エンター・シカリ @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン (6th Nov. '07)
今を燃やし尽くせ
間違ってクラクソンズの会場に来ちゃったか知らん、と一瞬戸惑ったほど、フロントを締めるキッズ達が握りしめるグロウスティックスがまばゆい。もう、手に持つを通り越して、首や手首にも巻き付けてアクセサリィと同じである。シカーリ、シカーリ、と彼らの熱い声援がブリクストンにこだまし、もともとおどろおどろしい幽霊屋敷のようなこの会場のステージ前方には、エンター・シカリの演出か、大きなウルフの人形がそびえている。つい先日ハロウィンが終わったばかりだけれど、その名残りを感じさせる。ほどなくステージに現われたメンバーは、のっけから興奮度100%といった具合で、ドラムスとヴォーカルがいきなりダイヴに興じる一幕あり、序盤からメンバー一様に舞台を縦横無尽に駆け巡
り、スポーツさながらに動きの激しいライヴ展開。とにかく若いし動きが早く、それを目で追うこちらも必死である。はちゃめちゃに暴れながらも、思いの他演奏は上手く、ヴォーカル、ラウのハイ・トーンも伸びている。息も上がらずプレイにシフトできるあたりはさすがヤング。感情を爆発させながらも、それに観客を上手く巻き込み、彼らの興奮の渦を肌で感じて楽しんでいる風な余裕さえ漂う姿は、ヤングと言えどなかなか食えない。
イントロがいかにもヴァン・ヘイレンだったり、ところどころメガデスだのストラトヴァリウスだのといったヘヴィ・メタル系なアプローチの切り貼りが顕著だったり、と手法としては単に現存する異ジャンルをミックスした表層的で深みに欠けるものなのだが、そこにニューレイヴの蛍光色ぎらぎらな派手さをも加味、しまいにはリンキン・パークじゃないけれど、エモーショナルにお雄ぶラップもあり、現代っ子ならではの感性が生み出す多岐ジャンルのジグソーパズルとでもいうべくユニークなサウンドをぶちかます4人組、それがエンター・シカリなのである。どんな世界でも、開発したり新しいものを生み出すのはやったもん勝ち、早い者勝ちなところがあるもので、彼らにしてもこういう聴き捨てならない音をこうして世に送り出した意義は大きい。
前述したように、一つ一つを捲ってみると何て事はない既存の音楽ジャンルの継ぎ接ぎでしかないので、1枚目のアルバムでアイディア総放出、といえなくもない今の彼らが観せるギグは、楽しむ為の一時間強としては良いが、やはり10代の為のライヴという印象が強く、いい大人が観ても白けるか引くかのどちらかであろう。このまま同じ路線を貫いても先の展開が読める楽曲だけでは変わらぬ人気を維持するには苦しいものがある。今後どういった方向へ発展があるのかはちとまだ未知数だが、ただ彼らはまだ20代前半のぴちぴち男児である。ひょっとしたら周りが予想もしなかったほどの面白バンドになるかも知れないし、よしんば、これがティーンの一過性で移り気な支持に終わってしまっても、彼らが打ち出したレイヴの軽薄さと、それに反比例するごりごりメタルな凶暴性の共存するミクスチャー・サウンドは、ロック史の見開き半ページを埋めるぐらいのインパクトは十分にある。勿論、今の気概を持続した活動ができるに越した事はないけれど。
-- setlist --
Intro / Enter Shikari / The Feast / Return To Enegizer / Anything Can Happen / So You Come This Far? / Labyrinth / Be Vigilant / Acid Nation / Adieu / No Sssweet / Kicking Back / Johnny Sniper / Keep It On Ice / Insomnia / Mothership
-- encore --
Sorry You're Not A Winner / Ok Time For Plan B / Enter Shikari Reprise
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report and photos by kaori
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