buttonエイミー・マクドナルド
@ ULU、ロンドン (28th Nov. '07)

太い歌声、自慢です


 何やらイギリス国内では女性シンガー・ソングライターが活気づいている。先日ケイト・ナッシュの公演をレポートしたが、その彼女と同じくまだ二十歳そこそこのフレッシュ・ガール、エイミー・マクドナルドもそんな闊達としたニューカマーの一人だ。 公式サイトにて彼女のバイオグラフィーが御覧頂けるのだが、普通に色が白く、大きな瞳が印象的なキュートな女の子という外見に似合わず、どっぷりとした太く渋い歌声が印象的。同郷のシンガー・ソングライター、KTタンストールも、ごっつめなハスキィ・ヴォイスの持ち主だが、エイミーもなかなかどうしてそれに負けず劣らず腹に力の入ったというか、スモーキィなその声がいい。本日は彼女のライヴ・ショウがロンドン大学のスチューデント・ユニオンにて行われた。周りにひしめくは、ロンドン大学の学生というよりは、彼らの教授らに近いような高めの年齢層のお客さん達。中でも40代と見られる世代の男性が多い。

 バック・バンドを従えてステージに上がったエイミーが掻き鳴らずアコースティック・ギターは、硬質で、早いテンポに乗って威勢良く響き渡っている。その音に重なる歌声も先述した通り、野太く、演歌調ともまた違うけれどもこぶしが効いている、という表現が相応しい。紡ぐ言葉は違うけれども、ちょっと怨念の籠ったような歌唱表現には中島みゆきの世界が重なった。これは彼女の音源をチェックしていた時に感じたことなのだが、実際にライヴ・パフォーマンスを目にして、その印象は更に強いものに。さばけた佇まいにも好感が持てる。しかしながら、全体的なサウンドの特徴としては、軽快な90年代のオルタナティウ゛、或いはスタンダードなフォークの影響が強く窺えるものの、どの曲も胸にがっつりとくるここぞのメロディ、ウ"ァースに乏しい。或いはそれほどまでにキャッチィではなくとも、彼女の色が窺える様な節を感じたかった。時流に乗っている時はそれほど強力な個性が無くてもそこそこの話題性でアルバム1枚ぐらい製作できようが、その次を出すまでに同じ新鮮味、期待を聴き手に与え続ける事がどれだけ難儀であるか、過去から今へ遡る音楽シーンがそれを証明しているし、彼女を含めて今イギリスで人気の女性シンガーは大半が20代前半である以上、若さゆえの未熟さが音楽的な凡庸さの言い訳にはならない。

 そうは言っても、まあまだデビューしたばかりなのだし、ロック・バンドが押せ押せの活況ぶりならば、こうしてソロのアーティストが元気にどんどん前に出てくるのもいいことだ。彼女の素朴さは、パフォーマンス中に観客に語りかけるMCに現われていて、もうライヴ会場に対する印象から曲のタイトル説明まで口を開ければ剥き出しのスコティッシュ英語であった。それもそのはず、彼女はグラスゴー出身なのだ。この街で生まれ育ったミュージシャンはモグワイしかり、フランツ・フェルディナンドしかり訛りが強く、正直なところ、求む!通訳といった心情にさせられるが、逆に言えばそれに親しみ易さ、気取りの無さを感じる。メジャー・デビューしたからといって北訛りを直すでもなく、強烈なヴィジュアルで人目を引くのではなく、あるがままの自分で勝負する頼もしさ。地に足着いた姿勢で豊かな経験を積んだ先には、新たな開花を待つ才能が芽吹いているかもしれない。

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