カリブー @ 代官山ユニット (13th Jan '08)
完全敗北宣言
ここに、私は完全敗北宣言をする。相手は言うまでもなく、本日の主役、カリブー。私はあっさり、完全に観るも無惨に敗北した。ただ、気分はすこぶるいい。この敗北劇をその場にいなかった残念な皆さんに直々に、懇々と伝えたい、そんな格別に爽快な敗北感だ。
週末は東京でも初雪を観測するかもしれないという、嬉しくない天気予報にしっかりと着込んで関西から出向くも、徹底的に冷やされたアスファルトは足下からぐんぐんと身体を冷やしていく。そりゃあこれだけ空気も冷えれば、東京の空も澄み渡り、いつもよりも何倍もの遠くまで見えてくる気がする。寒さの代わりにくれたのは、上質のグラデーションだった。向かい合わせのドラムが2台、足下にはパソコン、キーボード2台、ギターにベース……それらの楽器がステージ正面を向かずに、中央に円を描かれるようにセッティングされていくだけで、何だか今日は新年早々から特別なステージが観られるのかもしれないという心地よい緊張感が走り、寒さで丸くなっていた背筋をしゃきっとさせてくれる。
ご主人様を迎えた2台のドラムが脈を打つのに時は必要なく、『アンドラ』のオープニング曲でもある"メロディ・デイ"で惜しげもなく、叩き乱れるツイン・ドラムの嵐に見舞われるのであった。それは嵐どころか、凍てつく氷の世界をもろともに崩してしまうほどの迫力なのだから! 耳から入ってきた音が逆流して鼓膜をもう一度振動し直させ、胃にどっぶり浸透したベース音がとんでもない早さで鼻へ、脳へとおかしな導線を引いていく不思議な感覚に教われた。それと反比例するアンディとダンの透明でポップなハーモニーの融合は完全に食い合わせが悪いはずなのに、身体を駆け巡ると中和される心地よさが待っているのだった。
これは極上のダンスミュージックである……そう思わされるのも、入り組んだリズムを叩きだすドラムとベースを核として描かれ、構築されていくカリブーの音楽は、見ているこちら側の一人ひとりに、リズムの取り方を完全に委ねてくれるからだ。ある者はバスドラのタイミングで頭を縦に振り、ある者は揺らめくギターに身体を横に揺ら、不自然なほど高い位置に構えられたギターが描く曲線に見入る。アーティスト側からの、自分たちの音楽はこうやってこう聴き、こう観るのが正解という厚かましさや勘違いが一切ない、この自由さが最高に心地よい。音楽は頭で聴くものではなく、身体で感じるもの。そういうアーティストとオーディエンスとの相互関係が目の前にあった。そして私もそのなかにいたのだった。
スクリーンに映し出された赤、黄、青、緑のウィルスを連想させる物体が解け合い、最終的には白一色に変化する。プロジェクターからの映像がスクリーンに達するまでにメンバーの全身を柄に染め、時として精巧に造られた人造人間の中身が透けて見えてしまったようにも見えてくる。映像と音がリンクし、目に見えるモノ、聞こえるモノ、すべてが白色に染まり昇華していった。完全完敗……終わった後に残ったのは完全敗北感でありながらも、そういう敗北感なら何度でも受けてみたいと純粋に思わされるものだった。もう一度、ここに私は、完全敗北宣言をする。
シチュエーションは野外で、日が落ちる頃かいっそ闇に包まれた時間帯……もう一度チャンスがあるのなら、こういうのはどうだろうか? きっと私はまた完全敗北宣言をするに違いない。
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report by kuniko and photos by izumikuma
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