button ケン・ヨコヤマ @ 横浜ベイホール (4th Nov. '07)

子供みたいな大人が鳴らす音楽


 最近、日本のロックシーンを牽引してきたバンド達がいい作品を連発している。ゆらゆら帝国の"空洞です。"やクロマニヨンズの"ケイブ・パーティー"はその長いキャリアを感じさせないぐらいのフレッシュな感動と野心を感じる作品だった。この2つの作品はそれぞれ作風も、雰囲気も全く異なるが、拭いされない共通点をどうしても感じてしまう。それは、ドンドンと余計なものを削り取っていっている事。そこには、この情報過多な世界に対する一つの皮肉を求めることが出来るのかもしれないが、単純に何を鳴らすべきかを悟ったような風情を強く感じている。

 そんな意味では横山健という人には悟りきった感じなんてものは全く受けない。9月にリリースされた3作目となったアルバム"サード・タイムズ・ア・タイム"もそうだった。こんな言い方が正しいのかどうかは分からないが、随分色気の多い人だと思う。そこそこに年を重ねたイイ大人なのに、これも欲しいあれも欲しいとねだる子供みたいなのである。

 だからなのか、やっぱりなのか彼のライブの年齢層はとても若い。平成生まれも巻込んでしまってそうな勢いである。もちろん、フロアはモッシュにダイブに大変な騒ぎである。まあ、これを悟り切ってない奴等のバカ騒ぎと片付けてしまうこともありなんだろうけど…。やっぱりそれだけじゃもったいないよなこの音楽と思う。あれだけの人間を笑顔にしてしまうんだから。この日だってそうだった。あれだけフロアが将棋倒しになっても文句一つ言う奴がいない。みんなで助け合い、足を踏んだらちゃんと謝ったりしてくれる。そんな若者達の雰囲気から彼の音楽が本当に真直ぐなんだということを感じる。彼が歌うのはたいそれた難しいことなんかじゃ全くない。困ってる人を見たら助けろとか、女の子には優しくしろとか、そんなことなのだ。もう、イイ大人になりきってしまったような自分にとっては、青臭過ぎるという気分にもなる。でも、フロアで踊りまくる若者達を見ていると、その素直さに嫉妬した気分になってしまった。

 そんなフロアの空気が単なる馴れ合いだけに終わらないのは、俺は俺の道を行くという半端のない意思が音に宿っているからだろう。確かに、客席との和やかなやり取りや、メンバーとのジャレ合いは会場を緩い空気で包む。それでもギター片手にマイクに向う彼にはそんな空気感は全くの不要物。フツフツと熱気が湧き起こるのは初期衝動そのままに飛び続けているからだろう。それは、ハイスタンダードであろうと、ソロになった今も全く変わらない。もう彼自身が客席にダイブかましちゃいそうなぐらい熱気をビシビシと感じさせてくれた。それは、自分が持つパンクという音楽のパブリックなイメージにどうしても重なってしまう。だから、やっぱり彼はいつまでもヒーローなのだ。

 ツアー・ファイナルという事もあって、かなり豪華なセットリストと半端のないボリュームの演奏時間を終えステージを去った横山健。日曜日の夜だというのにあれだけ晴れ晴れしい気分にしてくれるとは。やっぱり音楽はいいなと疲れきった体を引きずりながら思わずにはいられなかった。そう、まだまだ悟りきるには早過ぎる。
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