ザ・シンズ @ フォーラム、ロンドン (28th Mar. '07)
失われぬ青春ポップス
ことインディ・バンドのルックスに関して言えば、悲しいかな英国勢の華美さに比べ、いかんせんモサっとした風体の多いのが否めぬUS勢である。ミュージシャンであればまずその音が大事なのは百も承知とは言え、音楽が素晴らしく、且つ見た目も良ければより多くの聴き手を惹きつけるのは自然な事。だからこそ容姿の凡庸さをかばう為に不自然なまでにサウンドの良さを強調し、そういう良質な音楽そのものに耳を傾ける人こそが本当の音楽好きであるかの様にうそぶく批評が嫌いだ。今夜ステージに立つ、ニュー・メキシコ州はアルバカーキ出身の4人組、ザ・シンズは、はっきりいって美形バンドではない。どうにも4人4様お調子者の三枚目的な雰囲気が過ぎて乙女心はびくともしないが、20年前にタイム・スリップしたかの様な懐かしいハーモニィとシンプルなその旋律はとても心地良く、今もビートルズとサイモン・アンド・ガーファンクルが健在であったら、きっと平成の彼らはこんな音楽を紡いでいるんじゃないかという気にさせる、そんなバンドだ。
序盤の"ファントム・リム"や"キッスィング・ザ・リップレス"の甘酸っぱい響きや、ちょっとしたハーモニィから郷愁に誘われる"ガール・オン・ザ・ウィング"、アコースティック・ギターの奏でにほろりとした悲しみが滲むニュー・スラング"など、彼らのCD音源と違わないザ・シンズの美しくシンプルなポップス観が楽しめるが、サポートを2人を交え、モグワイ並みの音の豪速球を効かせた"マインズ・ノット・ア・ハイ・ホース"、客席の手拍子を弾ませたフロアを揺さぶる力強いベースの"セイント・サイモン"を中心として、後半はダイナミックな演奏へと発展し、彼らのライヴを初めて体感した人にとっては、CDからは予想もできないその熱いパフォーマンスはきっと意外な光景だったんじゃないだろうか。音程が安定したウェイン・コインのようなヴォーカル、ジェイムズの声も広い会場に生き生きと伸び、ギグで曲を全く変わった印象に変えてみせる彼らマジカルな演奏に、オーディエンスの驚きと喜びがいつまでも交差していた。
クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーとも共通するところで、ザ・シンズにCD通りの演奏を期待していたらその音のパワーの違いにまずびっくりさせられる。コンサートで巨大なスピーカーを通しているんだから当たり前だとか言うそんな次元の低い話ではなくて、その会場に行って、自分の目と耳でより近い空間を共有した時に感じる特別なエナジーが彼らにはあるのだ。勿論、独特のリラックスした雰囲気はそのままにあるけれども、ただ音源を聴く事とライヴに行く事の違いとは何なのか、そしてその違いを楽しむ術を良く知っている人達なのだと思わせるものがそこにはあった。フォーク・ソング同好会の学生の様に、和気あいあいと肩組み合ってプレイする姿はやっぱり全然クールじゃない。けれどもこういうポップ・ソングを書ける彼らはいつまでも消えないだろう。
-- setlist --
Sleeping Lessons / Australia / Pam Berry Phantom Limb / Kissing The Lipless / Girl Inform Me / Girl On The Wing / Mine's Not A High Horse / New Slang / Saint Simon / Girl Sailor / Turn A Square / Gone For Good / A Comet Appears / Turn On Me / Know Your Onion / Caring Is Creepy
-- encore --
Care About/So Says I |
report by kaori and photos by Darjeeling
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mag files : The Shins
失われぬ青春ポップス (07/03/28 @ Forum, London) : review by kaori, photos by Darjeeling
To The Extreme (05/01/31 @ Harajuku Astro Hall ) : review by shawn, photo by keco
photo report (05/01/31 @ Harajuku Astro Hall ) : photo by keco
A Kick in The Shins (05/01/30 @ Shinsaibashi Quattro ) : review by jab, photo by yegg
photo report (05/01/30 @ Shinsaibashi Quattro ) : photo by yegg
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2007
ジャンル無法地帯警報 : エンター・シカリ (21st Mar. @ HMV、ロンドン)
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
トレ・ビヤン : フィーニックス(21st Oct @ アストリア、ロンドン)
次期王者、決定 : ザ・クークス(19th Oct @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
ラップン・ロール : ジェイミーT(19th Oct @ HMV、ロンドン)
打ち込んで、ぶちかませ : ザ・クーパー・テンプル・クロース(18th Oct @ ココ、ロンドン)
メルヘンなのにやかましや : エレクトリック・ソフト・パレード(12th Oct @ ウォーター・ラッツ、ロンドン)
このライヴを観てから死ね : マキシモ・パーク(6th Oct @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
日曜の夜はライアンと : ライアン・アダケス&ザ・カーディナルズ(1st Oct @ シェパーズ・ブッシュ・エンパイヤ、ロンドン)
王子から体育会系へ : ディレイズ(21th Sep @ ザ・フェズ、レディング)
勢いあれど : アミューズメント・パークス・オン・ファイア(11th Sep @ ルミナール、ロンドン)
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