ペズ @ 札幌ペニーレーン24 (21st Apr. '07)
もっともっと自由に
3月に発売されたニューアルバム『起きて寝る -FUNNY DAY & HARD NIGHT-』。2枚組みのこのアルバム、驚きの32曲というボリュームありすぎの作品なのだが、曲数もさることながら、内容もボリューム満点だ。1枚目の『昼-DAY SIDE』はこれまでのアルバム同様、抜群に勢力のある1枚。2枚目の『夜-NIGHT SIDE』は1枚目の対極にあるようなイメージなのだが、これまでのペズから1歩も2歩も踏み込んだ、音の自由度を存分に感じさせる1枚だ。今日のライブは、その2面性を思う存分楽しめた。
スタート早々、Ohyamaのトランペットが張り裂けそうに勢いよく鳴り響く。不可抗力とも思うほどの揺さぶりに飲み込ませるのは"BLANK-DUNK""RUN!RUN!RUN!"と続くテンションぶっちぎりの曲。主張しているのは全ての楽器にもかかわらず、せめぎあった音がお互いを打ち消すことはない。円を描くようにグルーヴを作り出すドラムの上を、爪先立ちでダンスするようなキーボードの音。その横を勢いよく走り抜るトランペット、色艶を添えるサックス、そしてそれだけの音の芯になるベース。合間に期待通りに入り込んでくる音と、予想を裏切って飛び込んでくる音とが幾重にも重なり合って絡み合い、これぞペズ!と言わしめるような、けしてほどけることのない音が次々に迫ってくるから、見ているこっちの心拍数も上がりっぱなしだ。
ラジオ番組を聴いているような軽快なトークのMCでは、サックスのkadtotaがいじられっぱなし。昨晩の打ち上げに参加しなかったことへの罰だろうか、アルトサックスに持ち変えなければならない曲があったのだが、ステージ裾のスタッフから渡されたのは、フランスパン。マウスピースらしきものも刺さっていたので、ぜひとも吹いて欲しかったのだが、テレ笑いで客席に放り投げてしまった。
そんなハプニングがありながらも、中盤はたっぷりと聴かせてくれた。ホーンセクションの音が忍び寄るようにそっと近づいてくるような曲では、深みや含みのある味わい深いサックスが主役になった。ベースの低く弾ける音が旋律になったりキーボードの音が軽快にハジけたりと、それぞれの楽器がその時々でリードするような、各パートをじっくりと耳で楽しめる時間だったし、短いソロをあちこちに挟んだ見せ場も、お客さんを盛り上げていた。
この度のツアーは、全曲ニューアルバムの中からのチョイスなのだが、北海道公演に限りラジオで募った過去の曲のリクエストの中から1曲だけ演奏するという嬉しいプレゼント付き。どの曲を演るのだろうという期待の中、この日はファーストアルバム『九月の空』から"人が夢をみるといふ事"が披露された。
後半は再び客席を盛り上げるペズカラーの強い曲が目白押しになり、とくに今回のアルバムのリードトラックとも言える"ハナフブキ 〜花魁道中罷り通る〜"が始まると、客席中は、みんなどこに隠し持っていたのかいっせいに扇子を広げクルクルと振り回し、狂喜乱舞。こんなときは、キーボードのヒイズミの出番!小脇から扇子を取り出し、振り回し、踊り、そしてまた激しく振り回す。もうそうなると、獲物を見つけた猫のようにキーボードに飛びつき指を自由自在に波打たせ、手の内で鍵盤を転がすだけでは飽きたらず、全身をくねらせて踊りまくる。猛々しく響くトランペット、和太鼓のように腹に響くドラムもいっそう激しさを増し、根底に脈々と流れる侍魂に突き動かされるように力強く鳴らされる音楽に、めいっぱい揺さぶられるライブだった。
サムライジャズと呼ばれるようにジャズをまとっているが、ロックの勢いも併せ持つペズ。今回のアルバムやツアーでさらに音楽の広がりを見せ、ジャンル分けにますます頭を悩ませることになったが、ジャンルを超えた唯一無二のバンドにそんなことは必要ないのかもしれない。
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report by rica and photos by q_ta
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