シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック @ バーミンガム・アカデミー2 (14th May '07)
ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ・ツアー
4月下旬のスコットランド公演を皮切りに「ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ・ツアー」がスタート。5月上旬のアイルランド公演を終え、イングランド及びウェールズ(カーディフのみ)を周る2週間の公演のうちのいくつかに足を運んだ。
5月14日、バーミンガム・アカデミー2。英国内を本格的にツアーで周るのはバンドにとっても久々のことだが、地元シェフィールドに近い都市ではそれまでに何度かライブを行っていることもあり、南部の他都市と比べると観客の熱気が全く異なる。経験上、おそらくそれはこのバンドの観客に限ったことではないと思うのだが、特にこの日は不思議なくらいクラウド・サーフで前方に流されてくる観客が多かった。実は、前回のツアーでもこの会場でそのような光景をみた。あの時は2人くらいだったかと記憶している。しかし、今回は女性も含めて少なくとも5人。いや、それ以上だったかもしれない。もちろん、ステージと観客のフェンスの間には充分なスペースがあり、常時、体格の良いセキュリティーが数名待機しているので、人の波に乗って運ばれても最終的にはしっかり受け止めてもらえることを知っているからこそやっているのだろう。そんな環境がなくともそういうことが起こる都市もないわけではないのだが。
3月の東京公演において、確かな自信と成長をこの目で確認することができた。だが、やはり本国ではもっと自分たちの表現したいように演奏できるはず。そして実際、そうしていた彼らが、今回のツアーにおいてさらにもうひと回り大きくなっていく姿を確認することができた。
その最たる点がセットリスト。今回も前回同様に映像チームが同行していたのだが、基本的な流れというものはあるにせよ、公演ごとに毎回曲目を変えることができるようになっていた。それはライブ・バンドとしては当然なことなのかもしれないが、今まで見てきた彼らのライブの中では、仮に数曲が入れ替えられていたとしても、それが上手く機能していないと感じられることが多かった。だが、今回はライブ全体の流れを損なうことなく公演ごとに変化させ、初めて彼らを見る者だけでなく、多くのリピーターをも楽しませてくれた。アンコールでは観客からのリクエストに応えてみせたりする場面も見受けられたことさえあった。
それと同時に、このバンドの最大の特徴であり最大の弱点を露呈してしまう場面もあったのは事実。電気系統(主にコンピューター)のトラブルに見舞われたこと数回。特に前半戦はハプニングの連続で、ライブ前は客席から思わず「今日は何も起こりませんように」と祈ってしまったことが何度あっただろう。プログラミングされた音とナマの音の融合。しかしながら、コンピューターが作動しなくなると演奏も進まないし、ギターの音が突然出なくなったりすることもある。だが、たとえ何かが起こっても、もう今ではすっかりそれなりに対処する術もきっちり身につけている彼ら。そのあたりも、ひと回りもふた回りも大きくなったと感じた理由かもしれない。
バーミンガム公演では何も壊れることはなく、バンドの演奏も観客の盛り上がりも絶妙のバランスで素晴らしい公演のひとつだったと思う。だが、今回いくつかの公演を見て感じたのは、観客の反応はごく一部の都市を除いて日本とそれほど変わらなかったということ。シングル・カットされた'Radio Protector'や'Retreat! Retreat!'が始まるとほぼみんな一斉に歓声を上げて踊り(若しくは暴れ)始める。この2曲だけ異様な盛り上がりを見せるあたりは日本も同様だった。
5月20日のロンドン公演の翌日から最小人数でヨーロッパ・ツアーへと旅立っていった彼ら。最後に見せた疲労困憊な眼差しの先にあるものは一体何なのか、そんなことを少し気にしながらも、もっとたくましくなっていつかまた日本にもやってきてくれる日をただただ待っているしかないのだ。
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--setlist--
Await Rescue / A Faisafe / The Distant & Mechanised Glow of Eastern European Dance Parties / This Cat Is A Landmine / Don't Go Down To Sorrow / Wax Futures / Fix The Sky A Little / When We Were Younger & Better / Radio Protector / I Swallowed Hard, Like I Understood / Retreat! Retreat! / These Things You Can't Unlearn
-encore-
Primer / AOD
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photos and report by miyo
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2007
ザ・ミリマー・ディザスター : ザ・ミリマー・ディザスター (14th May @ バーミンガム・アカデミー2)
ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ・ツアー : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (14th May @ バーミンガム・アカデミー2)
旬のものは旬のうちに : ザ・マカビーズ(6th May @ マンチェスター・アカデミー2)
光と音の洪水の中で : ジ・アーリー・イヤーズ(4th May @ ザ・ウインドミル、ロンドン)
CD review シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック : "ザ・デストラクション・オブ・スモール・アイデアズ" (25th Apr.)
