ザ・マッカビーズ @ アストリア、ロンドン (17th May '07)
大波に乗れ!
同じ様なリズム、ただ衝動に駆られたままに掻き鳴らされる量産ギター・ロックは、その特徴が良くも悪くもバンドの生死を左右する。彼ら、彼女らにしか出せないサウンド、オリジナルの世界観、それさえあれば受け手の耳には必ず何かが届くはず、そんな実はごくごくシンプルな事なのに、数あるインディ・バンドに目を向ける中でそむけることの出来ないその壁はいつも心を複雑にさせる。早い話、盛り上がっても所詮国内レヴェルの域を出ない、世界へなかなか広がって行く事ができないのだ。インディ、という括りそのものにも問題はあるだろうが、良い音楽はジャンルも国境も越えると信じる限り、勢いの良いミュージシャンの最高なライヴを体験する度、内弁慶じゃあ勿体ないぜよ、と思う。今夜アストリアを完売させたブライトン出身の5人組、ザ・マッカビーズは、野心に満ちたギター・サウンドと、妙に籠った声に味がある、聴き捨てならないヴォーカルが活きた若手バンドの注目株である。
人の熱気と換気の悪さで熱帯夜状態の会場は、まだ頬の赤いハイ・ティーン達でびっしり。まるで学園祭のような騒々しいノリで始まったライヴだが、メンバーが現われ、ともなく嘶く様なギター音がステージから上がると、序盤にも関わらずもの凄い人波が沸き起こる。何よりもまずその鋭いギターが全面に出たサウンドが、ぐんぐんと速度を上げてオーディエンスに迫り、そこに見た目だけなら入れ替わってもきっとわかるまい、前座のジャック・ペナート似のフロントマン、オーランドの歌が広がってゆく。"オール・イン・ユア・ロウズ"、"プレシャス・タイム"など、マッカビーズの特徴と言えるスリリングなイントロ、徐々に盛り上がってゆく秀逸な曲展開にダンサブルなリズムが皆の肩を揺らし、"ティシューズ・ショルダーズ"、"トゥースペイスト・キスィズ"という、まったりと優美なメロディでライヴのペースにバランスを持たせる器用さをも持ち合わせている。まだ若い彼らだけれど、そのフレッシュな攻撃性、エキサイティングなギター・ロックの表現力には、他に同じことをやっているバンドがそこらにいても、ずば抜けて光るマッカビーズ印を感じるのだ。オーランドのイアン・カーティスの様な痙攣ダンスが角張った彼らの音にぴったりはまり、レイヴでも、テクノでも無い、踊るロックが聴こえてくる。
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アンコール時に最前列の男の子が立て続けでステージに乱入し、そんなはちゃめちゃな場面に笑った正味一時間のギグは、最初っから最後まで同じボルテージで観客の興奮を冷ます事はなかった。クラウド・サーフの後にガッツ・ポーズで閉め出される汗まみれのキッズ達の笑顔は、こんな風にきっとめちゃくちゃ楽しいライヴ会場でしか生まれない特別なものなのかもしれない。胸を躍らせるチューンの数々、とりわけツアー最終日となったこの夜に、ライヴを観に来た人、関わった人全てに捧げられた"エックス・レイ"の凄まじさは忘れられない。この夏の暴れん坊将軍筆頭候補、確実だ。
-- setlist --
Latchmere / All In Your Rows / Happy Faces / Tissue Shoulders / Good Old Bill / About Your Dress / Davis / Toothpaste Kisses / Precious Time / Bicycles / Mary / X-Ray / Lego
-- encore --
Diamond Boat / First Love |
report and photos by kaori
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mag files : The Maccabees
大波に乗れ! (07/05/17 @ Astoria, London) : review & photos by kaori
旬のものは旬のうちに (07/05/06 @ Manchester Academy 2, Manchester) : review by miyo
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2007
嵐を呼ぶ男 : ザ・レモンヘッズ (16th May @ ココ、ロンドン)
虎穴に光る虎児の牙 : プル・タイガー・テイル (11th May @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン)
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
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