デイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン @ 渋谷オーイースト (25th April '07)
終焉をめぐって
この日は遅れて会場に着くと前座のボンボンブランコが終わっていて、セットチェンジの最中だった。残念。一階のフロアはお客さんで埋まり、登場を待ち構えている様子。20時30分頃、メンバーが現れる。この日のステージにチューバの関島岳郎がいないけど総勢13人で大所帯だ。
アンビエントで断片的な演奏を重ねていく。それぞれの楽器にソロパートが与えられるわけだけど、なにぶん大所帯であるため、かなりの時間を要すのだ。そうしてメンバーひとりひとりを紹介するようにソロを回していって、徐々にダンスに近づいていくのは、今まで自分が観たデートコースペンタゴンのパターンだ。"ワシントンDC"の明るくくっきりした印象的なキーボードのフレーズが鳴るけど、リズムはかなり複雑、という曲のあたりでお客さんたちは体を動かし、"プレイメイト・アット・ハノイ"からドライブがかかったように踊り始める。そして"サークルライン"でピークを迎える。怒涛のファンク攻撃で、キーボードの坪口はショルダーキーボードを取り出し、お客さんに弾かせたり、ギターのジェイスンのスキンヘッドにこすりつけたり、他のメンバーに弾かせたりする。お客さんたちも、大変な盛り上がりで応える。今まで観た中で最高の"サークルライン"だった。そして"花旗"の静謐なインプロビゼーションで本編を締め括ったのであった。
当然ながら、アンコールを求める声が上がり、メンバーが出てくる。そして、マイクを持った菊地が話し始める。
「今日はみなさんに重大なお知らせがあります」
何のことかと思うけど、いつもの菊地の軽口のような雰囲気もある。そして語られたのは、本日をもってデイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの活動を終えるということだ。そのときの反応が、このバンドのファンらしくて面白かった。なんか冗談だろみたいな空気もあるし、ああやっぱり終わりなのみたいな受け止めもある。だけど、皆このバンドが唐突に終わることを残念に思っても、「やめないでぇ〜」という声やファンたちがショックで倒れたり、泣き伏したりすることは、まずないということだ。そして「解散ツアーというと、久々の奴が一杯来るのが嫌だから黙っていた」と相変わらず毒のあること、でも本質を突いたことを言って、バンドの終わりにまつわる湿った感情を断ち切る。何たって、この日最後のライヴなのに、最初からメンバーが揃わず、関島は別の現場の仕事を終えてからライヴも後半に差し掛かって現れたのだ。そのことが、このバンドの特徴を表している。最後だからって何を押してでも頭からずっといるなんていうメンバーの精神的な一体感を求めるようなバンドではない。腕利きの職人たちの集団なのだ。
この後、つまりデイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの最後の演奏となった"ヘイ・ジョー"(ジミ・ヘンドリックスで有名な曲のカヴァー)は、メンバーをシャッフルしたものだ。いつもの楽器ではなく、例えばドラムの芳垣はトランペットを吹いたり、ギターのジェイスンはサックスだったりする。こうして演奏された"ヘイ・ジョー"はヘロヘロだけど、メンバーがめちゃくちゃ楽しそうにしている姿が印象的だ。お客さんも多くは、その最後を慈しむように、笑い、踊り、盛り上がりって応える。そりゃ"ミラーボール"で終わればお涙頂戴的な感動とやらで、会場を涙で埋め尽くすことができたのだろうけど、そうしたウエットなものを拒否した締め括りだったのだ。ともあれ、これで今年のフジロックでデイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンを観るという希望も消え、あの珠玉の曲たちがもう聴くことができないのは残念でたまらないのだけど、会場にいる人たちは次を考えてしまう。特異なバンドの特異な終わりを体験したのであった。
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report by nob and photos by naoaki
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