ライロ・カイリィ @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン (20th Aug. '07)
可愛いだけじゃあ、だめなのよ
初めて彼らのアルバムを手にした時は、てっきりライロという名のシンガー・ソングライターがバンドを率いているものとばっかり思っていたが、どうしてどうして、真相はジェニィ・ルイスという女性ヴォーカルを筆頭にした4ピースのれっきとしたバンドなのである。まあ、彼女を始め、各メンバーも個々にサイド・プロジェクトを並行するなど活発な所があり、ジェニィはソロ名義でアルバムをリリースしているし、且つ所属レーベル、サドリクリークのレーベルメイトであるブライト・アイズや、これまたデス・キャブ・フォー・キューティの分派、ザ・ポスタル・サーヴィスの作品にゲスト・ヴォーカルとして参加。この黄金のUSインディ布陣を語る上では欠かせない、密かに隠れ人気を欲しいままにしたバンドだ。サウンドは初期から近作に至るまで、カントリィの懐かしい響きとフォークの温かさが混在した心落ち着くものであるが、ジェニィのがっしりとした太めの声が、可憐でガーリィなその彼女のルックスからはちょいと想像し難く、ははーん、さしずめひらひらドレスを振りかざす囁きヴォイス系だね、などというイメージ上だけの彼らへの手前勝手な偏見を気持ち良く裏切ってくれたものだ。
予定より20分も遅れてステージに登場したバンド・メンバー。ジェニィは、膝上20センチ強の悩殺ミニ・スカートにラメのタイツといういでたち。前列を占めた、まだ青臭さ漂うファンの男共にとっては何とも待った甲斐ありであろう。序盤からボウタイで決めたギタリスト、ブレイクのの激しい動きと、何とも楽しげに、精力的に演奏する姿に圧倒される。それはドラマーにも共通して言えた事で、だからこそ始め5、6曲でのヴォーカル、ジェニィの表情に乏しく溌剌さのないパフォーマンスがやけに目についた。CDと何ら違わない歌声は良く通り、力まずして強く、同時に滑らかで心地良く耳に届くのだが、ただCDと同じことをライヴで繰り返されただけじゃあ、つまらない。声がひっくり返ったって何だって良い、生の場だからこそ生まれる息遣い、それが前半の演奏からは感じられなかった。これでは中盤でリード・ヴォーカルを取ったブレイクの方が、その弾けた動きや満面の笑みからもまるで主役を食っているではないか。と、まあいらぬ心配をしながらの観賞であったが、その彼が歌った中盤以降は、吹っ切れたのか、ジェニィがよりリラックスし、笑顔でリズムに体をくねらせる様になった。本日発売となった最新アルバムからの曲を多数披露し、そこからはこれまでの牧歌的な曲の雰囲気が薄まり、ファンキィでダンサブルなサウンドが前面に伝わって来て、バンドの軽快な動きに合わせてどんどん観客がノり出す。そうそう、これでこそライヴさね。
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静を汲んだ今までの流れを保ちつつも、これまで以上に明るさと積極性が増した最新作を混合させたセットは序盤の大人しさを後半の盛り上がりがカバーし、結果オーライといったところ。ただ、ジェニィのシンガーとしてのパフォーマンスにはちょっぴり物足りなさを感じた。独特の魅力を放つ声とそのヴィジュアルだけに、やはり目を釘付けにさせる様な動き、存在感を期待してしまう。せっかくフォークとロックのブレンド加減が絶妙な楽曲があるのだし、最新アルバムは前作『モア・アドヴェンチュアラス』を凌ぐ良作となっているだけにライヴの感動がもっと欲しい。もういいや、じゃ無くて、またライロ・カイリィを観に来たいなと思わせる様な、そんなライヴの感動を。
-- setlist --
It's A Hit / Close Call / Portions For Foxes / Paint's Peeling / Breaking Up / Dreamworld / Wires And Waves / Ripchord / Under The Blacklight / Smoke Detector / Dejalo / 15 /Rise Up With Fists / Spectacular Views
-- encore --
Give A Little Love / Does He Love You |
report and photos by kaori
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2007
可愛いだけじゃあ、だめなのよ : ライロ・カイリィ (20th Aug. @ イズリントン・アカデミィ、ロンドン)
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
極めずに進み続ける野心 : ザ・クークス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
命短し、踊れよ乙女 : キャンセイ・デ・セイ・セクシィ - シーエスエス (23rd Apr. @ アストリア、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
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