buttonフェルミン・ムグルサ
アンド・アフロ・バスク・ファイアー・ブリゲード
イン・ヴィーニャ・ロック・フェスティヴァル
ベニカシム (29th Apr. '07)

バスク人の武器、それは言葉だ、フェルミン・ムグルザだ!


Fermin Muguruza
 リパブリカ・ステージで始まったフェルミン・ムグルザ・アフロ・バスク・ファイア・ブリゲイドのライブはいきなり梶芽衣子の"恨み節"で幕を開ける。いきなりの展開でこちらは「!?」と耳を疑った。曲は映画『女囚さそり』のキモとなる曲として知っている。でもここはどこだ、日本でなくてスペインだ! しかも、決して明るくないスローテンポの曲で4万人が歓声をあげる。これにはさすがに嬉しくなってバカ笑い。どうやらきっかけとしてクゥエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』があるようだ。なるほどね。

Fermin Muguruza フェルミンは地元・バスク国の言葉で歌う。バスクはフランスとスペインの国境上に位置し、独立を求めている地域。なのにバスク語(エウスカラ)はフランス語とも、スペイン語とも接点がない独自の言語で、古代の言葉だという説をとなえる学者もいるほどだ。地元の人やお隣ナバラ州の人であっても理解できないことがあるという。

 フェルミン自身が話してくれたのはこうだ。子供の頃、ピクニックに行く時、バスク国旗の3色(赤、白、緑)が裏側にあしらわれた靴下を履いていくんだとか。それ警察にみつけられると捕まるから、誰もいなくなった山のなかでだけそれを表にして歩いたというそれほどまでの狂気がスペインを覆い尽くしていたわけだ。バスクの言葉はフランコ政権時代に奪い去られ、弟(現サガロイのイニゴ・ムグルザ)と組んだ最初のバンド・コルタートゥ時代に自分で勉強したという。2ndアルバムで初めてバスク語の歌詞で歌えるようになり、3rdアルバムでようやくバスク語だけで歌えるようになったそうだ。

 そんな聞き慣れない言葉であってもオーディエンスは拳をあげて追っかける。演奏や煽りはあくまでアクセントでしかなく、心に訴えるのは現在進行形で叫ばれる言葉そのものだ。フェルミンの両腕は常に大きく振り回され、それににあわせるかのように各パートが叩き、弾いている。万単位の顔と拳を確認し、それに立ち向かっていく新しいタイプの指揮者なのだ。

Fermin Muguruza フランクリン・"バブラー"・ウォル(ブラック・ウフルでも活動していたとか)がシンセサイザーで潤いを与え、キューバ人、パーカッションのレオ・ロドリゲスが乾いた音を叩きだす。コーラスは女性2人で、ジャマイカ出身のステファニーは底から沸き上がるように、方やソルクンは弾けるようなコーラスを合わせ、ホーン隊は息吹を朝顔から勢い良く飛び出させる。それだけならカリブのトロピカルな彩りだけれど、シャビ・ソラーノが奏でるトリキティシャ(バスク地方に伝わるアコーディオン)の調べがバスクへと引き戻し、DZの破天荒なスクラッチとサイレンの効果音がストリートの感覚を呼び覚ます。キューバ、ジャマイカ、スペイン、フランス、そしてバスクが手を取り合う多国籍なバンドはそれぞれの面白味を引き出し、実に様々な光景を浮かび上がらせるのだ。指揮をしながらオーディエンスをアジテートしていくフェルミンは、決して上手くないヴォーカルではあるが、必死の形相で叫んだり飛び跳ねたりしながら、4万とも言われるオーディエンスに向かってバスクのみならず、世界で抑圧された民の心を歌っている。

 フェルミンは音楽と揺るぎない主張、それらから派生する繋がりという3つの強い武器を持っている。"ヤッラー・ヤッラー・ラマッラー"で、パレスチナのラップ・グループ、dam(ゼンハイザー・ステージに出演)を招き入れているのは、戦争状態にあるパレスチナとフランコ政権によって燃やされたバスクが繋がっているということ。彼らの間には僕らの想像を超えた共感が生まれているのだ。今回のツアーに先駆けてリリースされた『エウスカル・ヘリア・ジャマイカ・クラッシュ』でも、リタ・マーリィ率いるアイ・スリーU・ロイなど実に様々なレジェンドが協力している。そうそうたるメンツが参加した背景には、独立を勝ち取ったジャマイカと、独立へ向けて戦っているバスクとの繋がりが見えたからだ。ひとつ、心に留めておいて欲しいのは、フェルミンは決してバスクの民という境遇を利用している訳ではない、ということ。バスク人の生の声を正直に叫んでいるだけなのだ。マヌ・チャオにジェロ・ビアフラレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンフガジやトドスらと繋がるのも、揺るぎない主張を発しているからなのだ。

Fermin Muguruza
- setlist -

MAPUTXE / AZOKA EGUNA / EUSKAL HERRIA JAMAIKA CLASH / URRUN / HARTU HITZA / NEWROZ / IN-KOMUNIKAZIOA / LA FILLE / PLASTIC TURKEY / BIG BENAT / Fandangoa / 54-46 / DUB MANIFEST / LA LINEA DEL FRENTE / YALAH YALAH RAMALLAH / MILAKABILAKA / GORA HERRIA / SARRI SARRI(基本的に原文ママですが、BIG BENATの「N」の上にある~だけは表示できませんでした)


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Fermin Muguruza

"Euskal herria Jamaika Clash"
(国内盤)


ジャマイカで録音され、トゥーツ&ザ・メイタルズ、U-Roy、アイ・スリーズなどをゲストに完成したこのアルバムは7月に国内盤が発表される運びとなりました。楽しみにしていてください。


previous albums

Fermin Muguruza

"In-Komunikazioa "
(国内盤UK import)


"Er Remix Ak"(UK import)
"FM 99.00 Dub Manifest" (US import / UK import)
"Ireki Ateak" (UK import)
"ブリガディスタック・サウンド・システム" (国内盤)
"Apolo 2004/01/21" (UK import)
"Xomorroak " (UK import)
"Irun Meets Bristol" (UK import)
"Euskal Preso Politikoen Famili" (UK import)
"Piranha's World Cup Party" (iTunes)
"Class Pride World Wide" (iTunes)
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