プル・タイガー・テイル @ プラウド・ギャラリィ、ロンドン (11th May '07)
虎穴に光る虎児の牙
芽の出るバンドには華がある。安い表現だが、数あるライヴのサポート・アクトを観る中で、違いを感じさせるオーラを放つそういった新人にばったりと出くわす場面がごく稀に、でも確実にあり、その瞬間はもう、ニヤリとしか言い様が無い。シェークスピアの生地、ストラットフォード・アポン・エイヴォン出身のトリオ、プル・タイガー・テイルはまさに、その決定的なオーラを光らせていた。忘れもしない、3月のゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライの前座として咆哮を上げていたステージ上で。
地下鉄駅チョークファーム寄りに位置するステイブルズ・マーケット内にある小規模イヴェント・スペース、プラウド・ギャラリィで今夜行われる彼らのライヴセットは、わずか2日前にシークレット・ギグという触れ込みで発表された。今月UK本土を巡る、NME主催のニュー・ミュージック・ツアーに参戦する前のウォーム・アップ・ショウだという。ここで定期的に開かれるイヤー・ゼロというクラヴ・イヴェントの一環なのだが、先日ザ・クークスも同様にアコースティック・ライヴを行った。シンプルなアート感覚で装飾されたこじんまりとした会場である。ささっと登場したメンバーはさっそく最新シングル、"ミスター100%"をスタート。マイクの不具合でしばしヴォーカル、マーカスの歌声が演奏にかき消されたが、スリリングなサウンドスケープはマイスペースから聴こえて来る印象そのまま。手数の多いドラミングを背に、シンセで不穏な音を巧みに撒き散らし、肝のメロディがここぞという時にしっかり届く。ボーイ・キル・ボーイのクリスにどことなく似た音色のヴォーカルだが、色気よりは茶目っ気という表現が似合う。3人の呼吸がぴったり合ったパフォーマンスから生まれてくるのはメリハリのはっきりしたポップス。予定調和な曲展開に甘んじればただの量産音楽にしか聴こえないが、彼らのバンドとしての「顔」が見えるから、どんどん引き込まれる。
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公式にはまだ試聴できない曲の数々もプレイされたが、胸躍るテンポに、耳を惹くフレーズが爽快で心に残った。メロディックなギター・リフが主導のパブ・ロックは別に真新しくも何ともない。じゃあ、彼らの何が違うのか、バンドの「顔」ってルックスっていうことか。まあ、それもある。それぞれ嗜好はあろうが、ガールズ諸君にしてみればすこぶるチャーミングな男子達だ。3分半のポップ・ソングの既成の型にどう自分達のカラーを反映させるか、プル・タイガー・テイルは既に心得ている。彼らの曲に、表情にその輪郭がしっかりと帯びている。来年の今頃、いや今年中にはアストリアを完売させているだろう。断言悔い無し。
-- setlist --
Mr.100 Percent / Loki / Secret Says / Bad Sports / Hurricanes / I Call It It / Light Turns Red / Animator / Destruction / Let's Lightning
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report and photos by kaori
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2007
娯楽なロックは裏切らない : マキシモ・パーク (10th May @ アストリア、ロンドン)
壊れたおもちゃ箱 : ディアフーフ (2nd May @ ココ、ロンドン)
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
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