フォール・アウト・ボーイ @ ハマースミス・アポロ、ロンドン (2nd Apr. '07)
泣く子も黙るライヴ天国
巷に吹き荒れるエモ・バンドの大嵐は未だ衰える事を知らぬようだ。しかもその発生源はまごうことなく米国である。新作をリリースしてから、クイーンが築いたオペラ・ロックの世界に傾倒し過ぎが鼻につくマイ・ケミカル・ロマンスや、普通のエモ・バンドから一転ムーラン・ルージュばりの曲芸師メイクで、おかしな方向に走っているパニック・アット・ザ・ディスコらとある意味一括りにされる中、フォール・アウト・ボーイはメジャー・デビューからも休む事無く一直線にライヴ活動を重ね、熱心で厚いファン層を獲得し、このエモ、及びポップ・ロックのジャンルで今や敵無しというところまで来ている。ジミー・イート・ワールドやブリンク182といった、パンクの衝動性とキャッチィなメロディを同居させた90年代後期のバンド達に陰りが見え始めたからこその彼らの台頭。だが、昨年のレディング・フェスティバルでのド迫力のパフォーマンスでも感じたが、何故に彼らが頭三つも四つも抜きん出てここまで支持されるのかは、やはりライヴを体験すればこそ、なるほどと納得できるのである。
お金のたっぷりかかったであろう色鮮やかな照明に照らされ、幕の影から登場したメンバー達。前でプレイするギタリストのジョセフ、真っ黒フーディのピート共にまあ、走る、動く、飛ぶ、暴れる、といてもたってもいられないとばかりにステージ上で大興奮の様相。その後ろで深いベース・ドラムをキックし続けるタトゥーまみれのドラマー、アンドリューがまさにバンドの鉄の心臓部と化し、フォール・アウト・ボーイの楽曲がどこまでも大きく会場に響き渡る。"シュガー..."、"シックスティーン・キャンドルズ"、"オール・ザ・ジン・ジョインツ"という旧作での尋常ならぬ盛り上がり。ライヴで弾き込まれた確かな演奏力と、ぽっちゃりパトちゃん、ことヴォーカル、パトリックの外面に合わぬ、切ない裏声と急き切る様に溢れゆくエナジィが同居した実に魅力的なエモ・ヴォイスがとにかく観る者を引っ張り込んでいるのだ。新作の"...アームズ・レース"ではサビの高音部が伸び切らない苦しい場面もあったが、終始音程が大幅に乱れる事も声量がかすむことなく、一定した力強さで、一曲、一曲が終わる毎に豪快さとパワーを増してゆくダイナミックな演奏に絡み、アンコール5曲という堂々たるバンドの熱演ぶりであった。
CDやipodで一枚通して聴くには疲れるエモ・ポップではあるけれども、骨太なロックにダンサブルな大衆性を加味させた耳馴染むそのサウンドを300倍の興奮度で体現する彼らのステージ・パフォーマンスは、筋金入りのエモ・キッズだけではなく、その親世代までもが一緒になって拳を突き上げ楽しめる最高のひとときであると言えるだろう。また、どれがどの曲か分からない一見の人達でさえもひとたびこの空間に足を踏み入れれば、きっともう一度彼らのライヴを観てみたい、そう思うに違いない。とにかく観れば分かる、こういうロック・バンドが愛される理由は。
-- setlist --
Our Lawyer Made Us Change the Name of This Song So We Wouldn't Get Sued / Of All The Gin Joints in All the World / Sugar, We're Going Down / The Patron Saint of Liars and Fakes / Nobody Puts Baby in the Corner / A Little Less Sixteen Candles, a Little More Touch Me / Thriller / Grand Theft Autumn/Where Is Your Boy / XO / Golden / This Ain't a Scene, It's an Arms Race
-- encore --
Unknown / I Slept With Someone in Fall Out Boy and All I Got Was This Stupid Song Written About Me / The Take Over, the Break's Over / Dance, Dance / Saturday
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report by kaori and photos by Darjeeling
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2007
二枚目の分かれ道 : ザ・レイクス (31st Mar. @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
ボヘミアン・ラプソディ : ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライ (30th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
失われぬ青春ポップス : ザ・シンズ (28th Mar. @ フォーラム、ロンドン)
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
トレ・ビヤン : フィーニックス(21st Oct @ アストリア、ロンドン)
次期王者、決定 : ザ・クークス(19th Oct @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
ラップン・ロール : ジェイミーT(19th Oct @ HMV、ロンドン)
打ち込んで、ぶちかませ : ザ・クーパー・テンプル・クロース(18th Oct @ ココ、ロンドン)
メルヘンなのにやかましや : エレクトリック・ソフト・パレード(12th Oct @ ウォーター・ラッツ、ロンドン)
このライヴを観てから死ね : マキシモ・パーク(6th Oct @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
日曜の夜はライアンと : ライアン・アダケス&ザ・カーディナルズ(1st Oct @ シェパーズ・ブッシュ・エンパイヤ、ロンドン)
王子から体育会系へ : ディレイズ(21th Sep @ ザ・フェズ、レディング)
勢いあれど : アミューズメント・パークス・オン・ファイア(11th Sep @ ルミナール、ロンドン)
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