buttonマリリン・マンソン
@ ウェムブリー・アリーナ、ロンドン (5th Dec. '07)

ゴス壇場の帝王


Marilyn Manson
 ひとくちにロック・リスナーと言っても、まあ好みはそれぞれ違っていて、ハード・ロックやヘヴィ・メタルをこよなく愛する人や、オルタナティヴ、インディ路線にどっぷり漬かる人と色々あろうけれど、その嗜好が偏ってしまうのも自然な事で、俺、良いものは何でも聴くっス、なんて間口の広い聴き方、見方をする人はなかなか見当たらないのじゃないか。自分自身、広い視点で色々な音楽に耳を傾ける様に意識はしていても、好きで聴く音楽にはパターンが出来てしまう。ただ、単純に好きか、嫌いかで今後のディスク・コレクションに収まるか否かは必ずしも重要ではなく、時には普段自分の疎い、或いは興味の薄いジャンルというものを体験することで、考えが変わる、気づかされることもある。そして今夜のマリリン・マンソンがまさにそれ。90年半ばのハード・ロック低迷期に風穴を開けたセンセーショナルな登場時から今日まで、過激なヴィジュアルと挑発的パフォーマンスで、世界中から、特にアメリカで根強い人気を誇るバンドである。とはいっても、実質はフロントマンであるマンソンのワンマン・バンドで、フル・メンバーでのライヴを目にしなければ、単なるソロ・プロジェクトとしか感じられないところがあった。

Marilyn Manson  巨大ステージを覆う黒幕が垂れ下がり、マンソン登場。白粉3センチは積もっていそうな特濃メイクに、ゴスな衣装と、おどろおどろしさ満載。重厚で不穏なベース音が鳴り響き、金切り声のようなギターはマンソンのディストーションたっぷりの人口的ヴォイスに絡み続ける。この世の者とは思えない佇まいのマンソンに手を差し伸べる前列のファン達にとっては、彼の存在はカリズマティックであろうが、サウンドに関しては、例えばスリップノットやコーンらが鳴らすダークさ、ヘヴィさに通じ、ブラック・サバスを現代的に洗練したという印象で、別段変わった音を鳴らしているわけではない。ひたすらにマイナー・コードの続く楽曲は、不穏やネガティブな感情を煽る分かり易いものだけれど、同じ分かり易さとして、実は泣きのメロディ満載な曲もあり、特に最新作のアルバムではそういったナンバーが目立つ。恐ろしげで退廃的なイメージを装いながらも、ワビサビのあるメロディックな世界を聴かせる対比がいい。コワ面なのに、MCはひたすら"ロンドーン"と煽るだけで、普通のアイドルなんかよりもずっとおとなしいのが意外であった。。
 巨大椅子に乗ったり、機械仕掛けの人形の頭をもぎちぎったり、はてはアンコール時に彼らのパフォーマンスではもうお約束となっている、ナチス政権時のヒットラー演説を模倣した、演説台での聖書を燃やす場面など、いわゆる過激な見せ物、としての表現は未だに健在。と、いうよりもこれを辞めてしまえば彼らの存在意義は恐らくないのだろう。禁忌的なことを意図的に行い、当たり前のように反感は買えど、それにより人々の中にある欺瞞、偽善を暴き出す。こういう姿勢には好みがはっきり分かれてしまうだろうが、サウンドそのものはむしろ大衆性があり、そのせいか、彼の宗教観を含めた上で支持するアメリカの聴き手に比べ、キリスト教義には比較的ソフトなイギリス人のオーディエンスは、単にハード・コアのライヴで熱狂するロック・ファンという感じが強かった。目の前でビールっ腹をゆさゆささせながら終始笑顔で歌ってノっていたおじさん、ゴス・ロックに憧れる息子に同伴した母親。目に見えた光景は不穏などとはほど遠し。マリリン・マンソンにしろ、過去のアイコンにしろ、やはりロックの世界には強烈な人物ありき、だ。

-- setlist --

It Was Your Vampire / Disposable Teens / Mobscene / Irresponsible Hate Anthem / Just A Car Crash Away / Sweet Dreams / The Fight Song / Putting Holes In Happiness / Heart Shaped Glasses / Lunchbox / Rock Is Dead / The Dope Show / The Reflecting God

-- encore --

Anti Christsperstar / The Beautiful People


Marilyn Manson
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