ギャロウズ @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン (26th Sep. '07)
食らえ、ライオット
セックス・ピストルズの初期オリジナル・メンバーによる再結成ライヴが行われるというニュースがつい最近発表され、ああ、そうだ、この国はパンク発祥の地なのだと思いながらも、筆者が実際にUKロックというものに開眼するきっかけとなったのはレディオヘッドを聴いてからであり、その後も今の今までピストルズ、クラッシュ、ダムドといった所謂UKパンク御三家の音に魅せられた口ではない。マンチェスター出身のナイン・ブラック・アルプスを観た時には、その激しいライヴ・アクトに度肝を抜かされたが、彼らのサウンドはどちらかと言えばニルヴァーナやソニック・ユース寄りで、同じ激しさでもグランジとパンクのそれでは耳をつんざく爆音の衝撃度を異にする。今夜登場する、英国はハートフォード州発のタトゥーまみれ5人衆、ギャロウズ、パンクとハードコアの間で暴れ回る彼らのライヴ、はっきり言って気絶ものだ。
リーサル・ビズルというラッパーと、ポイズン・ザ・ウェルなるハードコア・バンドによってもたらされた、挑発的なゴリゴリのサポート・アクトによって、会場の客陣の興奮度はもう沸点をゆうに超過している。メインのギャロウズがステージに上がると共に雄叫びの様に上がる歓声。ヴォーカルのフランクはFワード200連発の勢いで序盤からオーディエンスを挑発し、メンバー全員若さ故のフットワークの軽さで、ジャンプ、キック、梯子によじ上り、過激に音を鳴らしている。シャウトと攻撃的な厚いギターの音で息急き切る様に突っ走るそのサウンドは、今、その瞬間の怒りをぶちかますというパンクの刹那そのものであり、はけ口の見つからない若者達の激情を加速させ、客席中央に暴動並みのモッシュを引き起こした。後に何かを残すパフォーマンスではないけれども、ここでしか感じられない熱い思い、完全燃焼の本気でぶつかって来るのがギャロウズであり、恐らく彼らもそれを意図した上で自分達の音楽を表現しているのだろう。歌っている最中、マイクをぶんぶん振り回し、曲が終わる度にそれを床に叩き付けるフランクのその姿に、もしかしたらジョニー・ロットンもこんな風にふてぶてしく投げやりな態度で、鬱蒼とした不満を抱えた当時の若者の共鳴を得ていたのかもしれない、そんな気にさせられた。
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今年のレディングにてパフォーマンス中に新たなタトゥーを彫ったフランクが最近インタヴューで話していたところでは、ギャロウズは5年と続かないバンドであり、自分のライフワークはあくまで彫り師(タトゥー・アーティスト)であることなのだという。バンドはあくまで自分の楽しみであり、それでお金を得ているだけ、とまあ20代前半にして何とも冷静な発言である。できるだけ息の長い活動をし、より良い作品を世に残したい、というような立派な志を持ったミュージシャンからしてみれば、首根っこをつかまえたくなる様な物言いかもしれないし、ファンにとっては寂しい言葉なのであろうが、先達のパンク・バンド達だってたった一枚かそこらのアルバムを残しただけではかなく消えてしまっている。だのに、その一枚が限りなく衝撃的であり、それが伝説となって今でも世に語り継がれ、それを知らない新しい世代にも脈々と影響を与え続けているのだ。ギャロウズが20年後に伝説となっているかは分からないが、この混沌を今目に焼き付ける価値はある。11月には"テイスト・オヴ・ケイオス"と銘打った東名阪ツアーで来日予定。その時は、近い。
-- setlist --
Come Friendly Bombs / Abandon Ship / Just because you Sleep Next to Me Doesn't Mean You're Safe / Rolling with the Punches / Nervous Breakdown (Black Flag cover) / Will Someone Shoot that F**king Snake / Sick of Feeling Sick / Black Heart Queen / In the Belly of a Shark / Orchestra of Wolves
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report and photos by kaori
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食らえ、ライオット (07/09/26 @ Electric Ballroom, London) : review & photos by kaori
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2007
マイノリティの救世主 : ザ・ゴシップ(14th Sept. @ フォーラム、ロンドン)
どうした!?ゴー!チーム : ザ・ゴー!チーム(12th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
せつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
やんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
あまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
極めずに進み続ける野心 : ザ・クークス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
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