あがた森魚 @ 東京キネマ倶楽部 (27th Oct.'07) ゲスト : 光永巌、鈴木慶一、久保田麻琴
アガタルホルタガア
あがた森魚はいつだって「気になる人」です。乱暴な言いかたをすれば、よくわからない人、不思議な人でもあるような気がします。いきなりぶしつけなことを言うようですが、ここ何週間もあがた森魚のことを考え続けたわたしの、正直な気持ちです。でも以上のことなどは、何年も何十年もあがたさんの歌を聞き続けている人にとってはナニヲイマサラかも知れません。
さて、あがた森魚がこれまでに世界中の童心を喜ばせてきた、たっくさんのアルバムを聴いてみると、それはそれはいろいろな衣装が目まぐるしい。でも気づけば、ああ言っていることはひとつなんだな、と男らしい一本の倫理に納得がいきます。圧倒的な希求のようなものに裏付けられた力強さとやさしさで、うかつに語ってしまったらすぐに壊れてしまいそうなことだけを、両手いっぱいのオブジェで手品よろしく我々に魅せてくれる。
当日は台風でした。肌寒い鶯谷駅から、はるか脚下に線路をながめる橋をくだって、短いトンネルを抜けると東京キネマ倶楽部であった」となるのですが、その間じゅうも荒ぶる風は、わたしのコウモリ傘をひっくり返したり元どおりに戻したり。入場を待ちのぞむ人たちの髪も、おさまりつかない期待がネジリ上げたのか、だれもがクシャクシャに乱れていました。
東京キネマ倶楽部とあがた森魚は限りなく等符号に近い記号でむすばれるべきです。だって、そこはオペラ劇場のような旧映画館、彼のバイオグラフィーに興味をもったことのある人ならば、「この関係にはなかば役満に近いものがある」と賛同してくれるでしょう。
オセローでも上演されそうな舞台面には電気仕掛けの楽器たち、そして中空構造のラッパ群がならびます。これからはじまる音楽劇への期待は、劇場のいかがわしいムードによってあおられ、普段より多くならべられた楽器の数々によっても盛りたてられるものがありました。前触れにアルバム「タルホロジー」の発売を記念してのメモリアルな一晩となることは約束されていたので、コトはなおさらです。
21世紀に突入してから3枚目のあがた森魚、「タルホロジー」はたのしい。まるで、世界中のご当地音楽が一枚一枚に焼き付けられたスライドを矢継ぎ早にみせられているようで、不思議に愉快でどこかチョビッと物悲しい、「パノラマワールドの音楽紀行」にして、辿ってきた足跡への望遠鏡のよな眼差しによる「これまでのあがた森魚紀行」、そんな趣もあるような気がします。古今東西の音楽や物語を縦横に渡りかけていくあがたさんの足取りは、重力に抗うようでいまだ軽やかに貪欲である!と。
ノッケから最期の調べを思わせる清らかで静謐な楽奏、ショウはあがたさんのサンクチュアリを展開させたような「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」で開演しました。そこからは35年目の新作、「タルホロジー」からのオーンパレード! アルバムにも参加している鈴木慶一さんや久保田麻琴さんたちも参加しての「骨」や「東京節」など、この晩はあがたさんも古い友だちとのステージをはしゃぎ楽しんでいるようです。追憶や郷愁の放物線に、ひたったり突き放したりしながらのそんなワクワクは、ライブ全編に渡り響いていました。
中でも個人的ハイライトのひとつ、久保田麻琴副船長を迎え、南半球を遊回している「サブマリン」は何曲目だったでしょうか、新アルバムで再演されているコノ21世紀版をきけば、20年以上も前の「乗物図鑑」から「乗物デラックス」にいたる「サブマリン」自身が時代を離れてあぶりだされてくる気がします。いや、20世紀の大海からもサブマリーンはその船首を覗かせる!ここに改作再演は後ろ向きではなく、当人を過去、現在、未来から、幻灯機の仕組みで立体的に映し出してくるからまったく気が抜けません。
実際マイクを手に舞台を駆け回る彼は、ボロボロの衣装、世捨て人めいた無精ヒゲやストイックな体躯が感情的に動くさまなども相まって、喜劇と悲劇を行ったり来たりする劇中人物みたいです。さらに言えば、彼はまるでロマンチックの秘密を舞台にステップを踏みまわる少年紳士、その姿は勇ましくもどこか頼りなげで、台風によってコウモリ傘がひっくくり返り、表と裏がアベコベになったように、フと気づけば空間のアチラ側へ、しかしひとつ瞬きをする間に隣で笑っているような、危なっかしさもはらんだ親しみでわたしたちの目を離しません。
タルホロジー発売と機を同じくしてはじまった旧譜再発のコピーに「泣き虫パンク幼年期」とありますが、21世紀のあがた森魚だってなんら違うところはないのではないでしょうか。泣きじゃくる少年の純粋と暴力性、向こう見ず、気まぐれなどは、わたしたちの知るパンクなるものと軌道をひとつにしますし、もうすぐ還暦になろうかというこの日の主人公にだってそのまま当てはまる魅惑の双曲線ではないでしょうか。いわば、35年目の少年活劇!少年活劇!
追記
流れる星はひとつ所にとどまってもいないし、巡ってもいない。ただ過ぎて行ってしまう天上のムコウミズ、天下御免の泣き虫パンクスだ。以上はそのシッポに触れようとの私のはかない試み。伸ばした手が、そのキラキラの消息だけでも皆さんに届けられたのなら!
*ライブ予定*
◆2007年11月25日(日)
「昭和浪漫コンサート―20ッ世紀大楽隊2007 in 青梅宿―
@ 昭和レトロ商品博物館 特設張り出し浪漫ステージ
◆2007年11月25日(日)
「あがた森魚VSイワオの裏庭」@ 新宿・NewBury
-あがた森魚「珊瑚のカケラライヴツアー」東北II-
◆2007年11月27日(火)@ 仙台・ラブミー牧場
◆2007年11月28日(水)@ 山形・Frank Lloyd Whight
◆2007年11月30日(金)@ 盛岡・クラムボン
-あがた森魚「Taruphology Tour '07」-
◆2007年12月3日(月)@ サンピアザ劇場
◆2007年12月12日(水)「タルホロジーナイト」@ 代官山・晴れたら空に豆まいて
◆2007年12月13日(木)@ SOKEHSROCK
◆2007年12月22日(土)@ みどり市ながめ余興場
ことば、うた、紡ぐ人々 ―あがた森魚を中心として―
出演:あがた森魚、中川五郎、よしだよしこ、鈴木亜紀
◆2007年12月26日(水)@ 渋谷・クラブクアトロ
ムーンライダーズ2daysライヴ(25、26日)の26日へゲスト出演
◆2007年12月30日(日)@ 東京国際フォーラム・展示ホール
「HARMONIA(ハルモニア)'07-'08 光と音のハーモニー」へ出演
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report by yuji and photos by nachi
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