フロッグ・サード・アニヴァーサリィ feat. ナインティ・ナインティーズ、ジャック・ペネイト、 グッド・シューズ、ビッフィ・クライロ @ フォーラム、ロンドン (13th Apr. '07)
金の卵探しはオール・ナイトで
老舗ヴェニュー、アストリアに隣接するミーン・フィドラーでは、毎週土曜日の深夜にフロッグという名のクラブ・ナイトが催されている。このフロッグ・ナイトの売りは、イヴェントの中盤にこれから人気が爆発しそうな注目アーティスト達のミニ・ライヴがあるところだ。出演者も直前までに告知されない事が多いので、行ってみたら実は押せ押せの人気バンドに遭遇するかもしれないサプライズもあり、ブロック・パーティ、ザ・クークスらもブレイク前にこのフロッグでプレイしたことからも、1500円ちょっとで楽しむには美味しい夜と言えよう。さて、そのフロッグ・ナイトが開始から3年目を迎えたということで、今宵はフォーラムにて、期待のアーティスト4組が競演する、朝までお祝いライヴ&DJ・ナイトが開かれた。
トップはグラスゴウ出身の3人組、1990s。フューチャーヘッズや、フィールド・ミュージックらに通じるひねくれポップ・センスと、ミニマルながらちょっと男臭いロックン・ロールのリズムがなかなか面白い、昔懐かしCCB編成バンドである。シンガー兼ドラムスのマイケル、その容貌はさながらくるりの岸田氏、或いはのび太みたいだが、楽しげに歌ってドラムを叩く姿が印象的。横の弦楽器隊二人も盛んにコーラスに加わり、"シィー・ユー・アット・ザ・ライツ"というほのぼのソングを奏でる一方で、イントロが何かローリング・ストーンズみたいにねっとりとして、つい腰をツイストしてしまいそうな"ユー・メイド・ミィ・ライク・イット"からは、インディというより、古典的ロックのテイストを感じさせる。
続いて南ロンドン出身シンガー・ソングライターのジャック・ペネイト。ロカビリー・タッチで軽快なリズムに、トレモロの効いたギター、ソウルを感じるくぐもった声が特徴だ。歌詞は分からなくてもすぐに口ずさめるメロディとアップ・テンポに体が弾む"セコンド・ミニット・オア・アワー"、"スピット・アット・スターズ"と曲自体もメリハリの効いたキャッチーなものが多い。ジェフ・バックリィやニック・ドレイクら悲壮系のアーティストから影響を受けたということだが、今回のライヴではむしろジェイミィ・Tにも共通するスカっとした明るさと、鋭く辛辣な言葉遊びが目立ち、サウンドもブギ・ウギ・ステップを踏み続けた熱いパフォーマンスも今回の4組の中で抜きん出て良い。これは来そうな予感。
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三組目もまたロンドン発の4ピース・バンド、グッド・シューズ。先頃デビュー・アルバムを発売したばかりで、ヨーロッパ・ツアーも間近に迫った彼ら、サウンドは前述のザ・フューチャーヘッズに類似したポスト・パンク寄りのポップスで、曲間にはモッド・スタイルの影響とおぼしきソリッドなギター・リフが鳴り、ヴォーカル、リースのかったるそうで気の抜けた歌声はちょっぴりトーキンズ・ヘッズに重なる。"ネヴァー・メント・ハート・ユー"、"ザ・フォトス・オン・マイ・ウォール"、"ウィー・アー・ノット・ザ・セイム"と、インディのヴァイブがたっぷり詰まった踊れる曲で、この流れで行けばCD一枚聴き流すのに退屈はしないが、肝心のライヴ・パフォーマンスにあまり勢いが無く、大人しいなあという印象。ライブ・パワーの凄まじさでびっくりさせてくれないと、ラジオで聴いてりゃいいやで終わりそうなバンドになってしまう危険あり。
さて、トリはグラスゴウ出身のハード・ロック・バンド、ビッフィ・クライロ。さすがに深夜2時を過ぎているだけあって、いいだけ歌って踊ったお客さん達の姿が減り始めてしまっていたが、それでもビッフィ・クライロの熱心なファンが前方に押し寄せ、出だしから拳が突き上がり野太い声援が叫ばれる。背中を向けたり、髪に覆われて顔が全然見えないヴォーカル、サイモンの、観客の反応お構い無しで無骨に演奏に没入する姿はどこかナイン・ブラック・アルプスのサムに被るが、"セミ・メンタル"のツバ飛び散るシャウト、"リヴィング・イズ・プロブレム..."での分厚い低音に畳み掛ける様な豪速ギターと、クラシカルなハード・ロックの響きがフォーラムにこだますのが痛快だ。硬派な彼らのサウンド、及びプレイ・スタイルはお洒落な音楽が好きな若い婦女子を踊らせることは出来ないが、そんなのは他のインディ軍団に任せておけば良し。ファッション・ロックの影に泣く正統ロック・バンドがガツンと締めを飾った、よりどりみどりな音楽の夜であった。
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report and photos by kaori
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2007
行儀良く聴きたい夜には : ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン (12th Apr. @ スカラ、ロンドン)
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
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