ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン (7th Sep. '07)
せつなさは、直立不動ロックと共にあり
現在いる様々なロック・バンドに大きな影響力を与えた80年代のオルタナティヴ、サイケ・ロックの代表格としてその名前こそ知ってはいたが、リアルタイムではついぞ触れる機会のなかった、ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン。その次世代のバンドばかりを網羅していた我が身としては、彼らが今年のUS野外フェス、コチェーラにて復活パフォーマンスを果たした再結成組である、という事実ですらネット・辞典を読むまで知らなかった。いや、困った時にはウィキピィディアでありますね、皆さん。と、まあ、ここまで書いてしまった以上はどんな解説文も付け焼き刃の字数稼ぎであることがバレバレなので、またも熱烈ファンからの腐ったメロン攻撃等にしっかり盾で応戦しつつ、初めて目にした彼らのライヴがどのようであったか、お届けしよう。
まず、ステージに現われた総勢5人のおっさん、もといメンバー御一行。全体的に黒っぽく、着飾った様子は見られない。中央に立つヴォーカリストは、このバンドの中心人物であるリード兄弟の片割れ、ウィリアムス。ちょっと仏頂面というか、自分以外に興味無しとでもいった様な冷たい雰囲気だ。そしてその横にのっしりと構えているのがギタリストであるジム。シェイズを掛けているので二人が似ているのかは不明だが、こちらは現在のフィル・スペクター、乃至ドリフの雷様ばりの爆発ヘアー・スタイル。 インパクト強しである。ずっしりとしたベースラインとシューゲイジングを思わせる轟音が炸裂するギター・サウンドを屋台骨にしながらも、力加減の抜けた、ダークで甘いヴォーカルがどこか切なさを誘う。もっと、ゴリゴリのロック節を鳴らすバンドかと思っていたので、その対比がノスタルジックで甘美なメロディを浮き上がらせていて、不思議な感覚を覚えた。浮遊するというのではないけれど、ドリィミィというか、いい具合に体が弛緩するのだ。
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過去の作品をまんべんなく織り込んだ今夜のセットには、往年のファンから、前座のホラーズ観たさに流れて来たのであろう前方の拳突き上げ系キッズも一緒になって盛り上がっている。年齢層の高めなファンは後方で思い思いに一緒に曲を口ずさみ、フロントの若者達は人波に揺れ、縦ノリで楽しんでいる。通常は帰りの混雑を懸念してか、アンコール前に立ち去る観客が多いイギリスのギグだが、今夜はほとんどの人がアンコールまで残って彼らのパフォーマンスを堪能していたのも印象的だった。ギターのチューニングにトラブルが目立ち、ところどころで起きたその悲鳴の様な音が不快で、音響の良さが売りのブリクストンであっただけに残念。ウィリアムを始め、雷様も他の面々も直立姿勢を貫くプレイ・スタイルは終始崩れる事無く、気さくなスコティッシュ・アクセントでオーディエンスとコミュニケイトするようなMCもない淡々とした態度ではあったが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやブラック・レベル・モーターサイクル・クラブの世界観の礎を目にした今夜の彼らのギグから浮かんだ言葉はまさに温故知新。ロックの循環作用にはいつだってこういうレジェンドが不可欠なのだ。
-- setlist --
Never Understand / Head On / Far Gone And Out / Catchfire / Sidewalking / Snakedriver / Dead End Kids / Happy When It Rains / Some Candy Talking / Between planets / Blues From A Gun / Cracking Up / All Things Must Pass / Teenage Lust / Vegetable Man / Just Like Honey / You Trip Me Up
-- encore --
Darklands / Nine Million Rainy Days / Reverence |
report and photos by kaori
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2007
せつなさは、直立不動ロックと共にあり : ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン(7th Sept. @ ブリクストン・アカデミィ、ロンドン)
健全・安全・好青年 : アスリート (5th Sept. @ HMV、ロンドン)
やんちゃな成犬、余裕のラスト : ザ・ストリーツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ロックンロールでいいじゃない : ダーティ・プリティ・シングス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
乗らずにいられぬこの挑発 : エム・アイ・エイ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ポジティヴは勝つ : ザ・ゴー!チーム (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
ブレーメンの音楽隊 : ザ・ランブル・ストリップス (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
一発屋の彷徨 : ジ・オートマティック (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
絡んでも、絡み足りない : フォーワード・ロシア (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
詩人がバンドを組んでみたら : アート・ブルート (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
燃える地球の裏側 : ボンヂ・ド・ロレ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
あまたのバンドと何が違う? : ザ・ウォンバッツ (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
日向で爆発、陽のパワー : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (26th Aug. @ クラッパム・コモン・パーク、ロンドン)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ(20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ(26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ(4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ(24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーランドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ(24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・ポップ・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : シーエスエス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
命短し、踊れよ乙女 : キャンセイ・デ・セイ・セクシィ - シーエスエス (23rd Apr. @ アストリア、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
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