Beck @ Liquidroom Ebisu (6th April '07)
進化し続ける天才
なんと4年ぶりの日本ツアー。フェス以外では久しぶりの来日公演だ。前回も桜の季節にやって来て、「お花見したんだー」と嬉しそうに話していたベック。千鳥ケ淵(日本武道館)はピークを過ぎてしまったけど、明治通り(リキッドルーム)の枝垂れ桜には間に合って良かったねえ……とほんわか気分で待っていたら、ステージに登場したベックを見てギョッとした。桜を愛でる王子は、クルクルロン毛にヘアバンドを巻いて、どこぞのヒッピーのような出で立ちに変貌していたのだ。びっくり。
変わったのはルックスだけじゃない。もともとベックはライブのたびに曲のアレンジを変えて、CDで聴くのとはまったく異なる表情を楽しませてくれるアーティストなのだけど、今回は特にそれが顕著だった。最近の3枚のアルバムを中心に構成されたセットリストは、どの曲も今までになく広がりと深みを増している。
変化のもっとも大きな要因はベックの「声」かもしれない。フォーク、ヒップホップ、ダンスミュージックなどいろいろな要素をつなぎ合わせる肝の部分。年を重ねたベックの声は、渋さややわらかさに加え、すごみが出てきた。熟成されたベックの声をはじめ、見た目キテレツ・スキル完璧な6人組の演奏に身をゆだねると、足元がフワフワしてくる。小さなライブハウスが果てしない宇宙空間のように思えてきて、なんだかとってもSF色が濃厚なのだ。リキッドルームでこんなにトリップしていたら、Zeppや武道館ではどうなってしまうのだろう!?
もちろん、エンターテイナーとしてのベックも健在。特に、フジロックでも披露していたディナーショー(?)は必見だ。しっとり歌うベックの横で、いきなりテーブルを用意して食事を始めるメンバーたち。何が起きたのか不思議に思って見ていると、メンバーたちは手にしたナイフやフォークでリズムを刻み始める。そしてあれよあれよという間に食器やテーブルがパーカッションとなり、ベックの歌に溶け込んでいるのだ。本当、ヘンなこと思いつくよなあ。
今まで何度もベックのライブを見てきたけど、いつでも最新版のベックが一番面白い。これはかなりすごいことだと思う。天才ベックくんはまだまだ進化を続けているのだ。日本ツアーは始まったばかり。これからの10日間、ベックがどんな風に変化していくか楽しみだ。
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report by satori and photos by izumikuma
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