button 中山うり @ 札幌クラップスホール (27th Sep. '07)

やっと、夏の終わり


Uri Nakayama
 去年のフジロックでは、彼女の存在を知らない私はMC中のステージ横を涼しい顔をして通り過ぎてしまった。その後彼女の歌声の素晴らしさを知ったにもかかわらず、今年のライジングサンではタイムテーブルで苦悩した末に結局見られずじまい。なので今夜は、三度目の正直的な気分でクラップス・ホールにやってきた。

 中山うりがピンクの衣装にピンクの大きな髪飾りをつけて登場すると、ホール全体がゴクリと息を呑んだような静けさに。そこに"サーカスが来た"がゆっくりと流れ出すと、アコーディオンのじゃばらの伸び縮みに誘われるように静かに夜のどん帳が降りてゆき、それとクロスするように暖かな灯りがステージからじんわりと広がるような雰囲気になって、心がとても贅沢になる特別な時間が始まった。

 "Blu-Voyage""早起きラジオ"と続き、彼女の歌声は空気の密度をギュっと濃くする。途中「今日のお客さんはどんな感じだろうってさっき覗いてました。知ってますよ、ザワザワしてたの。急に落ち着いちゃって緊張しているんでしょうか」というMCがあった。緊張とも少し違うような、なんと言ったらいいのだろう、大好きな人と初めて向かい合わせで座って、お互いの視線を合わせたまま会話したとき、そんな高ぶった気持ちを悟られたくないような雰囲気だったのは確かだ。でも時間が経つにつれそんな状況と楽しめるようになり、だんだんと沈み具合や背もたれの柔らかさが自分の体にぴったりと合った高級なソファーに腰をおろしている気分になってくる。曲が終わって客席から拍手がおこるのにワンテンポ空くのはきっと心地よさのせいだ。そのまま"月とらくだの夢を見た"を聴いていると、今度はらくだの背で歩みに合わせて揺られている気持ちになる。

Uri Nakayama  しかし、そこから振り落とされるような彼女のちょっぴりスパイシーなMCはいい。「これからどんどん寒くなるので今のうち節電しておいたらどうですか? 」というエコ発言も、あまりにも唐突すぎてなんだか笑ってしまった。

 彼女はこの日"夏祭り鮮やかに"を境に夏の終わりへの思いにこだわり始めた。もう9月も終わるというのに… と思うかもしれないけれど、きっとまだ夏を終わりきれていない気持ちの人がたくさんいるような気がする。私も含め、フェスだ、仕事だ、家族サービスだと、北海道なりの猛暑を熱く駆け抜けてしまった人は、夏の余韻から心も体もうまいこと切り替えられなくなってしまっているのではないだろうか。でも今夜の中山うりのライブで、季節においてけぼりを食らっていた人たちも、やさしく秋へのプロローグを迎えられたような気がする。

 11月21日に早くもニューアルバムが出る。今年中にもう一度北海道に来たい宣言も出た。加えて、「北海道は寒いからあんまり口を開けたりしないのでしょうが、覚えやすいメロディーなのでみなさんで大合唱しましょうよ」と言ったのに、いまひとつ大声を出せなかったので「次は大合唱にしましょうよ」という宿題もいただいた。函館、そしてライジングサンでのライブで北海道を気に入ってくださったようなので、これからどんどん足を運んでくれたらなと思う。

 去り際「くれぐれも電気の使いすぎには注意してください」と言い残していった彼女。北海道はこれからどんどん寒くなり、あっという間に冬景色になる。部屋の暖房は極力控えめにして、そのかわりライブでの再会を心待ちにしながら、彼女の曲を聴いて暖かくなってみてはどうだろう。

Uri Nakayama

report by rica and photos by q_ta
==>top page : JPN / ENG

buttonmag files : Uri Nakayama

buttonやっと、夏の終わり (07/09/27 @ Sapporo Kraps Hall ) : review by rica, photos by q_ta
buttonphoto report (07/09/27 @ Sapporo Kraps Hall ) : photos by q_ta
buttonしっとり、モチモチの歌声 (07/09/11 @ Shibuya Duo Music Exchange ) : review by jet_girl, photos by naoaki
buttonphoto report (07/09/11 @ Shibuya Duo Music Exchange ) : photos by naoaki
button大阪、初ワンマン (07/08/31 @ Umeda Shangri-la) : review by miyo, photos by naoaki
buttonphoto report (07/08/31 @ Umeda Shangri-la ) : photos by naoaki
buttonphoto report (07/08/25 @ Ikegami Honmonji ) : photos by naoaki
buttonアコーディオンが織りなすマジック (07/08/17 @ Rising Sun Rock Festival 2007 in Ezo ) : review by funabashi, photos by q_ta
buttonphoto report (07/08/17 @ Rising Sun Rock Festival 2007 in Ezo ) : photos by q_ta
buttonphoto report (07/08/11 @ Summer Sonic 07 Makuhari River Side Garden ) : photos by naoaki
buttonphoto report (07/06/23 @ Shinjuku Tower Record ) : photos by naoaki
button何も変わっていない (07/06/12 @ Shibuya Duo Music Exchange) : review by funabashi
buttonCD review DoReMiFa (ドレミファ) (07/05/23) : review by funabashi
button2007年、東京1本目 (07/03/27 @ Shibuya Duo Music Exchange) : review by miyo, photos by naoaki
buttonphoto report (07/03/27 @ Shibuya Duo Music Exchange ) : photos by naoaki
button波の音とアコーデオン (07/03/17 @ Hakodate Kanamori Hall ) : review by aco, photos by q_ta
buttonphoto report (07/03/17 @ Hakodate Kanamori Hall ) : photos by q_ta


