ディアフーフ @ ココ、ロンドン (2nd May '07)
壊れたおもちゃ箱
初めて彼らのパフォーマンスを目にしたのは、去年のエディンバラ。といっても本命レディオヘッドのサポート・アクトとして、ベックの前に登場した時のことだが。フロントに立った自分と同じ日本人らしき小さな女性、サトミに対してはもちろんのこと、開始早々何やら子供のようなおかしな声で歌う彼女と、それに反して野外に響き渡るバンドの凄まじい轟音の嵐に戸惑いと驚きを隠せなかった。結成から13年、その間何度かメンバー・チェンジを繰り返し、現在の3人編成に落ち着いたディアフーフ。とにかく一口に言える事は、彼らの音楽性は他のどのバンドにも例えようがない、ということだ。
男性客が目立つ今夜のココ、口笛と歓声に迎えられステージに上がったメンバーは、しっかりとアイ・コンタクトを交わしてその音を刻み出した。囁き声のようで、か細くて聴き取れないサトミの歌声は旋律に乗ってるんだか乗っていないんだか良くわからない曖昧さである。歌詞も何やら意味不明。ただ、これこそが彼女の特徴。10才ぐらいの少女みたいなその不思議ちゃんな歌声が、次の瞬間には渦巻くノイズに吸い込まれサウンドがどんどん肥大してゆく。特筆すべきはドラマーのグレッグだ。フランケンシュタインのように上背があり厳しい顔立ちの彼が叩き出す強烈なドラミングは、今まで観たことがないほどに強力で思わずのけぞってしまう。ドラマーとして非常に印象深いが、その彼の揺るぎない地盤があり、そこにシューゲイジングばりのギター・ノイズ、ふてぶてしいベース・ラインが合わさることで、ディアフーフの渦巻き音が地面を揺らし、観ているこちら側はただただそれに圧倒されるばかり。一つ一つを演奏する度に、強い眼差しを交わし合う3人の姿には、隙がないほどに結束力の強さが窺える。
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彼らの音楽は、決してダンスしたり、縦ノリするようなロックではない。ソニック・ユース、シュウ・シュウらを引き合いに出して実験的だとみなす評もあるけれど、決まった主旋律や既存の型にはまらない曲風だというだけでそう言ってしまうには軽卒なほど、そこには十分にクラシカルなロックの要素がある。ただ、たった3人で繰り広げられるこれだけの爆音と、コアだねぇと唸りたくなるような即興パフォーマンス的な演奏、予測不可能なリズムの転調は紛れも無く斬新なバンドの形だ。レコード会社泣かせなサウンドであり、メインストリームには間違いなく乗らないだろう。そんな余計なお世話はともかく、彼女らの表現は真剣そのもの。度肝を抜かれるこの超集中型パフォーマンスと、ずっこけるような万年少女の歌声に文句無しで拍手。
-- setlist --
The Eyebright Bugler / +81 / This Magnificent Bird Will Rise / The Perfect Me / Dog On The Sidewalk / Dummy Discards & Heart / Believe E.S.P. / Milk Man / The Galaxist / Flower / Panda Panda Panda / Wrong Time Capsule / Spirit Ditties Of No Tone
-- encore --
Twin Killers / Look Away / You' re Our Two |
report and photos by kaori
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2007
汗くさメタルよ、さようなら : ロストプロフェッツ (23rd Apr. @ HMV、ロンドン)
腹に響くぜ、ロックン・ロール : ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ (18th Apr. @ アストリア、ロンドン)
大人しいのは見せかけさ : ピーター・ビョーン・アンド・ジョン (15th Apr. @ ココ、ロンドン)
金の卵探しはオール・ナイトで : ザ・ナインティーン・ハンドレッズ、ジャック・ペネイト、グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ (13th Apr. @ フォーラム、ロンドン)
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
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