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@ 大阪 福島 ライブ・スクエア セカンド・ライン
(20th Oct. '07)

高架下にて

  「te'」と書いてそのまま「テ」と読む。ヴォーカリストがいない、東京の4人組インストゥルメンタル・バンドである。

  今年9月に、残響レコードからセカンド・アルバム『それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。』を発売し、それにともなう全国ツアーでこの日、大阪にやってきた。大阪で彼らがライヴを行うのは3度目だそうだが、会場には初めて彼らをナマで見るという観客も多かったようだ。収容人数250人程度のライブ・ハウスはほぼ埋まっていた。若い女性客の割合が予想以上に高かったことは驚きである反面、彼らのステージを見れば納得できる部分でもある。

  決して派手ではないが「華」のあるライヴ・バンドだ。とてもバランスが良いバンドだと思う。ライブにおける集中力、バンドのエネルギーがある一点に集まり増幅していく様は素晴らしい。ここに観客からのエネルギーが加われば、さらにすさまじい化学反応が生じるのではないだろうか。

  いわゆるインストものだが、彼らのステージ上にラップトップは存在しない。ごくシンプルに、その場で奏でられる4人の音だけ。かなりの爆音だが、なぜか心地良い。

  ステージ向かって左側(下手)、舞台ギリギリのところにドラム。だが、先週来阪公演を行ったソウライヴのように客席を正面にして置かれてはいない。横向きというべきか。そんなドラムと向き合うようにして、ステージ中央にベース。しかし、大半は客に背を向けて弾いている。ギターはふたり。ステージ中央のやや奥まったところにひとりと、ステージ上手にもうひとり。このようなメンバーの配置は彼らの特長であり、このバンドのライブ・パフォーマンスにおける鍵なのかもしれない。決してドラム主導のバンドではないだろう。だが、ライブにおいては、ドラマーがまるでオーケストラにおける指揮者のような役割を担っていると感じた瞬間が何度かあった。実際、ライブごとに微妙にテンポや叩き方が変わるらしく、よって他のメンバーもそれに呼応するように演奏していくことになる。どこかスリリングな展開になるのもうなずける。

   3、4曲続けて演奏し、MCを挿む。このセカンド・ラインというライブ・ハウスはJR神戸線の高架下にあるため、電車の通過する音と振動が非常によく伝わる。バンドが喋っている最中に絶妙のタイミングで電車が通過することもあって、笑いも誘うような場面もあった。演奏中の激しいパフォーマンスとは対照的だが、そんなちょっぴり和ませる雰囲気の作り方もなかなかのもの。

  ワンマンでの彼らのライブを見たのは今回が初めてだったのだが、アンコール2回を含めて90分近い時間さえも短く感じてしまうものだった。そして、「ライブ」というものに対するこのバンドの真摯な姿勢がしっかりと伝わってくるものでもあった。ただ単にステージに上がって自分たちの曲をちゃんと弾いています、というようにしか見えてこないバンドたちとは明らかに異なる。

  ちなみに、今回のツアーは「沈黙を学べ。我が友よ。言葉は銀に等しい。が、時を得た沈黙は純金だ。」と題されていた。歌詞のない曲で何かを表現しようとするバンドほど、おそらく言葉というものに対して思うところは大きいのではないだろうか。このバンドの特徴のひとつでもある、タイトルの長さ。曲名はこの日のオープニングを飾った"如何に強大な精神や力といえども知性なくしては『無』に等しい。"のように、30文字である。

  こだわりが見かけ倒しでないことは彼らのライヴを体験してみれば分かるだろう。どうしても活動は東京中心になってしまうのだろうが、またぜひ関西にもやってきてほしいものである。

report by miyo

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"それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。"
(国内盤)
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"音楽の研究者は、音楽をねじ伏せようとしてはいけない。音楽をして、 音楽の赴く所に赴かしめるように導けばよい。そうして音楽自身をして音楽を研究させ、 音楽の神秘を物語らせればよい。"(DVD)

"言葉を用いて奏でる者は才能に在らず、ただの記憶に『過』ぎぬ"(国内盤)

"ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る"(国内盤)


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