クーラ・シェイカー @ 渋谷AX(17th Jan '08)
クリスピアンは帰ってきたのか
渋谷AXは満員だった。やはりバンド全盛期を体験したリアルタイマーたちが集まってきたようだった。始まる前には、もっと古めの曲が流れている。ビートルズの"Within You Without You"(もしかしたら"Love You To"かも。どちらにせよインド風ということで)や"Flying"かかっていた。クリスピアン・ミルズのインド趣味を考えれば当たり前のような選曲だ。
これだけ人を集めることができるのも、90年代当時の記憶があるからだ。当時のクーラ・シェーカーは「発明」もしくは「発見」だった。"ディープ・パープルのヴァージョン"で有名な"Hush"を見事にカヴァーしたことから分かるように、単なる古いロックを再現しているのではなく、その当時のロックの中に眠っているグルーヴを引き出したのだ。それはどのバンドより群を抜いていたし、クリスピアンの王子様的ルックスも相俟って、2ndアルバムのころでは本国と日本での人気が逆転してしまった。
前座があったので20時ころに歓声に包まれてバンドが登場。まずは、どっしりと"Sound of Drums"で始まる。そして早くも"Hey Dude"で加速がついた。おおおおおっ! ここから勢いよく畳み掛けるのかと思ったら、どうもレッドゾーンまで振り切れない感じがする。1999年の壮絶なライヴを目撃してしまった者としては、もっと、こうなんというかぐーーーーっと圧倒される彼らを観てみたいと思ったのだ。06、07のフジロックで観れなかった分も取り戻したいこともあり、期待度はMAXまで上がっていたので、ちょっとのことでは満足しないぞという前のめりの気持ちもあった。
「キックアウトザジャムズ! マザーーーフ○ッカー!!!」という叫び声からMC5の"Kick Out The Jams"のカヴァーに突入して、ハードでガレージでパンクなロックをみせてくれた。だが、ストレートなロック過ぎて、昔のイメージを持っていると戸惑う気持ちもある。だけど、濃厚なサイケデリックなテイストがある"Mystical Machine Gun"やインド風味の"Tattva"には、やっぱりジーヴァスでない、クーラでないと出せない音があるんだなと再確認する。それからクリスピアンの立ち居振る舞いは、まさしく王子様でやっぱこの人は持って生まれたものがあるんだなと感じるし、Hushの前に日本語で「イチ、ニー、サン、シッ!!!」という掛け声かけたり、ハーモニカを取り出して何気にハッピーマンデーズの"Hallelujah"をやったりとサービス精神は十分。お客さんの歓声がすさまじい。カリブーの"Melody Day"、ダニエル・ジョンストン"True Love Will Find You In The End"のカヴァーも披露する。
文句なく盛り上がったのはやっぱり"Hush"で、このグルーヴと勢いが以前のクーラにあったし、おれが求めているものなのだ。だから、この勢いを持続させて、もっと圧倒的な世界観で、未知の領域にあるものを見せて欲しかった。そしてアンコールの"Govinda"は、「ゴーヴィンダ〜、ジャイナ〜ジャイナ〜」というサンスクリット語で歌われるクーラの中で最もインド的な曲で、フロアのお客さんたちが一斉に手を挙げてヒラヒラと舞わせる。それはやっぱりクーラを待っていたんだ、単なるギターロックではない、インドでサイケデリックでグルーヴィーなあの音を求めているのだという反応の現われだと思う。こうして戻ってきたクーラを観るのはとても嬉しい。だけど、やっぱり有無を言わせない迫力が、かつての彼らにはあった。かつては音楽を通して新たな世界をみせてくれるのではないかというマジックを感じることができた。だから、もう一歩なのだ。バンドの完全復活には越えるべきハードルがまだあるのではないかと感じてしまうのも事実である。このライヴが最強のグルーヴを生み出すバンドになるまでの過程であると信じたい。
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report by nob and photos by terumi
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