buttonケイト・ナッシュ
@ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン (13th Nov. '07)

身近なプリンセス


Kate Nash
 去年の今頃からここ英国ではリリー・アレンとエイミー・ワインハウスという若き女性シンガーが音楽界に新風を吹き込み続けていた。もともとマイスペースで音源を世に発したリリーは父親が有名なコメディアンであり、DIY精神が生きたシンガーといえどそのバック・グラウンドゆえに本人の実力うんぬんに関わらず周囲の関心は高かった。かたやエイミーは複雑な家庭環境のもとで育ち、通っていた演劇学校も素行の悪さで退学させられるなどリリーとは対極な出自であり、今もドラックやアルコール絡みのネタでパパラッチの格好の餌食となり、多くのギグをキャンセルしたりと、せっかくの才能もいまいち活かしきれないでいる。そこへきて今年の夏以降に突如世の注目を浴び出したのが、ロンドン西部出身のシンガー・ソングライター、ケイト・ナッシュだ。弱冠20才の彼女は、ごく普通の家庭に生まれ、アート・スクールにこそ通ったものの専攻は演劇であり、母親にラップ・トップとギターをプレゼントされるまで作曲さえろくにしたことがなかったという。しかし、何がきっかけにして才能が花開くかは誰にも分からないもので、それ以降、彼女はこうして音楽活動を始め、セカンド・シングルが英国チャートにて初登場第2位と、とんでもなくラッキィな出だしを切ったのだ。

Kate Nash  目にした瞬間思わずこちらがのけ反るほどおもいっきり少女趣味に装飾されたステージは、まるでメルヘンの国である。花やウサギの置物、はては扇子まで置かれたキッチュでカラフルなステージが可愛らしく、いかにもガーリィ。リリー・アレンに負けず劣らずぽっちゃり体型なケイトではあるが、実際に舞台に上がった彼女は肌が雪のように白くとても可愛い。赤いチュチュを身に纏ったその姿は年齢そのものの若者という感じなのだけれど、ひとたび歌い始めたら想像以上に太く、かつ籠った独特の歌声に驚いた。これがあんまりルックスとマッチしないのである。低音を開拓したレジーナ・スペクターとでもいおうか。恋愛の悩みや、普通の女性誰もが感じるであろうありふれた気持ちを妙味ある韻や言葉遊びに交えて紡ぐ詩の感性が素晴らしく、文学的な高尚さをも漂わせている。それらが躍動感あるテンポの旋律に乗ってあくまでほのぼのと、ポジティヴにこちらへ響き素直に気持ちがいい。歌い方や感情表現がとてもアーティスティックなのに近寄り難さがまるでなく、むしろ一緒になって歌詞の一つ一つを歌いたくなる、そんな親しみ易さが彼女の音楽にはある。ピアノの弾き語りをベースにしながらも、バンド・サウンドをバックに、朗らかさと切なさを同居させたサウンドは、ポップスとしての大衆性を持ちつつ、決して大味に終わらない良いメロディを伝えている。
Kate Nash  観客は7割強の割合で女子多し、しかもフロントにはまだ20才にも満たないであろう夢見る少女風なグループが目立った。ケイトのパフォーマンスをきらきらとした瞳で見つめ、同じ気持ちを確かめ合う様にシング・アロングしている。何もかもを手に入れたくて、けれどもその欲しい何かが果たして何なのか本当は分からない不安定な年頃の少女達は、時としてそんな不安から逃げる様に自分の理想や憧れを他の誰かに投影し、そこに勇気や共鳴を見いだそうと願う。ケイト・ナッシュもある意味そんな風にして支持されているのかもしれない。音楽との出会いに目覚め、そこに自分の世界を作り出す喜びを見つけた彼女を観た人々にも、それぞれの勇気や幸せが生まれている事をつい願ってしまった。そんなの余計なお世話だろうが、とにもかくにもほんわかした幸福に包まれた夜。

-- setlist --

Play / Mariella / The Shit Song / Stitching Leggings / Skeleton Song / Caroline Is A Victim / Birds / Dickhead / Nicest Thing / We Get On / Mouthwash / Foundations / Merry Happy

-- encore --

Little Red / Pumpkin Soup


Kate Nash
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button身近なプリンセス : ケイト・ナッシュ(13th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button結束したバンド力 : ザ・ナショナル(8th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button秋の夜長はシンズがいい : ザ・シンズ(7th Nov. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
button今を燃やし尽くせ : エンター・シカリ(6th Nov. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
button現役に勝る者無し : ザ・シャーラタンズ(5th Nov. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button醒めない夢のひとときよ : ルーファス・ウェインライト(31st Oct. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
button飾り気無しの痛快ロック : ザ・クリブス(17th Oct. @ フォーラム、ロンドン)
button四次元グルーヴ : バトルス(11th Oct. @ ココ、ロンドン)
buttonグレイ・ゾーンを脱却して : エディターズ(8th Oct. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
button大所帯カントリィ : ザ・ニュー・ポルノグラファーズ(4th Oct. @ ココ、ロンドン)
button現代版、グラム・ロック : ザ・ダンディ・ウォーホルズ(3rd Oct. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
button痙攣ギターの暴走は止まらない : フォールズ(2nd Oct. @ スカラ、ロンドン)
button食らえ、ライオット : ギャロウズ(26th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
buttonおしゃべりさえも歌になる : ファイスト(24th Sept. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
buttonマイノリティの救世主 : ザ・ゴシップ(14th Sept. @ フォーラム、ロンドン)
buttonどうした!?ゴー!チーム : ザ・ゴー!チーム(12th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
buttonせつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
button健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
buttonやんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
buttonロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
buttonポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
buttonブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
buttonあまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
button可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
button宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
button悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
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button陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
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button夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
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button夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
buttonソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
buttonビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
button腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)


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