07/10/14 (日) MUSIC CITY TENJIN @ 福岡
07/10/27 (土) MINAMI WHEEL 2007 @ 大阪
07/10/28 (日) 勝手にしやがれpresents "LET'S GET LOST" 『中山うり vs 勝手にしやがれ』 @ 恵比寿LIQUIDROOM
詳細はこちらでご確認ください。


The official site

Uri Nakayama

http://www.worldapart.co.jp/uri/

check her? --> iTunes


The latest album

Uri Nakayama

"DoReMiFa (ドレミファ)
(国内盤)

The latest single

Uri Nakayama

"Live Session"
feat. 笑う月、夜のレクエルド(RECUERDO)、
星の界、月とラクダの夢を見た (Harp Version)
(iTunes)

PV : 月とラクダの夢を見た on sale

--> iTunes


The previous works

Uri Nakayama

"Uri Nakayama EP"
feat. 月とラクダの夢を見た、Blu Voyage、
マドロス横丁、ノスタルジア & 走る女
(iTunes)

check the albums?

rica's works

mail to

button2007
buttonロックンロールは根付いたか? : ザ50回転ズ@ 札幌ベッシーホール (6th Jun. '07)
buttonもっともっと自由に : ペズ @ 札幌ペニーレーン24 (21st Apr. '07)
button北の大地にロックンロールは根付かない!? : ザ・50回転ズ @ 札幌ベッシーホール (18th Apr. '07)
button愛しの白ムチくん : サケロック@ ゼップ札幌(31st Jan '07)
button変わらないでいるということ : 10フィート@ ゼップ札幌(31st Jun '07)
button2006

buttonオカッパ頭とともに揺れたベッシーホール : ザ・50回転ズ @ 札幌ベッシーホール(27th Nov. '06)
button静かに高ぶる : Corner @ 札幌ベッシーホール(20th Nov. '06)
buttonテレくさいほどロック : 曽我部恵一バンド @ 札幌ベッシーホール(20th Nov. '06)
buttonばかやろうが言える男 : スパルタローカルズ @ 札幌ベッシーホール(1st Nov. '06)
button緊急事態だったんです : ザ・たこさん (21st Oct @ 大阪あべのザ・ロック食堂)
buttonロックのゲンコツ : ザ・クロマニヨンズ (19th Jul @ ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル)
button9年振りの同窓会 : 米米クラブ (19th Jul @ ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル)
button漂泊のロックンローラー : ロックンロール・ジプシーズ (18th Jul @ ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル)
buttonやたらと沁みる傷薬 : 小谷美紗子 (18th Jul @ ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル)
button限界を超えたスタートダッシュ : マキシマムザホルモン (19th Jul @ 札幌ペニーレイン24)
button札幌の涼しい夜が燃えだした : ファイアースターター feat. オーヴァーグラウンド・アコースティック・アンダーグラウンド、テン・フィート、ブラッドサースティ・ブッチャーズ (15th Jul @ ゼップ札幌)
buttonオヤジになりたかった夜 : シオンと松田文 (19th May @ 札幌アイビック)

button2005

buttonインビシ初体験物語 : インビシブルマンズデスベッド (23rd Jul @ 札幌すすきの810)
buttonロッキンポども、かかってきなさい : マキシマム・ザ・ホルモン (28th May @ 札幌ベッシーホール)
buttonreview (no title) : "第2回 日米ロックンロール馬鹿対決9本勝負 Dixied The Emons (23rd May @ 札幌ベッシーホール)
buttonreview (no title) : "恋とエレキと花束と"ツアーVol.3ファイナル〜涙の3マンショウ! feat. ミルクティース, ザ・サーフ・コースターズ, ノン・ドラッグス (24th Apr '@ 札幌すすきの810)
buttonreview (no title) : スパルタ・ローカルズ (27th Mar @ 札幌ベッシーホール)


無断転載を禁じます。The copyright of the article belongs to and the same of photos belongs to . They may not be reproduced in any form whatsoever.counter
==>Back To The Top Page : JPN / ENG.