三者三様 : ドン・キャバレロ (24th Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ)
また来たのと言うなかれ : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (25th Mar. @ 渋谷クラブクアトロ)
一度は見ておくべきもの : コンヴァージ (12th Mar. @ 心斎橋クラブクアトロ)
オオサカ発、セカイへ : シベリアン・ニュースペーパー (2nd Feb. @ 梅田シャングリ・ラ)
贅沢なひととき : キャレキシコ (24th Jan. @ 心斎橋クラブクアトロ)
2006
ザブトン席にて : シベリアン・ニュースペーパー (17th Dec. @ ヘップ・ホール)
圧巻のツアー・ファイナル : モグワイ (12th Nov. @ リキッドルーム恵比寿)
光と音 : モグワイ (11th Nov. @ 新木場スダジオ・コースト)
轟きとどよめき : モグワイ (8th Nov. @ 難波ハッチ)
ライブ治癒力 : ミステリー・ジェッツ (4th Nov. @ 心斎橋クラブクアトロ)
コラム バック・カタログ : アレクシス・コーナー(31st Oct.)
CD review ジ・アーリー・イヤーズ : "ジ・アーリー・イヤーズ" (25th Sep.)
東名阪 : ザ・フューチャーヘッズ (6th Sep. @ 渋谷オー・イースト)
まったりと : ザ・フューチャーヘッズ (5th Sep. @ 名古屋クラブ・クアトロ)
温度差なんて : ザ・フューチャーヘッズ(4th Sep. @ 心斎橋クラブクアトロ)
初来日ライブ・レポ : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (15th Aug. @ タワーレコード渋谷店)
踊れよ : ブンブンサテライツ (25th Jun. @ 大阪ビッグ・キャット)
デカイ声だからじゃないですよ : ソウル・フラワー・ユニオン (23rd Jun. @ 心斎橋クラブクアトロ)
撮りきれない魅力 :ベン・ハーパー & ジ・イノセント・クリミナルズ (7th Jun. @ 難波ハッチ)
CD review ジョン・ピール・アンド・シーラ : "The Pig's Big 78s" (26th May)
CD review スコット・マシューズ : "Passing Stranger" (5th May)
ウクレレとセピア色な歌声と :ジャネット・クライン (23rd Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ)
CD review アレクシス・コーナー : "kornerstoned" (19th Apr.)
レディオ・プロテクター・UK ツアー2006 : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (06/03/03 @ Sheffield The Leadmill and 06/03/04 @ Manchester Academy 3)
半年後調査 : ジ・アーリー・イヤーズ (5th Mar. @ バー・アカデミー・バーミンガム)
気負うことなく : NMEアワーズ・ショー 2006 feat. ナイン・ブラック・アルプス、ザ・ロングカット、ウォルフマザー (24th Feb. @ ロンドン・ハマースミス・パレ, ロンドン)
おいしい組合せで : NMEアワーズ・ショー 2006 feat. ラーリキン・ラブ、フォワード・ロシア、ザ・デューク・スピリット、エルボー (21st Feb. @ ジ・アストリア, ロンドン)
ワン、ツーは無くても : ジ・オーディナリー・ボーイズ (19th Feb. @ 心斎橋クラブクアトロ)
満員御礼 : フランツ・フェルディナンド (12th Feb. @ ゼップ大阪)
ココロの余裕 : ザ・マジック・ナンバーズ (12th Feb. @ ゼップ大阪)
レノは大人気 : ロイクソップ (4th Feb. @ 心斎橋クラブクアトロ)
真冬に汗だく続出 : カイザー・チーフス (27th Jan. @ 大阪ビッグ・キャット)
CD review カッコイイ。楽しい。最強。 : "Gaz's Rockin' Blues (Club Classics)" (26th Jan)
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