buttonマキシモ・パーク @ アストリア、ロンドン (10th May '07)

娯楽なロックは裏切らない


Maximo Park
 出し抜けになんだが、ミュージャンも生身の人間だから一長一短あって当然である。素晴らしいレコードを作り、常にその素晴らしさを再現するコンサートで観客を魅了する完璧なアーティストなぞそうそういるものじゃない。俗に言われるライヴ・バンドという表現はだから、裏を返せば、CDそのものは実際大した事ないけれど、ライヴは凄くいいんだよと擁護されているように聞こえてしまうのは捻くれた我が性分ゆえか。良い楽曲あってこその良いライヴ、なんぞと偉そうにのたまう気はない。要は私達受け手がどう聴くか、観るか、そして感じるかであると思う。2005年デビュー組のUKインディ・バンド、マキシモ・パーク。平均的領域を越えない素材だけれども、彼らは化けるのだ、ライヴで250度は確実に。

Maximo Park  3夜連続公演の初日、ここアストリアは演じ手と観客の距離が近い親密なヴェニューである。今や中規模アリーナを完売させる人気を獲得しながら、この会場を選んだことは彼らにとってもファンにとっても特筆すべき事。マキシモ・パークのステージ上のエナジーは、これだけ近い空間ならば確実にオーディエンスの体を貫く興奮を撒き散らす事必至だ。だからそれを体験すること以上に、このライヴの醍醐味はあり得ない。パフォーマーとしての佇まい、観客の盛り上げ方を心得た頭の良いヴォーカル、ポウルが中心軸となり、バンドは白熱の音を響かせる。痙攣状態のような小刻みなギター、ジャラジャラと自己主張をするシンセサイザーがメロディを盛り上げ、リズム隊は無表情を装いながらもしっかり基盤を支えた演奏。バンドの静と動のパーツがしっかり分かれ、だからこそ要の人物であるポウルの力強く張りのある歌声がバンドのサウンドを包括して、観る者を惹きつけるのだ。あまりにあからさまなサーヴィス精神は時として白々しいもので、あなたがそうなら私も式にと右に倣えでノらなければ、一緒に歌わなければバツの悪い思いをしてしまうような不自然な盛り上がりは興醒めだけれど、同じように観客を楽しませようという工夫でも、マキシモ・パークからは、彼ら自身が自分達の音楽を楽しみ、その上でお客さんも楽しませたいという思いが伝わってくるから嫌みがない。ライヴでいかにお客さんと盛り上がれるかを常に念頭に置いて楽曲作りをしていると話していた彼らのインタヴューをどこかで読んだが、ポウルを始め、メンバー皆必死顔でステージに立ち、豪快なステージングで観る者を沸かせる情熱、そしてそのひたむきさにはただただ感服するばかりだ。

Maximo Park  "アプライ・サム・プレッシャー"、"ザ・ナイト・アイ・ロスト・マイ・ヘッド"というライヴでの人気ソングでは相変わらず観客のノリが良くダイヴも見られたが、"アワ・ヴェロシティ"、"ブックス・フロム・ボクシィズ"、"ノーズブリード"らの新曲もライブの臨場感が相まり、従来の英国節の感傷的なメロディに、鋭角なロック・サウンドが大分加味されてダイナミックに聴こえて来る。元々線の細い楽曲故に、いきなり筋骨逞しい変化とは言えないが、少なくとも彼らの熱いライヴ魂が確実に生きている。"ザ・コースト・イズ・オールウェイズ・チェンジング"では、人の波がアストリアを大きく揺らした。CDに捧げた3000円をしばし悔やんだ人があったとしても、心配するなかれ。彼らのライヴに赴く事でその三倍の驚きと喜びが返って来るから。一度観たら、また必ず観に来たくなり、やっぱり観に来て良かった、そう思わせるバンドであると信じて疑わない。

-- setlist --

Graffiti / Girls Who Play Guitars / Now I'm All Over The Stop / The Coast Is Always Changing / Fortnights Time / Our Velocity / I Want You To Stay / By The Monument / Kiss You Better / Books From Boxes / The Night I Lost My Head / Your Urge / Apply Some Pressure / Nosebleed / Parisian Skies / Going Missing

-- encore --

Unshockable / Limassol
report by kaoriand photos by Darjeeling

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button娯楽なロックは裏切らない (07/05/10 @ Astria, London) : review by kaori, photos by Darjeeling
buttonあと、もう一歩 (07/04/04 @ HMV, London) : review by kaori, photos by Darjeeling
buttonこのライヴを観てから死ね (06/10/06 @ Brixton Academy,London) : review by kaori
buttonどの瞬間もマキシモ・パーク (05/10/08 @ Osaka Mother Hall) : review by 石橋栄, photos by izumikuma
buttonphoto report (05/10/06 @ Liquidroom Ebisu) : photos by izumikuma
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button2007

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button大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
button金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
button行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
button眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
button裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
button耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
buttonあと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
button泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
button二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
buttonボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
button失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
button ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
button加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
button天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
button音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
button踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
button怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
buttonフィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
buttonお茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
button闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
button密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
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buttonCD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
button賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
button真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
button僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
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button暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
button大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
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button2006


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button聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)


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