シザー・シスターズ @ ジ・オートゥ、ロンドン (26th Jul. '07)
宵を彩るファンタジスタ
とりあえず目に入ってくきたのが、ステージを覆う幕には勿論の事、その前方に設置された花道までにも型どられた、バンドのロゴ・マークである鋏型の足。あくなきまでにゴージャスであり、きらびやかなその美意識と、70年代のディスコ・ビートを踏襲した純真なポップス。大胆でも決して眉をしかめるような猥雑さを感じさせない、セクシュアリティが弾けるシザー・シスターズのその音楽は、不思議と子供から大人まで世代を問わずに惹き付ける陽気さをもって聴く者の心を躍らせる。オープニングでは、後方のプロジェクターから幕にバンドのイニシャルを一つ一つ映し出し、バンドを迎えてくれという観客への演出。その文字の写る速度がどんどん早まり、興奮に駆り立てられた人々はただもう熱い声援で彼らの登場を切望している。浮き世を忘れ、熱い夜に身を委ねるには最高のショウの幕開けだ。
シフォン仕立てで、透け透けのトップスに銀ラメのぴっちりパンツ姿で登場したヴォーカルのジェイク。曲間に腹筋したり、やけににこにこしながら彼がピョンピョコステージを往来する間に、貫禄たっぷりなもう一人のヴォーカル、アナ及びその他のメンバーが現われる。ふわふわとこれまた透け透け感たっぷりのドレスに身を包み、マラカスをシャカシャカする彼女は、4曲目をソロで歌ったものの、CD同様果たしてどこでヴォーカルに貢献しているのかというくらい全般を通して声そのものが目立たない。そもそも、ジェイクが曲のほとんどをリードしており、彼女は寧ろその傍らで妖しく舞い、ここぞという時にきりっと決めた表情を客席に向けているのだ。シャイだというジェイクにかわって観客を煽る勇ましいMCなど、楽曲そのものよりも魅せる側でこの人の存在感が頼もしい。何より美人だし、腕に深く掘られたタトゥーが見目にもゾクゾクとする。ファースト・アルバムから馴染みの深い曲には客席総立ちでダンスが起こり、近作のシングル曲でも体をシェイクして、バンドのノリと一体になったオーディエンスの楽しみ方が目立っていた。
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音そのものは、特にこのプレイヤーが凄いだとか、リズム隊のシンコペーションに唸らされる、といった技術的な驚きは特に無いが、演奏うんぬんよりも、やはり彼らは弾けた動きとそのヴィジュアルを内包した表現で、際どい所も華やかさに変えて目で楽しませてくれるバンドだ。ビージーズを思わせるディスコ・サウンドに、分かり易いメロディという曲展開なので、例えこの空間が非現実的であっても、寧ろそれだからこそそのムードに合わせて踊りたくなるし、胸が騒ぐ。真夏の夜の夢と言うにはあまりにも肌寒い7月のロンドンだが、ドームの中では外の天気などお構い無し。晴れない空に変わって、まぼろしながら太陽よりも明るい彼らのパフォーマンスが、束の間の夜に眩しかった。
-- setlist --
She's My Man / I Can't Decide / Tits On The Radio / Skins / Laura / Lights / Paul MacCartney / Take Your Mama / Ooh / Might Tell You Tonight / Comfortably Numb / Kiss You Off / Music Is The Victim / Filthy / Gorgeous
-- encore --
I Don't Feel Like Dancing / Get It Get It |
report by kaori and photos by Darjeeling
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2007
宵を彩るファンタジスタ : シザー・シスターズ (26th Jul. @ ジ・オートゥ、ロンドン)
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
極めずに進み続ける野心 : ザ・クークス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
命短し、踊れよ乙女 : キャンセイ・デ・セイ・セクシィ - シーエスエス (23rd Apr. @ アストリア、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
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