ルーファス・ウェインライト @ ハマースミス・アポロ、ロンドン (31st Oct. '07)
醒めない夢のひとときよ
今年のグラストにて、豊穣かつ珠玉のその歌声と、極上のエンタテインメント性に一目で心を奪われた米国のシンガー・ソングライター、ルーファス・ウェインライト。ミュージシャンの一家に生まれ、姉のマーサも同じく一線で活躍している。幼い頃から培われた芸術の後天的素養と、天性のものとして生まれもってきたとしか言いようの無い、滑らかで美しい声には、一度聴いたら忘れられないほどに豊かな彼の表情が見えるのだ。グラスト時もダブル・ストライプスのスーツと、目が回りそうなド派手ステージ衣装にノックアウトされたが、今回のロンドン公演でもまたまた、アメリカウルトラ横断クイズを越える七色ストライプスに、キンキラと光るブローチをあちらこちらに輝かせた演歌歌手も顔負けな格好で観客をまずは沸かせた。
おしゃべりが好きなのか、曲間に観客席に向かって良く話すルーファスだ。ツアー先の国々で感じた事や曲目に関するエピソードなどなど、巧みにジョークを交えながらオーディエンスの笑いを誘っている。屈託なく気取る事もないその姿勢は見ていてとても気持ち良く、自然と笑顔を浮かべている自分に気づく。バンドとの競演、自身のピアノ・ソロ、と演目もスケールの大きなポップ・ソングや流麗なバラッドなどと流れにメリハリを持たせつつ、二部構成で間に10分の休憩を挟んだ進行形態は、さながら舞台かミュージカルでも観ているかの様。実際、ちょっと芝居がかった粋な彼のステージングはその素晴らしい歌にしろ、歌に込めた手のひらや体全体の表現にしろ、ただ歌を歌うという域を越えた芸術といえる。昨年ロンドンのパラディアムという劇場で、オズの魔法使いで知られる名女優、ジュディ・ガーランドが昔アメリカのカーネギー・ホールで行ったコンサートのアルバムをそっくりそのまま演奏する、という「舞台」を踏んだ彼だが、狂気に満ちつつも冷静で完璧なピアノの演奏、音符の上を自由自在にたゆたう絹の様な声を持ってすれば、ステージで繰り広げられるパフォーマンスにはただ圧巻の一言。ア・カペラでアイルランド・フォークを歌った場面もあり、CDと遜色ないどころかそれ以上にどこからこんな声が、と驚くほどの素晴らしいこの歌を、生身の人間が、ルーファスが歌うという事実に心が昂る。ただ、本当にそれだけなのだ。
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自分でも歌える様な、弾ける様なそんな身近に感じる演じ手が決して悪いとは言わない。ただ、今夜は、ルーファスの、誰にも真似のできない、彼だけの歌の世界に何もかも忘れて酔いしれた。まるで夢心地で、心がとろけていくような優しいメロディと、どこまでも伸びやかに突き抜ける完璧な歌声。チームワークの良さと実力で聴かせるバンドのサウンドも超一級のルーファスの歌と見事に調和し、大人の上質なエンターテインメントを体感した夜であった。ハロウィンの夜ということもあり、アメリカのキッズ達よろしくな仮装姿で現われたお茶目さんルーファスは、実は今この世の中で最も美しい歌声を持つシンガー、いや表現者なのだと断言したい。ライヴが終われば、やがて戻るはありふれた現実。けれども今夜心に映ったこの夢の二時間は永遠に醒めない。
-- setlist --
Release the Stars / Going to a Town / Sanssouci / Rules and Regulations Tulsa / The Art Teacher /Tiergarten / Leaving for Paris No. 2 / Between My Legs / Harvester of Hearts / Do I Disappoint You / A Foggy Day in Londontown / If Love Were All / Nobody's Off the Hook / Beautiful Child / Not Ready to Love / Slideshow / Macushla / 14th Street
-- encore --
I Don't Know What It Is / Pretty Things / Agnus Dei... / Get Happy / Gay Messiah / Dear Little Girl
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report and photos by kaori
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醒めない夢のひとときよ : (07/10/31 @ Hammersmith Apollo, London) : review and Photos by kaori
洗練されしお茶目心 : (07/06/22 @ Glastonbury Festival, Pilton) : review by kaori
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