ジュリエット・アンド・ザ・リックス @ 恵比寿 リキッドルーム (10th May '07)
真のロック・クイーン
初めてジュリエット・ルイスのステージを観たのは2005年のフジロック・フェスティバルだった。映画『ギルバート・グレイプ』で爽やかな少女を演じていたジュリエットしかしらなかった私は、「女優さんがきれいなドレスで歌うのかしらん?」とか思っていた。レッドマーキーに彼女が現れた瞬間、自分の無知さ加減に打ちのめされることになる。シルバーのタイツにビキニトップ、バイキングハットをかぶって歌い、暴れる姿は女版イギー・ポップ。なんの躊躇もなく客席にダイヴするのを観ながら「世間的に許されるなら、イギーみたいに上半身裸で歌いたいんだろうなぁ。もっと自由な姿で」と思ったのを覚えている。実際、3月にリリースされたアルバム『フォー・オン・ザ・フロア』(国内盤)のジャケではトップレス姿を披露しているし、今回のステージはもしかして…。なんて余計な期待もしてしまう。なんだかヴィジュアルのことばかり気になるが、2年前のあの衝撃が今日のライヴに足を運ばせたのは間違いない。
ジュリエット・アンド・ザ・リックス、ジャパン・ツアー東京公演は20分押しでスタートした。まずはザ・リックスのメンバーがステージに現れると、じらされてしびれを切らせていた客たちがいっせいに前に押し寄せる。イケメン集団ザ・リックスが出す爆音とフロアからの「ジュリエットー!!」の叫びの中、Tシャツとストライプのスパッツ、頭には羽飾りといういでたちでジュリエット・ルイスがステージに登場してきた。ビジュアルは予想に反して普通だったが、奇抜はファッションなんかしなくても堂々と自信に満ちたオーラをまとった姿は素直にかっこいい。顔をゆがめ、過激な歌詞に載せたメッセージを次々と真剣に放っていく。これだけ胸を張って自分を表現できたら…。同性としてはかなり憧れてしまう。そんな彼女が鳴らすのはド直球のアメリカン・ロック。フジの時はジュリエットの衣装とパフォーマンスばかりが目立っていたように感じたが、今回は、しっかりヴォーカリストとしての存在感を見せつけていた。初っぱなから立ち止まることなく動き続けているのに、その歌は力強さを失わない。中盤のミドルテンポが続いた場面でも、伸びのある声と連獅子のごとく振り回される髪に魅せられ、フロアの興奮はさらに増したほどだった。まっすぐに音で勝負、その他の要素は付属品でいい。そういう自信がステージから見えるようだった。
ハリウッドでは「セレブ」と呼ばれている人なのに、ライヴ中のジュリエットはそんなとりすました雰囲気はみじんも感じさせない。ファンとの間にある壁を自らとり払おうとするかのように客席に手を伸ばし、笑顔を見せ、時にはフォトピットまで降りたってコミュニケーションを計ろうとする。ダイレクトに自分を見せられる場で、できる限り自分のやっていることを伝えたい。ファンと一緒にライヴを創り、楽しもうとする姿はただひたすらにいちミュージシャンだった。
アンコールが終わった後、ひとりステージに残り、大きな歓声に丁寧に応えていったジュリエット・ルイス。この光景をしっかり目に焼き付けようと、強い眼差しで客席を見つめていたその頭に、ロック・クイーンの冠をみた気がした。
set list(原文まま)
Intro/Mindful of Daggers/American Boy/Pray/B.S.King/Sticky Honey/Never got to tell you/Inside the cage/Purgatory Blues/This I know/Heat/Love to Kill/ Death of a Whore/Hot Kiss/ So Amazing
encore
Get Up/Speaking
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report by wacchy, photos by izumikuma
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photo report (07/05/12 @ Shinsaibashi Club Quattro) : photos by tommy
真のロック・クイーン (07/05/10 @ Liquidroom Ebisu) : report by wacchy, photos by izumikuma
photo report (07/05/10 @ Liquidroom Ebisu) : photos by izumikuma
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