブクアトロ (22nd Jan '08)

スフィアン劇場日本初お披露目!


Sufjan Stevens
 アメリカはミシガン州デトロイト(アメリカ北中部)から、ちょっと地味ながら、けれど確実に発信されていた彼の繊細で壮大な音楽は、昨年公開されヒットした映画「リトル・ミス・サンシャイン」でもメインテーマとして使われた事もあり、徐々に日本にも広がりつつあったわけではありますが、まさかクアトロがソールドアウトになっていたとは!……会場に着くと、当日券を求める紙を持った人達が入り口付近に張り付いていた事に、まずは驚かされる。

Sufjan Stevens それから、SMASHのサイトには4人しか同行メンバーの名前が無かったので、多くの人も今回はコンパクトな編成なのかな?と思っていたとは思うのですが、まさかの大所帯編成!これもまた嬉しいサプライズであった。(どうも後から聞くところによると、大阪公演のホーン・セクションは2名だったようですが、東京では丁度同時期に来日していたルーファス・ウェインライトのバンドメンバーが急遽加わった模様でした)

 そんなホーンセクション(トランペット、サックス、ホルン、クラリネット etc.)は多い時で5名、それから、ドラム、ベース、女性ギターが2名、そして中心にはスフィアン・スティーブンス……合計10名なるにぎやかさ。あと曲間の途中で現れた謎のダンシング電子フラフープマンも加えると総勢11名のキャストになるのだった。ついに本邦初公開、スフィアン劇場がゆっくりと始まった……。

Sufjan Stevens 楽器の配置も実にゴージャスで圧倒される。ドラムセットの前には贅沢にグランド・ピアノが置かれ(このピアノはスフィアンが弾いたり、ベース&ギター&ヴォーカルのケイシー・フォーバート、ギター&オルガン&ヴォーカルのシャラ・ウォーデンも数曲弾いた)、また、アニー・クラークは曲によってギターとベースを持ち替えたり、スフィアン本人はアコギ、バンジョーなどを巧みに操りつつ、一人一人がマルチ・プレイヤーぶりを如何なく発揮することで、スフィアンの持つファンタジックな音楽的劇世界を見事に表現していた。

 ※アニー・クラークはポリフォニック・スプリーのメンバーでもあり、また自身のソロプロジェクト「セイント・ヴィンセント」でも活動。シャラ・ウォーデンはこの日のオープニングアクト「マイ・ブライテスト・ダイアモンド」を率いるヴォーカリストでもある。ケイシー・フォーバートはベース以外にもギターやドラムも巧みに操り、過去には数々のアーティストのプロデュースも行っている人物なのだ。

Sufjan Stevens そんなバンド編成を前に歌うスフィアンの歌声は、CDなどの音源で聴くよりもずっと甘くハスキー、かつ非常にウィスパー・ヴォイスだ。空調の音が聞えそうなくらいに静かでアコースティックな演奏もあれば、ホーンやノイズ・ギターを中心に全員がフルトーンで音をかき鳴らす時の音圧の激しさもある。応じる観客はじっと物音も立てずにひたすら聴き入る時もあれば、口笛や裏声や拍手で騒ぎ立てる時もある。非常に何というかダイナミックレンジ(音域の幅)が広いライヴであった。不協な音のカオスと美しく彩るハーモニーの対比もとても際立っていた。どちらかといえばスローでなだらかな曲調が多い中、見事なメリハリで展開するスフィアンワールドを体感する。雄大なるミシガンやイリノイの大自然や神話世界を愛する彼の、作家というだけではなく、音楽家としての一面を見る。

 度々、孤高の天才とも表される彼を、僕はじっと見つめる。想像していたよりもごく普通の青年風な男。まるでそこいらのガソリン・スタンドで働いている店員のように飾りっ気の無い愛嬌のある表情だ。マイクに向かってボソボソっと喋る、自分の生い立ちのことや、ミシガン州やイリノイ州や五大湖のことや、ゴミを燃やした話や、車の話などを、隣の友達に話しかけるようにとつとつと話していたからかもしれない。(そんな彼の話をクラリネット奏者のヒデアキさんなる男性メンバーがかなりアバウトな翻訳をするのですが、この悪意の無い適当翻訳のおかげで場内はやたら笑いに包まれ、終始暖かい空気が流れていた)

Sufjan Stevens 全員がお揃いで着ているカラフルな蛍光柄のTシャツ(まるで科学警備隊のような)をはじめ、ビジュアル面にも気を配る彼らは、音そのものプラス表現としての音楽というものも、非常に大事にしていることがよくわかった。例えば、"Come on! Feel the Illinoise!(カモン!フィール・ザ・イリノイ!)"の時にはフラフープ男がこの時のためだけに登場したり、あれは目が不自由な人を体現したのだろうか、"Jacksonville(ジャクソンビル)"の時には全員がサングラスをかけて演奏をしたり、さらに後半、"Majesty Snowbird(マジェスティ・スノーバード)"という鳥の名の歌が始まると、メンバー全員が背中に大きくカラフルな手作りの羽をつけての演奏が行われた。ここからの美しさはもはや感無量。ラストは名曲"Chicago(シカゴ)"。この日この会場にいた全員が、スフィアン劇場のクライマックスに心奪われる瞬間であった。

 作家としてのカリスマ性もさることながら、音楽(音色)的な多彩さ(いったい僕らはどれだけの音を聴き取れただろうか?)、さらにはそんなビジュアル面での演出も意外と 凝っていて、想像していたよりもずっとパフォーマー、エンターテナーとしてのスフィアン・スティーブンスを存分に魅せてくれた1時間50分だった。その表情から、彼自身もこの日本での演奏を大いに楽しんだだろうと想像する。今回目撃した人も、見逃してしまった人も、もう一度スフィアンに会える事を願いつつ、CDを聴いて夢想したり、難しい歌詞も頑張って読むなどして、再び日本にやって来てくれることを楽しみに待ちましょう。うーん、野外での演奏なんか猛烈に似合うと思うんですけど!


-- setlist --
The Predatory Wasp Of The Palisades Is Out To Get Us! / The Upper Penisula / The Avalanche / Detroit, Lift Up Your Weary Head! / Casimir Pulaski Day / Concerning the UFO Sighting Ne / The Black Hawk War / Come on! Feel the Illinoise! / John Wayne Gacy, Jr. / Jacksonville / Seven Swans / Barn Owl, Night Killer / Majesty Snowbird / Chicago

-- encore --

The Dress Looks Nice On You
Sufjan Stevens


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"Songs for Christmas " (UK Import / UK import: Enhanced / iTunes)
"Illinoise" (国内盤 / US Import / US import: 12 inch / UK import / UK import: 12 inch)
"A Sun Came!" (US Import / iTunes)
"Seven Swans" (US import / iTunes)
"Greetings from Michigan" (国内盤 / US import)
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