モーサム・トーンベンダー @ 渋谷AX (23rd Sept. '07)
バランスなんて知ったことか!

徹頭徹尾放電しっ放しのモーサム・トーンベンダーの音を聞きながら思い出したのは、ゴッホの絵。何点か生で見たことのあるゴッホの絵には、それはもうたくさんの絵の具が塗りたくられていた。きっと絵の具が乾くの待ち切れないと、ああなっちゃうんだろうなと想像しているわけだが、モーサムの音からもそんな印象を受ける。もちろん、モーサムは生楽器だけではなく、デジタルな音もふんだんに取り入れているバンドである。音数が多いというのは当然といえば、当然なんだけど。音が大きいとか小さいとか、それだけじゃない何かを感じるのも確かだ。
個人的にバンドのバランスとしては、傑作の感が強かったアルバム、"スーパー・ナイス"。その発売からわずか7ヶ月でニューアルバムのリリースというニュースが耳に飛び込んできたのは最近のことだ。そして、この日のステージで新曲のライブレコーディングが行われるとのこと。(これはタワレコのアルバム特典になるらしい。)なるほど、ライブに軸足を置いてきた彼等らしいアクションだ。そんなわけで、新曲のお披露目会的な意味合いが強いのかと予想してバンドの登場を待っていたのだが、本編が始まってしまえばそんなことは全くのお構いなしだった。定番と言える何曲かはこの日のセットリストには載っていなかったし、新曲が連打されたのかと言えばそうでもない。とにかく、モーサム・トーンベンダーというバンドのアンサンブルを存分に貪り喰らうことの出来た2時間弱の時間だった。
10月3日発売のニューアルバム"C・O・W(チェック・アウト・ワールド)"はブンブン・サテライツを思い出させるような仕上がりになっていると聞いていたが、新曲を含めそんな印象はほとんどなかった。やっぱりライブのモーサムはモサーム、スタジオ・ワークとは異なる印象になるのだろう。(新作が未聴の段階なので、強いことは言えませんが。)どんなにデジタルな音を重ねようが、何しようが、やっぱりあの刺々しくて、ぶっ飛んだ感じがこのバンドの肝になっているのは間違いない。結局はフィジカルな感動をこのバンドには求めてしまうし、そうせざるを得ない音が鳴っているのだ。武井の狂ったようなダンスも、百々のヒステリックな叫びも、勇のバスドラの4つ打ちも、やっぱり僕らに汗をかかせるためにあるのだ。今日は、そんなことを再確認した。
新旧取り混ぜた後半は圧巻だった。MCなんて野暮なものは全く無しで、ひたすら昇り詰めていく彼等。特に、新曲の"バッド・サマー・デイ・ブルース"の3人のクレイジーなプレイは感涙ものだった。百々が狂ったようにギターを掻きむしり、武井はドラムに昇りマイク振り回す。なるほど、やっぱり、このバンド音の大小だけなんかじゃない。あの過剰な感じだ。意味があるかとかないとか、正しいことなのかどうかとか、そんなことは全くのお構いなし。激しさも、ポップさも、バカバカしさも、ロマンティックな感じも何かもが過剰なのがモーサム・トーンベンダーなのだ。バランスなんて知ったことかと叫び飛ばしているかのようだ。これが、このバンドの最高の形。そんなことを思い知らされたこの日のライブだった。このテンションで作られたアルバム、それがモーサムが開けた新しい扉なのかどうか。今から楽しみで仕方がない。
ちなみにこの日のライブはマイスペースにて72時間限定聞けるとのこと。気になる方はこちらをチェックしてみて下さい。→MySpace
-- setlist --
Have you ever seen the Stars? / We are Lucky Friends / GREEN & GOLD / L.O.V.E. / You are Rock'n' Roll / 13 Hot Dogs / モダンラヴァーズ・ボレロ / FREEZE / 18(eighteen) / マカロニ / SUMMERスカ? / ビートルバーナー / アンハッピー・ニューエイジ / パーティーは続くよ / STOP THE MUSIC / JACK THE TRIPPER / TIGER / BAD SUMMER DAY BLUES / ばちかぶれ!
-- encore --
20 BIG-S |
report by sakamoto and photos by hoya
|
|
|