ザ・ゴシップ @ フォーラム、ロンドン (14th Sep. '07)
マイノリティの救世主
今年の欧米野外フェスティヴァルのレポートでは、ザ・ゴシップを観ない事はまずほとんど無かった。特に英国の音楽媒体、NMEの彼ら(特にフロントウーマン、ベス・ディットー)への入れ込み様、取り上げ頻度の多さは今日まで飽く事無く続いている。100人中100人が認めて疑わない彼女の強烈な風貌や、性的嗜好を含めたそのパーソナリティごとが、異端な存在感を放つアーティストに飢えた時代やメディアの後押しと上手く化合したのだと思う一方で、その内容といったら、ステージ上でのベスがどうした、脱いだ、見せた、物申した、だのと、どこも一様に、文字通りタブロイド的側面ばかりでしか彼らを伝えていない様な気がしてならない。それが彼らの個性であり主張の一部であることは大きいとは思うけれど、2月の単独ライヴであれ、今年のグラストの千秋楽であれ、実はアルバムを何枚も出している下積みバンドであったことを納得させるほどの彼らのパフォーマンスに、とんでもなくすげえバンドだと驚愕した身としては、彼らの真骨頂であるライヴの良さを伝えずにはおれぬ。
花束を抱えたドットのワンピース姿でステージに現われたベスは、客席にそれを手渡してゆく。満面に笑みを浮かべつつ観客に挨拶する幸せそうなその表情には、とても全裸をさらけたりする様な同一人物とは思えないほど可憐だ。序盤から叩き出される強力なドラムのビートと、ベースのうねりに合わせて前後左右にステップを刻みつつ歌い始めると、マイクなんて通さなくとも十分に響き渡るであろう張りのあるその力強い声に圧倒される。アレサ・フランクリンと比較されることもある彼女のヴォーカルだけれど、ベスのそれはソウルに近くも、核にはパンクの攻撃性をより強く感じる。サウンドにしても、CDで聴くとあまり緻密に作り込んでいない各楽曲は、アレンジや技術的なことで述べれば物足りなさは残るが、ライヴではあれ、こんなに良い曲だったっけ、と思わせるほど、生演奏の情熱でぐいぐいと聴く者を引き込む力がある。時にベース音が無く、或いはギターのノイズが聴こえない、だのにその浅薄さが微塵も気にならないのは、ベスの超一級の歌声は勿論、ドラムスのハンナが後ろで涼しい顔で叩き出すリズムの強靭さゆえだ。
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同性愛者をごく自然に受け入れる文化が根付いた欧米社会といっても、一人間が抱く偏見や差別は今も昔も簡単に変わることではない。個人個人が持つ常識が暗黙の内に集約され、その最大公約数からはみ出した少数の人間が味わわざるを得ない疎外感、後ろめたさは、どれだけあるがままの自分を認めよう、認めて欲しいと願っても拭えない影を心に落とし続ける。ザ・ゴシップは自らの表現でもって、マイノリティとしての意識、思いや闘いを歌に込め、曲に綴っている。私の周囲にも女性同志のカップルが楽しむ姿が多く目についた。勿論、私自身も含めて異性を好きな人間だってここにはいたはずだ。感動するのは、自分である事に堂々としたベスのその姿であり、そこから生まれる勇気。男、女の区別など無く、音楽がもたらす共鳴が会場を覆った。これからもザ・ゴシップから目が離せないのではなくて、目を離したくない。
-- setlist --
Blur Wonder / Yr Mangled Heart / Fire Sign / Coal To Diamonds / Jealous Girl / Jasons Basement / Aailyah / Waves / Keeping You Alive / Yesterdays News / Standing In The Way Of Control
-- encore --
Careless Whisper / Listen Up! |
report and photos by kaori
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マイノリティの救世主 (07/09/14 @ Forum, London) : review & photos by kaori
大団円はもらった (07/06/24 @ Glastonbury Festival, Pilton) : review by kaori, photos by q_ta
photo report (07/06/24 @ Glastonbury Festival, Pilton) : photos by q_ta
闘う女王様 (07/02/24 @ Astoria, London) : review and photos by kaori
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2007
どうした!?ゴー!チーム : ザ・ゴー!チーム(12th Sept. @ エレクトリック・ボールルーム、ロンドン)
せつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
やんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
あまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
極めずに進み続ける野心 : ザ・クークス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
命短し、踊れよ乙女 : キャンセイ・デ・セイ・セクシィ - シーエスエス (23rd Apr. @ アストリア、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
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