リトル・マン・テイト @ アストリア、ロンドン (5th Apr. '07)
耳を肥やせ、インディ・ファンよ
一体、世の中にはどれだけのバンド、ミュージシャンがいるのだろう。他界した人々は別にしても、UK、US、日本、はたまた他のヨーロッパやアジア、世界各国、もうその人口比と同じくらいの割合で、様々なジャンルのアーティスト達がいるのは確実だ。そんな中、世界レヴェルで活躍するアーティストというのは、やはりそれほど支持されるだけの特別な魅力があるから。国境を超えて良い曲を生み、素晴らしいパフォーマンスをするからというのは勿論、表現者自身の個性や佇まいがカリスマ性や神の如しという描写で崇め奉られる人達も多く、ミュージシャンもただ歌って楽器を弾ければ人の心を奪うという存在では最早ない。そもそも、昔からそういうものではあったけれど。今夜アストリアを完売させたリトル・マン・テイトは、同郷にかのアークティック・モンキーズがいて、遡ればジャーヴィス率いたパルプもいるという北の音楽街、シェフィールド発の4ピース・バンドだ。
序盤から、ガレージ・サウンドを母体としたジャンジャカ掻き鳴らされるギターに、どこか投げやりな歌が被さり、基盤作りに専念した実直なリズム隊。それは時にマンドゥ・ディアオの持つ焦燥感やパルプの放った知的なサウンド・スケープを思わせ、リバティーンズの若々しさに重なる"ヨーロピアン・ラヴァー"、中盤の"セクシィ・イン・ラティン"、"ハロウ・ミス・ラヴリィ"などはそこから脱皮したダーティ・プリティ・シングスの硬派な正統ロックのテイストを伺わせる、ライヴでの盛り上がりには最適のナンバーだ。ここらの曲での会場のノリが一番良かった。ただガシガシと捨て鉢な曲ばかりではなく、ニュー・シングルの"ディス・マスト・ビィ・ラヴ"のようにほんのり心が和むメロディックなチューンもあり、全体の流れとしては無難なところ。アンコール無しの全力投球の演奏が唯一マニックスのようで、予定調和に慣れる観客にはこれもありだろうと思う。
しかしながら、結局のところ今まで述べて来た様に、彼らのライヴでは最初から最後まで一環して、誰それのようであり、とか、誰々を思い起こさせるといったお決まりの表現しか思い浮かばず、言い換えればリトル・マン・テイトというバンドの表情が何も見えてこなかった。つまり、彼らの今やっている事は、既に他の誰かがやった事であり、構築した音楽スタイルなのである。インディ、インディと騒いでも、この様にあらかじめ出来上がった絵に色を足して行くだけの作業ならばちょっとした技術があれば誰でも出来る。大手と契約していようが自主制作だろうが、良い曲であればそれだけ多くの人が聴いてファンも増える。マイスペース世代の彼らが最も分かっているはずであろう昨今の風潮に誤摩化されぬための厳しい現実が、ここにもまた一つあった。
-- setlist --
Man I Hate Your Band / Agent / Who Invented These Lists? / European Lover / Boy In The Attic/ Little Big Man / This Must Be Love / Sexy In Latin / Hello Miss Lovely / What What You Got / House Party At the Boothys / Down On Marie
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report by kaori and photos by Darjeeling
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2007
あと、もう一歩 : マキシモ・パーク (4th Apr. @ HMV、ロンドン)
泣く子も黙るライヴ天国 : フォール・アウト・ボーイ (2nd Apr. @ ハマースミス・アポロ、ロンドン)
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
トレ・ビヤン : フィーニックス(21st Oct @ アストリア、ロンドン)
次期王者、決定 : ザ・クークス(19th Oct @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
ラップン・ロール : ジェイミーT(19th Oct @ HMV、ロンドン)
打ち込んで、ぶちかませ : ザ・クーパー・テンプル・クロース(18th Oct @ ココ、ロンドン)
メルヘンなのにやかましや : エレクトリック・ソフト・パレード(12th Oct @ ウォーター・ラッツ、ロンドン)
このライヴを観てから死ね : マキシモ・パーク(6th Oct @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
日曜の夜はライアンと : ライアン・アダケス&ザ・カーディナルズ(1st Oct @ シェパーズ・ブッシュ・エンパイヤ、ロンドン)
王子から体育会系へ : ディレイズ(21th Sep @ ザ・フェズ、レディング)
勢いあれど : アミューズメント・パークス・オン・ファイア(11th Sep @ ルミナール、ロンドン)
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