buttonパトリック・ウルフ
@ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン (21th Dec. '07)

一等星はかがやく


Patrick Wolf
 今年の春に衝撃的なライヴ体験をして以来、パトリック・ウルフに魅せられ続けてきた。古典的な弦楽器とエレクトロニカを織り交ぜた極上の音の世界は、彼にしかなし得ない唯一無比の表現であり、自信に満ち溢れたその歌声と濃厚なファッション・センスも含め、一度目にし、耳にすれば決して忘れる事の出来ない強烈な印象を我々に与える。それが個々人の好みに合うかどうかは別にしても、その徹底したアーティスト魂ともいうべき存在感が今日の音楽シーンでとりわけ異彩を放っているのは、恐らく多くの人が認めるところだろう。クリスマス休暇の迫った今夜、シェファーズ・ブッシュ・エンパイアはそんなパトリックの今年最後の勇姿を観ようという若者達で溢れ返った。
Patrick Wolf 前半はソロ、後半はフル・バンドを従えた二部構成のショウとなった今回の公演、ピアノやヴィオラの流麗な調べにパトリックの深い歌声がとけ、甘く優しい空間をもたらした一人きりの演奏では静の世界が、セットを一新し、得意のお色直しならぬ衣装替えを済ませた後半は、軽快なポップスを中心とした、スケールの大きい、溌剌な動の世界で観る者をパトリック・ワールドへとぐいぐい引き込んでゆく。靴を脱いでは狭いステージを飛び跳ね、床に寝転びしばし空を見つめたりと、その予測不可能な動きと共にころころと変わる様々な表情は、だからそれを観賞するこちら側も飽きること無く時間を忘れて楽しめるのだ。

 バンドと違い、一人のパフォーマーであるとどうしても一定時間を過ぎると全てが同じ様に見えてしまったり聴こえてくる事が多いが、パトリックの場合は魅せるという事を心得たこの表現が、まじないでもかけたかの様にライヴに活き活きとした生命を吹き込み、そこに特別な感動と胸の昂りが生まれる。究極にアーティスティックで現実離れはしているけれど、決して聴き手を置き去りにするのではなく、一緒にこのひとときを共有しようというひらけた佇まいこそが、10代の若者を中心とした多くのファンに支持される所以だろう、と強く感じた。

 ファースト・アルバムから最新作まで幅広く演奏されたセット・リストも彼とファンの思いが詰まったであろう豊かな曲陣で占められ、メジャーになれど貫かれるその独創性は更に魅力を増し、今夜のショウもいつもながら、魅惑のパトリック満開な素晴らしいものであった。今まで応援して来てくれたファンの人々に感謝を表し、高級シャンペンを煽った彼は、来年以降、アルバム制作のためしばらく演奏活動からは離れるという。しばしの別れを惜しみ、けたたましく鳴り響くアンコールの声援に応えたパトリックは、最後にステージに倒れる様にして幕が降り、それがずっと己の道を走り続けてきた彼の第一章の終わりを暗示しているかのようでもあった。けれど向かう舞台がある限り、この星はずっと輝き続けるだろう。


Patrick Wolf
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