デイヴィ・グレアム
@ タウン・ホール、ハイ・ウィッカム (31st Oct. '07)
復活するには遅すぎない
ロンドンから電車で40分ほど北上したところにある街、ハイ・ウィッカム。こじんまりとした街の中心部のいたるところに白鳥のモチーフが見られる。そんな街にはスワン・シアターという劇場があり、その隣に位置するのがタウン・ホール。大きな駐車場を備えており、車さえあれば、近隣の街からも比較的簡単にやって来ることができるものと思われる。しかしながら、観光客が訪れるという雰囲気の街ではない。ランチ・タイムには工事現場で働く男性たちがあとらこちらでサンドウィッチなどを食べている姿が見受けられたものの、どちらかというと静かな街だ。
そんな街までやって来た理由、それが、デイヴィー・グレアム。「生きる伝説」なんて言葉で形容されたりもするフォーク・ギターリストだ(1940年生まれ)。2年前にはThe Original Guitar God」というタイトルで彼についての記事を書いたのだが、その後、アルバムのレコーディングを行っていた彼。完成した『Broken Biscuits』というアルバムを引っさげて、新人バンドに匹敵する強行スケジュールで13公演に及ぶ英国ツアーを敢行。その最終日がここハイ・ウィッカムのタウン・ホールだった。
広い舞台の上には、マイク1本と革張りのアンティークのイスがひとつだけ。そのイスの背もたれ部分には白鳥が描かれている。ガラガラだったどうしようかという不安もなんのその、比較的観客も集まり、開演前は他のライブ会場と同じように、まずは皆パブでビールを、といった具合。デイヴィーのアナログ・レコードを2枚大切そうに抱えた男性もいれば、ギター・キッズ風の少年が父親と共にやってきていたりもする。
まずは今回サポートとしてツアーに同行しているジョン・スミスという若者が登場。今年のグリーンマン・フェスティヴァルにも出演しており、何度かラジオでも耳にしたことのあるシンガー・ソングライターだ。
素晴らしいパフォーマンスだった。この翌日から、自らの単独ツアーに出るという。時間が許すのであれば、ぜひともそちらも見てみたい、そう思わせるアーティストだ。ちょっぴり物悲しい曲や、ロマンティックな曲をアコースティック・ギター1本で弾き語る。もちろん、私には一度聞いただけではその歌詞の全てを聞き取ることはできない。しかし、曲間にチューニングする際のちょっとした観客とのやりとりも含めて、退屈させない、むしろ、とっても楽しいライブを見せることのできる人物である。フォークというジャンルに入ってしまうのだろうが、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens Of The Stone Age)の"No One Knows"をカバーしてみせたりもした(最新シングルのB面に収録されている)。今後の活躍がとても楽しみなアーティストのひとりである。
そして、デイヴィー・グレアム。すらっと背が高く、白髪の紳士。しゃきっと伸びた背中がより一層その存在を大きく見せる。残念ながら、ようやく完成したばかりの最新アルバムをまだ聞いていない私にとって、この日のセットリストがどのようなものだったのであるかを説明することはできない。だが、曲紹介を聞いている限りでは、昔からの、伝統的なアイリッシュ・フォークの曲を多く聞かせてくれたのだと思う。
演奏時間はわずか35分。前座のジョン・スミスよりも短かったと思う。伝説のギターリストだからといっても、テクニックを見せつけるようなタイプではないし、むしろ、その音は年齢通りというか、若い頃の音源よりも弱々しいものだったのかもしれない。アンコールでは、ギターをもうひとりのサポートであるマイクという男性に任せ、ヴォーカルのみを担当したデイヴィー。マイクの調子が悪かったからなのか、マイクを使わず歌ってみせたが、その歌声は力強いものであった。
長い沈黙の時を経て、これでいよいよ完全復活ということになるのだろう。にわかに「フォーク」というものに注目が集まりはじめているように感じるこの国で、生きる伝説と呼ばれる存在として、まだまだやるべきとこも多いのではないだろうか。
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2007
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