buttonキング・クレオソート
@ バー・アンド・キッチン 、ロンドン (29th Aug. '07)

キング・クレオソートがいるべき場所


 渡英直前にロンドンでキング・クレオソートのアルバム・ラウンチ・パーティと題したライヴが行われることがわかり、こんなチャンスはないと、行くことにした。オールド・ストリート・ステーションから、オールド・ストリート沿いに少し歩き、路地を入ってすぐのホクストン・スクエアにあるレストラン・バー、バー・アンド・キッチンに併設されたスペースでこの日のパーティが開催された。アルコールの量と時間の経過によりざわめきを増し、照明がぐっと押さえられた雰囲気のあるテーブル席をすり抜けていくとベーシストのル・ボン・ジュールがビールを片手にカウンターにもたれかかり談笑しているのを目にする。さらに奥に足を進めるとこのライヴが開催されることが告知されたのがほんの数日前で、ごくごく限られた情報だったにも関わらず、高感度のアンテナを張り巡らせたファンが今や遅しと今夜の主役、キング・クレオソートの出番を胸を躍らせて待っているのだった。弱冠年齢層高めで、男女比は半々といったところだろうか。

 すでにセッティング済みであとは登場を待つだけのステージに、オーディエンスと同化していたジョニーが、そしてケニー・アンダーソンがと正面からよいしょとステージに上がる。ライヴ前の心地よい緊張感もこんな予想外の登場に少し肩すかしを食らうと同時に、あいかわらずならしさに微笑まずにはいられなかった。こんな場所にわざわざ日本から見に来たことを知ると、驚きつつも大歓迎してくれ、コネクト・ミュージック・フェスティヴァルも行くことを話すと、3日間いるなら、絶対ホット・チップを観るべきだよ! と弱冠興奮気味に話してくれたジョニーはアルバムのお披露目ということもあってか、今日のライヴはちょっと不安でね……なんてことも、笑。

 この日は9/10にリリースされたニュー・アルバム『ボムシェル』からの新曲が大部分を占め、残り数曲がこれまでの曲というゼイタクな内容だった。お馴染みのジョニーによるホット・チップの"オーヴァ・アンド・オーヴァ"の一節をクラップに乗せてアカペラで歌ったり、原点であるアコーディオンに深呼吸をさせながら柔らかい笑顔で歌うケニー。「今年のグリーン・マン・フェスティヴァルは泥だらけだったけど、やっぱり一番素敵なフェスだね」とこの夏を振り返り、アルバムのリリースを会場にいる全員と祝福すべくビールを手に乾杯したりと、彼ららしいお祝いムードに包まれた。新曲の多くは『ケー・シー・ルールズ・オーケー』の流れを受け継ぐフォーキーな部分は残しながらも、よりバンド色の強いポップな曲が多く聴かれた。その象徴とも言えるのが先行シングルとしてもリリースされている”ユーヴ・ノー・クルー・ドゥー・ユー”で、アップテンポなギターのリフから始まり、ケニー特有の腑抜けた高音域の声と、ずっしりとした低音域が行き来し、そこに一斉にドラム、ベース、キーボードが重なり、ひとつの和を描く。それはケニー、イインというアンダーソン兄弟によるデュオとして芽を出し、ケニーのソロ・プロジェクトという葉を茂らせ、さらにキング・クレオソートというバンドのへと年月をかけて発色のいい花を開かせるという変化を遂げた瞬間でもあった。またラストの"アット・ザ・W.A.L"では、新調したばかりという真っ白のエレクトリック・ギターを持つケニーの姿に最初は違和感を感じずにはいられなかったものの、ジョニーと2本のギターがギュインギュインと鳴り響く音も確かにキング・クレオソートであり、また新しい境地を見た。ジョン・ホプキンスによるプロデュースにより新しいベクトルの音の幅をもたらされたというのも大きな要因の1つなのだろう。

 ライヴ前にベースのル・ボン・ジュールを見かけたのだけれど、ステージには立っていなかった。事情はわからないけれど、ケニーの横で横にリズムを取りながらニコニコと弾く姿と音が好きだっただけに残念だった。ところが、その男、私の見間違えではなくアノ場にいたのだ。ラストの"678"になると、ビール片手でご機嫌もご機嫌な様子でオーディエンスをかき分けケニーの目の前に現れた。そして"678"を演奏するメンバーを正面から覗き込んで笑わせて、踊って、歌って、最後にはお客さんといっしょに合唱と、思わぬ場面で最後の盛り上がりにひと花添えていた。

わざわざイギリスまで足を運んででも、何度でもキング・クレオソートのライヴを観たいと思うのは、キング・クレオソートの音楽の原点はライヴにあるからだと言っていい。ライヴと言ってもキレイなハコで完璧な機材、照明がセッティングされた場所が必要なわけではない。ただそこにギター1本が、アコーディオンがあれば、道端であろうと、小さなバーであろうと、そこが彼らにとってのライヴ・スペースになるのだから。


--setlist -- (原文まま)

Leslie / Home in a sentence / Russian sailor Shirts / Turis Tub / Nooks / No Clue / Not One bit Ashamed / None of that / Spyshick / Admiral / Bombshell / At the Wal



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