ブライト・アイズ @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン (4th Jul. '07)
悲しくても泣けない時がある
まだ先月のグラストの興奮も醒めやらぬ中、ブライト・アイズは単独公演の為にロンドンへ再び戻って来た。前回の春の公演で感じた、彼の微かな希望の光は瞬く間に変わる感情の流れであっさりと消えてしまったのか、今回のパフォーマンスで観せたコナーは、再び彼特有の憂鬱と影を思わせる、どこかダークな印象を与えた。
二日間公演の初日は機材のトラブルが起こり、アンコール時にはアンプリファイアに突進するなどの不穏な動きを見せていた彼だったようだが、この日の夜もほぼ満員の客席に温かく迎えられ、最新作のアルバム曲だけではなく、過去のクラシカルなナンバーも交えた、ファンにとっては嬉しいセットリストで情熱溢れるプレイをしていた。半数以上の観客が男性であること、その多くがヤングの花盛りを過ぎた、もの思う世代であっただろう事も踏まえ、コナーが紡ぐ自らの悲しみ、怒り、そして絶望の底を知りながらも決して拭い去る事の出来ない一筋の希望が照らされた楽曲の数々に、それぞれの胸の思いを噛み締めながら耳を傾けている様子がそこかしこで見られた事は何か特別な瞬間として筆者の胸に映った。性別など音楽を聴く上で何の意味もないのだが、様々な事柄に対する感じ方、捉え方はやはり時に男、女であることで変わってくる事がある。筆者は女であるけれど、そういった区別はともかく、自分自身の心境によって、同じ音楽でも全く違う音色に聴こえてくるのが今、まさにこの時なのであった。
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現実でありながら、夢心地でもあるフェスティヴァルで聴いたブライト・アイズの音楽は、例えその多くが内省的でアイロニックな眼差しを讃えていても、それを受ける側の気持ちが高揚していることで心を動かす陽のエモーションの方が強かった。今ひとたび日常に舞い戻り、ありふれた日常のささやかな楽しみとしてコンサートに趣き耳にするブライト・アイズは、例えそれがメジャー・コードだったとしても救いようなく悲しい。でも、その悲しみはおいおいと泣けば忘れてしまえるほど単純なものではないから、涙を超越したやるせなさとして心に奥深く響き渡ってゆく。弦楽の音色のせいだけじゃない。諦めだとか、無念に近い思いがアコースティックの有機的な音に絡まって、どこまでも底暗い感情に迫って来る。決して後味の良いエンターテインメントではないけれど、こうして彼はいつだって逃げる事のできない真実を、自らの音楽を通じて示し続ける人なのだ。
-- setlist --
Clairaudients / Hot Knives / False Advertising / Middle Man / First Day / Cartoon Blues / Brakeman / Calendar / No One Would Riot For Less / Soul Singer In A Session Band / Cleanse Song / I Believe In Symmetry
-- encore --
Gold Mine Gutted / Southern State / Unknown / At The Bottom Of Everything |
report by kaori and photos by Darjeeling
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悲しくても泣けない時がある (07/07/04 @ Shepherds Bush Empire, London) : review by kaori, photos by Darjeeling
純粋なる純白 (07/06/22 @ Glastonbury Festival, Pilton) : review by kaori, photos by emi
photo report (07/06/22 @ Glastonbury Festival, Pilton) : photos by emi
天才とセンティメンタリズム (07/03/16 @ Koko, London) : review by kaori
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2007
悲しくても泣けない時がある : ブライト・アイズ (4th Jul. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
暴れん坊がゆく! : ノイゼッツ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ワンダーワールドはキリの良い所までが丁度良い : ミーカ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
叫ぶなら中身を詰めよ : ザ・ホラーズ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
陽気で緻密なサウンド・マジック : ザ・ゴー!ティーム (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
大団円はもらった : ザ・ゴシップ (24th Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夢見る頃は過ぎない : パトリック・ウルフ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
極めずに進み続ける野心 : ザ・クークス (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
辿り着いたメッカ : クラクソンズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
夜を制した男 : イギー・アンド・ザ・ストゥージズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
旬に乗ったらどこまでも : CSS (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
不思議少女のラビリンス : バット・フォー・ラッシィズ (23rd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
洗練されしお茶目心 : ルーファス・ウェインライト (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
紳士の奏でる狂奏曲 : モデスト・マウス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
血は雨よりも濃く : ザ・クリブス (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
純粋なる純白 : ブライト・アイズ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ソウルが無くても昂るの? : ブロック・パーティ (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
ビョークがビョークである所以 : ビョーク (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
楽団と狂騒 : アーケイド・ファイア (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
腐った魚は食えない : ジ・オートマティック (22nd Jun. @ グラストンバリー、ピルトン)
胸に巣食うよ、インディ病 : ザ・ピジョン・ディテクティヴス (30th May @ HMV、ロンドン)
指先の革命 : DJクラッシュ (27th May @ ココ、ロンドン)
じゃじゃ馬歌姫、KO勝ち : ザ・ノイゼッツ (24th May @ ココ、ロンドン)
かくも熱き音魂 : コールド・ウォー・キッズ (21st May @ ココ、ロンドン)
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
命短し、踊れよ乙女 : キャンセイ・デ・セイ・セクシィ - シーエスエス (23rd Apr. @ アストリア、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
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