コールド・ウォー・キッズ @ ココ、ロンドン (21st May '07)
かくも熱き音魂
目一杯喉を震わせた高らかでソウルフルな歌声、体丸ごとで表現される、ブルージィなバンド・サウンド。カリフォルニア発の4ピース・バンド、コールド・ウォー・キッズはハイプや話題性とは無関係に、自分達のその情熱溢れる音楽とそれを再現する圧倒的なライヴ・パフォーマンスで、デビュー間も無い新人としては幸先の良い評価を受けた。何よりもまず耳を惹き付けるのは、前述したヴォーカル、ネイサンの歌声。魂を振り絞るかの様に空に響き渡るこの声は、それだけでも特筆するほど素晴らしいが、各楽器、特に力強いベースとドラミングの絡みが、コールド・ウォー・キッズの楽曲をドラマティックにするのに大きな役を担っている。自身のショー・ケースや、2月のクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーのサポート・アクトなどでちょこちょことUKでもプレイしていた彼らだが、春のヘッドライナー・ツアーとしてあっさりソールド・アウトさせたココへと、千秋楽を飾る為に戻って来た。
30代以降の、それも男性客が目立つフロアから歓声が上がり、バンドの姿が闇に浮かび上がる。始まりから4人全員の漲るパワー全開な動きに目を奪われた。ドラマーのジョニィは物理的に定位置から動けないが、その他のメンバー3人が狭いステージ上を往来し、何かを確かめるかの様に天を仰ぎ、手拍子でリズムを刻む。マイクの位置にいようといまいと関係無く旋律をなぞって歌い、楽器と一体になってグルーヴを生み出してゆくその様が圧倒的である。息を飲む、と表現する光景にも色々あろうが、彼らの紡ぐこの世界には、口を開けっ放しにして見とれるしか無い音の昂りを感じるのだ。 "ウィー・ユース・トゥ・ヴァケイション"、"ホスピタル・ベッズ"の、激しく叩かれるピアノの音色に滲むブルーズの哀愁とフォーク・ロックの内省たる響きは、懐かしさと新しさの混じり合った美しいメロディを伝える。ただ、ココという中規模な会場内において、重いベース音がサウンドの中心から動かず、時に過剰なリズム隊のその音がギターの音色を完全に覆ってしまい、バンド・サウンドの機微、繊細な部分に光が当たっていないバランスの悪さもあった。"ハング・ミィ・アップ・トゥ・ドライ"では、それが解消され、各パートの押し引きが均整取れたアンサンブルとネイサンのハイ・トーンが気持ち良くこだましたのが救いだったが。
|
レコードからは、通好みで職人気質を感じさせる音が聴こえて来るが、実際のライヴ・パフォーマンスではそれに加えて、エナジェティックな演奏を繰り広げるコールド・ウォー・キッズ。この日はツアーの最終日であったのと、週末に英国はプレストンで行われたBBCレディオ1主催による"ビッグ・ウィークエンド"に出演して疲労も溜まっていたのだろう、時折高音が掠れてしまい辛そうな歌の場面もあったが、それでも気迫溢れる演奏は、巷のお子ちゃまバンドを一蹴するだけの凄さがあった。サム・クックスのカバー、"ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム"を披露し会場の合唱を誘い、新曲も2曲ほどプレイした一時間強のセットは、質、量共に充実した内容。25日から東京で二日間、大阪でも一夜の来日公演がすぐそこに迫っている。日本のオーディエンスにはこの熱い音魂がどう響くことだろう。
-- setlist --
Tell Me In The Morning / Rubidoux / Passing The Hat / We Used To Vacation / Saint John / Dirt In The Ground / Hospital Beds / God Make Up Your Mind / Red Wine, Success! / Robbers / Every Valley Is Not A Lake / Dreams Old Men Dream / Hang Me Up To Dry / Expensive Tastes
-- encore --
A Change Is Gonna Come / Quiet Please |
report and photos by kaori
|
|
2007
グロウスティックの震撼 : クラクソンズ (18th May @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
大波に乗れ! : ザ・マッカビーズ (17th May @ アストリア、ロンドン)
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
|
|