レイザーライト @ アールズ・コート、ロンドン (8th Apr. '07)
裸の俺様
イースター・サンデイという祝日にも関わらず、満員御礼のアールズ・コート。最前列を陣取るキッズ達から、スタンド席後方で思い思いに楽しむ20代、30代の若者。さらにはシート席でゆったり観賞しようという家族連れ。そこには、娯楽としてコンサートを楽しみにやって来た様々な人々の姿がある。分かる奴にだけ分かれば良い、そんなスかした時代は終わった。レイザーライトは、今や普遍的な人気を手中にした正統ロック・バンドへと飛躍したのだ。
赤ワインを片手にステージに現われたギタリストのビョーン、アゴ長ドラマー、アンディ、ニルヴァーナのカートに似た男前ベーシスト、カールと続き、激しいドラムのイントロが始まる。一人遅れて登場した歌番長、ジョニー。相変わらずのステテコ・ジーンズ姿だが、始めから声の通りが良く、"イン・ザ・モーニング"を弾む調子で歌い上げていく。あまりにも力強く、聴いてるこっちがこっ恥かしくなる"ヴァイス"でのエル・オウ・ヴィ・イーの熱唱ぶりが、何故かただでさえショぼい前方のレイザーライトの電光文字盤の陳腐さを助長し、金持ちバンドの割にショウの演出効果が下手っぴな事実に苦笑いが浮かんだが、"ゴールデン・タッチ"、での会場が割れる様なオーディエンスの合唱、"イン・ザ・シティ"の激しいリズム転調、中盤に向けてどんどん壊れて行くバンド・アンサンブルの凄まじさ、ビョーンの、ジミー・ペイジの如し濃厚なギター・ソロと、目に見える、耳にする今の彼らに、ロック・バンドとしてのエッジを失わずして、より幅広い人の心に触れるメロディを生み出し続ける逞しき成長と、進化の歩みを見せつけられた。手を取り合って踊る人、一緒に歌う人、拳を突き上げお哮る人。誰も彼も、色々な盛り上がり方で彼らのコンサートを楽しんでいる。自由に、笑顔で。
ありがとうや曲紹介以外には言葉少なに語らぬジョニーであったが、アンコールでもボルテージが冷める事を知らない彼の、この空間を征服した歌声、阿吽の呼吸でサウンドを構築してゆくバンド・メンバー達。先述の"イン・ザ・シティ"の溜めの部分がやって来た時に客席に向けられた、「どうだ、これでも文句あっか」とでも言いたげなジョニーの表情。とことん、ロック・スターでありたい人なのだと思った。天才だとは言わない。けれども、インディ・バンドの一つとして終わってしまうそこそこの成功か、それ以上の発展を求める野心で更に上を目指すか、レイザーライトは他のどのバンドよりも今それを一番体現し、走り続けている人達である。アメリカという最大音楽市場に媚を売ったセカンド・アルバムは、商業的戦略に満ち満ちた作りだ。けれどもここ英国でオーディエンスが"アメリカ"を大合唱した。その歌声は、どこまでも高らかに響き渡った。母国でギターを掻き鳴らし、愛だ、不満だとかっ飛ばしていた男達の、真の意味での凱旋公演である。
-- setlist --
In The Morning / Hold On / Dalston / Pop Song 2006 / LA Waltz / Before I Fall To Pieces / I Can't Stop This Feeling / Back To The Start / Vice / Golden Touch / America / Who Needs Love? / In The City
-- encore --
Fall Fall Fall / Stumble & Fall / Keep The Right Profile / Somewhere Else |
report and photos by kaori
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mag files : Razorlight
裸の俺様 (07/04/08 @ Earl's Court, London) : review & photos by kaori
新世紀・ロック・スター (06/11/01 @ Wembley Arena, London) : review by kaori, photos by Nic Walker
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2007
耳を肥やせ、インディ・ファンよ : リトル・マン・テイト (5th Apr. @ アストリア、ロンドン)
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
トレ・ビヤン : フィーニックス(21st Oct @ アストリア、ロンドン)
次期王者、決定 : ザ・クークス(19th Oct @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
ラップン・ロール : ジェイミーT(19th Oct @ HMV、ロンドン)
打ち込んで、ぶちかませ : ザ・クーパー・テンプル・クロース(18th Oct @ ココ、ロンドン)
メルヘンなのにやかましや : エレクトリック・ソフト・パレード(12th Oct @ ウォーター・ラッツ、ロンドン)
このライヴを観てから死ね : マキシモ・パーク(6th Oct @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
日曜の夜はライアンと : ライアン・アダケス&ザ・カーディナルズ(1st Oct @ シェパーズ・ブッシュ・エンパイヤ、ロンドン)
王子から体育会系へ : ディレイズ(21th Sep @ ザ・フェズ、レディング)
勢いあれど : アミューズメント・パークス・オン・ファイア(11th Sep @ ルミナール、ロンドン)
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