buttonザ・クーパー・テンプルクロース
@ 大阪 心斎橋クラブクアトロ (10th Apr '07)

時間を経て確立された揺ぎないバンドの軸


The Cooper Temple Clause
The Cooper Temple Clause  少年が大人に変わるとき、人のなかではどのような地殻変動が起こっているのだろうか? いわゆる腰パン・ルックで視線だけではなく、世の中をも斜めに構えて観ているような空気を漂わせ、1ミリでも触れようものならガラスのように砕け散ってしまいそうな危うさを持ち備えた少年達は、大きな一歩を踏み出した。セカンド、"キック・アップ・ザ・ファイア・アンド・レット・ザ・フレイムズ・ブレイク・ルース"からサード、"メイク・ディス・ユア・オウン"までの4年が少年から大人への過渡期だったのだろう。その過渡期はほとんど表立った活動がなかったため、大人の変化は衝撃的に見えた。サード・アルバムが賛否両論だったのは、バンドにとっては必然的な大人への変化が、聴く側にしてみると予期しないバンドの変化に映って困惑してしまったからなのだろう。その大人への変化後、久々にクーパーを観たのは去年のフジロックで、その変化たるや……バンドが持っている音楽性やパフォーマンスが色彩豊かに放つ姿はまったく別バンドのようで、爽快のほか何でもなかった。

The Cooper Temple Clause  ライヴから一夜明けているというのに、私の左耳の聴力は著しく低下し、ピーとサーという和音が聞え続けている。これまで何度もクーパーのライヴを観てきているけれど、あんなに安心して観ていられる初めてだったかもしれない。テクニック的な部分ではなくて、フジで感じていたバンドの明らかな変貌を確信したと言っていいだろう。なかでも"ビーン・トレイニング・ドッグス"や"エー・アイ・エム"でノイズと轟音の極限をスピーカーから爆発させフロアを湧かせた後の、"コネクト"は異彩を放ち、ミラーボールとともにトムがここぞ自分の今日一番の見せ所と言わんばかりに、ちょっと艶かしい腰つきで"ワンス・モア"と人差し指をかざしながらマイクを取り、キラキラとしたニュー・ウェーヴなヴァイヴを一瞬にフロアに撒き散らした。この新しい一面はこれからどういう割合でクーパーを占めていくことになるのだろう? サード・アルバムに顕著に見られるように固定の楽器を持たず、"ウェイティング・ゲーム"ではすでにほんのりでき上がってご機嫌なダンが歌うと、隣ではまだぎこちなさそうにとにかく音を追うように粒の立ったベースを弾くベン。ピコピコ班、キエランとトムが主導権を握る"リトゥン・アポロジー"から"レッツ・キル・ミュージック"へと導いていった。

The Cooper Temple Clause これまでは内向的で自虐的にネガティヴな感情を自己満足気に発散していたのに、そういう部分は払拭され、バンドとしての揺ぎない軸がやっと構築され、主旋律不在で全員がハモっているかのようなキーの外れた状態であっても、バンドとしてのサウンドが全てを飲み込んで、アグレッシヴに立ち向かってくるようであった。やっとクーパーの5人がクーパーという5人の集団によって、クーパーの音楽を見つめることができるようになったのかもしれない。そこには、一見、ファースト、セカンド、サードのシングル曲をベースにして"フー・ニーズ・エネミーズ?"、"ミュージック・ボックス"、"リトゥン・アポロジー"、"ワンス・モア・ウィズ・フィーリング"という確実にモノ好きの急所をつく裏ベスト曲を組み込んでいく総括的なセットリストに見えて、実は完成されたクーパーをもって、自身の身辺整理をしているように感じられなくもなかった。

The Cooper Temple Clause そしてもうひとつ気になることがあった。それはフロアにこだまするまるでアイドルに向けられているかのようなキャーという女性の黄色い声だった。決して女性のファンが多いことが悪いと言っているのではない。クーパーはデビュー当時からそういういわゆるルックス先行のバンドという感じで捉えられ、そういう角度から取上げられてきた部分があったのも事実である。気づかないうちにかけてしまった色眼鏡というものは、自分が色眼鏡をかけてしまっていることはなかなか自覚できないものなのだろう。セカンドのだたの延長としてサード・アルバムが作られていたのなら、こういうことを思うことはなかっただろう。でも今のクーパーは明らかにあの頃のクーパーとは根本から違う。だからこそ今一度、今のクーパーを自分の耳で聴き、自分の目で観ませんか?
The Cooper Temple Clause


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