ザ・ギター・プラス・ミー、タマス・ウェルズ @ 渋谷オーネスト (25th Aug. '07)
ギター1本の奇跡
多くの友人たちが、伊豆の山の中でおこなわれたメタモルフォーゼに行っていて、ちょっと寂しい思いをしていた8月の最終土曜日、東京でもこんな素晴らしいライヴに出会えたので大満足だった。この日の渋谷O-nestには、木下美紗都、ザ・ギター・プラス・ミー、タマス・ウェルズの3組が出演した。3者ともアコースティック色が強い歌を聞かせる。このうちザ・ギター・プラス・ミー(the guitar plus me)とタマス・ウェルズ(Tamas Wells)を取り上げたい。
ザ・ギター・プラス・ミーは、シオザワヨウイチのソロプロジェクトで、アコースティックギター1本で世界を作る。彼の詞は全編英語で、飛べないので空を憎むペンギン、信号待ちの話、人工冬眠の話など、非現実と現実の混ざり具合が寓話的であり、とぼけたユーモアがあるかと思えば、辛辣な批評がある。その歌がシンプルな演奏で生み出されると、ゆったりとした時間が流れるのだ。それは、決して癒しと呼べるような単純なものではないけど、ある種の安らぎのようなものを感じる。
そして、タマスウェルズ。めちゃめちゃ素晴らしかった!! 本国オーストラリアでは「ニック・ドレイク・ミーツ・シガーロス」と評され、サイモン&ガーファンクルに影響を受けたらしく、また、あるサイトでは元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハのソロに近いと言われるように、アコースティックの柔らかい手触りと、優しく美しい声が聞く人の心を掴む。今年のフジロックで言えばジョナサン・リッチマンだろうか。
タマスの声は哀しみや苦しみ、過酷な現実を背景にしているのを感じとることができるけど、基本的には光のような祝福に満ちている。「タマちゃんと呼んでください」と挨拶したり、「このギターはミャンマーで800円くらいで買ったんだ」とか、歌の成り立ちをユーモラスに語ってお客さんをリラックスさせてから、シンプルにギター(数曲キーボードが入る)で歌われていくのは、奇跡を目の当たりにしているようだ。
おれは、このライヴの日まで全くタマス・ウェルズのことを知らず、白紙の状態で聴いて、あまりの素晴らしさに驚いた。ライヴ後に日本盤CDを買ってライナーを見ると、彼はオーストラリア出身で、本国で音楽活動を始めるも、今はミャンマーに住んでHIV/エイズ対策のNGOの一員として活動しているとのこと。軍事政権下でさまざまな圧制の現実に直面した日々を送ってなお、このような美しい歌を歌えることを思うと、何度も言うようだけど奇跡のようだ。
2度目のアンコールに応えたタマスは、ビートルズの"ノーホエア・マン"を歌った。この声でビートルズの曲とか聴いたら凄いよなぁ、と思っていたら、こんな幸運が!! ホント、先に挙げたアーティストが好きな人、ギター・ポップやネオ・アコースティックが好きな人は、まずはマイ・スペースでUPされている音源を絶対に聴いた方がいい。
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ギター1本の奇跡 (07/08/25@ Shibuya O Nest) : review by nob
癒しと毒と (07/01/13@ Shibuya Koen Doori Classics) : review by nob
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