ジョアン・アズ・ポリス・ウーマン @ スカラ、ロンドン (12th Apr. '07)
行儀良く聴きたい夜には
ミュージシャンを100組無作為に選んだらその100通りの異なるライヴ・パフォーマンスがあり、それを観るファンの楽しみ方も様々だろう。縦に横に斜めにノりまくるロック・バンドを観賞する機会が多いと、ソロ・アーティストのコンサートでの会場内の雰囲気や観客の反応の違いが新鮮に感じられる。今夜スカラに立つジョアン・アズ・ポリス・ウーマンことジョアン・ワッサーは米国人シンガー・ソングライター。ヴァイオリニストでもある彼女は、2006年度の英国マーキュリィ・アウォーズを受賞したアントニィ・アンド・ザ・ジョンソンズを始め、ルー・リード、シザー・シスターズら様々なミュージシャンとのコラボレーションも行っている。
定刻通りにピアノに腰を沈めたジョアンは、1曲目に自らピアノの弾き語りを。PAとそのピアノの音以外には何も鳴らないしぃんと静まり返った会場内は、咳き込みでもしようものならすぐさま睨みが飛んできそうなほどいやに緊張感がみなぎっている。現にジョアンが登場した時も割れるような拍手さえ起こったが、後は彼女の歌に耳を傾けようと皆が一斉に彼女を見つめ、大人しい。ちょっぴり居心地が悪い思いだが、ジョアンのハスキィで迫力のある声が、それに反した繊細なメロディ・ラインや控え目なバンド・サウンドに絡まって、落ち着いた響きの演奏が続く。ムードがある彼女の歌唱力は感情に走り過ぎず、決して暗くもない。あるがままの気持ちを晒しているような、飾らない歌が聴こえて来る。
正直に言って立ち見よりは、柔らかいソファに座り、お酒を片手にくつろぎながら聴いた方が味わいがある音楽じゃないかなという気がした。ライヴなのだから、やはりCDをそっくりそのまま再現されても面白みが無い。シガー・ロスやモグワイといった、忠実な再現の中に更なる激情を生むミュージシャンもいるけれど、ピアノの音色や優しいギター・サウンドが主体の彼女の様なパフォーマーだったら、きっと棒立ちになって聴くよりは雰囲気も相まって楽しめるだろう。リラックスした夕暮れのフェスティバルなんかだと、なお良いと思う。あまりやる気も無くかったるい日に何となく聴き流していたい、何処か気怠いジョアンの音楽。じっくりと彼女の演奏を聴きたい人の為のライヴ、拍手する手のひらがじんじんと熱かった。
-- setlist --
To Be Lonely / Flushed Chest / The Ride / Save Me / Feed The Light / Eternal Flame / Christobel / Are You Not Furious / Anyone / Real Life / My Girl / encore / We Don't Own It / White Wall
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report by kaori and photos by Darjeeling
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2007
眠れぬ森の王子 : パトリック・ウルフ (11th Apr. @ アストリア、ロンドン)
裸の俺様 : レイザーライト (8th Apr. @ アールズ・コート、ロンドン)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
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