デヴィッド・シルヴィアン @ 渋谷オーチャードホール (30th Oct '07)
電子的で、かつ有機的なわびさび
会場のオーチャードホールは、落ち着いた雰囲気に包まれていた。お客さんたちの年齢も高めで、品のいい感じが漂う。自分は約14年前に、デヴィッド・シルヴィアン&ロバート・フリップとして、同じ会場のほぼ同じ席でデヴィッド・シルヴィアンを観たのだけど、そのときはライヴが終わると花束を抱えた女の子たちがステージ前にたくさん詰めかけてデヴィッド・シルヴィアンにプレゼントを渡していたのが非常に印象的だった。
デヴィッド・シルヴィアンはJAPAN(ジャパン)というバンドで、78年にデビュー。お化粧を塗りたくりグラムぽいロックで、アイドル的な人気を得ていた。自分よりもうちょっと上の世代だけど、洋楽が好きな女の子ならたいていJAPANが好きだったような感じだった。ところがJAPANはその後、だんだんギラギラしたものが抜けていって、内省的な、幽玄の世界に足を踏み入れていった。バンドが解散してソロになると、その傾向はさらに強まってアンビエントな音楽もやるようになり、いつしか化粧もしなくなった。このアイドル→仙人という流れを、今だとブラーのデーモンが後追いしているような気もする。今ではすっかり落ち着いて独自の世界を築いているし、すでにJAPAN解散後のキャリアの方がはるかに長い。この日は、かつての追っ掛けだった元少女もいるにはいたけど、中高年の男性の割合が増えていたように思える。
開演前は、ずっとアンビエントな音楽が流れ、ステージの背後には大きなシンボルマークが映し出されている。30分押しくらいで会場が暗くなりメンバーが登場する。中央にヴォーカルとギターのデヴィッド・シルヴィアン、ステージ下手にピアノの渡邊琢磨、デヴィッドの後方にベースのキース・ロウ、そして上手にデヴィッドの弟でJAPANでも一緒だったドラムのスティーヴ・ジャンセンの4人。スティーヴ・ジャンセンがスウィングしたビートを刻み始めると、はっきりとジャズ・マナーに則った演奏となる。デヴィッドは、最初のうちはエレキギターであったけど、アコースティック・ギターを手にすることが多いように思えた(ギターを置き、ヴォーカルに専念することもある)。そのアコースティック・ギターとグランドピアノの音色の印象によって、柔らかいオーガニックな感触がある。ステージにはノートパソコンが数台あるように、シンセサイザーやサンプリングされた音も聞こえてはくるのだけれども、あくまでもナチュラルなものである。
ステージ背後には和風といっていいのだろうか、屏風のような模様が映し出されていく。ワビサビを感じさせる。JAPANの後期のヒット曲、"ゴウスツ"を解体したようなアレンジで演奏したところが、この日のハイライト。お客さんたちも一際大きく拍手を送っていた。そしてシルヴィアン&フリップの"ジーン・ザ・バードマン"も演奏され、14年前の記憶と繋がっていく。MCも少なく、デヴィッドは曲間にゲホゲホしていて、調子悪そうではある。だけど、終盤には熱の篭った演奏で激しいところもみせた。終わると当然アンコールを求める拍手が沸き起こる。拍手は5分くらい続くけど、メンバーが再びステージに戻ることはなかった。1時間ちょっとのライヴで、もう少し観たかったというのが正直な気持ちだったけど、その1時間は、わびさびの世界に連れて行ってくれたのである。
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report by nob and photos by nachi
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