ラーリキン・ラヴ @ 代官山ユニット (28th Mar. '07)
絶望的に世界が美しい
ラーリキン・ラヴ。ラリキン=ならず者をこよなく愛する音の祭りがステージ上で繰り広げられた。2年位前からラーリキン・ラヴを中心にミステリー・ジェッツやホロウェイズ、ランブル・ストリップスなどの活躍によりロンドンだけでなくイギリス全土、そして日本のUKインディーロック好きにも浸透したテムズ・ビート。このムーブメントにとってラーリキン・ラヴは存在不可欠であり、その未来を担っていると言っても過言では無い。UKロックの未来は彼等の手の中に、とは言い過ぎかもしれ無いが、彼等のステージを見ればそんな考えも浮かんできてしまう。演奏が始まると胸騒ぎが止まらない。こんなバンドはイギリス中見渡してもそうそう見つける事は出来ない。
この日の観客のテンションの高さと言うか期待の高さは異常な程だった。ソールドアウトとなったのが納得出来るぎゅうぎゅうの満員っぷりは彼等を迎えるには万全の体勢だ。アルバムの冒頭を飾る"シックス・クイーン"のイントロが始まると歓声と嬉しい悲鳴が入り交じる。
彼等の演奏は"エドウッド"を聴けば直ぐにポーグスなど往年のジプシー・パンクスを彷彿させるのだけど、その枠から意図的に大きくはみ出して自分達の音へと昇華させているからこそ私たちの耳には新鮮に聴こえ、夢中にならずにはいられない。煌めく様なギターサウンドは80年代に活躍したオレンジ・ジュースやジムジムニーなどのネオ・アコースティックなバンド達をも連想させるので、リアルタイムの人達は彼等の音にどこか親しみを感じるだろうし、そこを通過してこなかった若者達にとっては彼等の音が最先端の物として聴こえてくるだろう。
人気を裏付けた"ハッピー・アズ・アニー"の楽しさと言ったら10年に1度現れるか現れないかと思ってしまう程。観客の飛び跳ねるリズムが会場全体を包み込む。その愉快なメロディーとは裏腹な残酷で皮肉がたっぷりと込められた詞があまりに刹那的で美しすぎる。
時に破滅的でありつつも彼らの音は軽快に鳴り響く。ボーカルのエドは天才と変態のすれすれの境界線を綱渡りするかの様に、そして何かを嘲笑するかのように歌い続ける。スーパーに行った時に思いついたなんてエピソードを披露してくれた"キュウカンバー"を唄う姿はもろにピンク・フロイドのシド・バレッドを連想させてしまう。メンバーを無視して即興で唄い始めたり、ステージ上でそわそわして落ち着かなかったり、悪戯で無垢な姿がシドと重なって見えてしまった。余計な心配かもしれないが、あまりに才能があり過ぎて自らの才能を潰す事が無い事を祈るばかりだ。天才であるのも苦労が絶えない。
アンコールで一本のアコギを掻き鳴らし、高らかに"フォール・アット・ザ・フィート・オブ・レ"を歌い上げる姿に吸い込まれていった自分の頭の中にはイギリスの大草原が広がり、時代も場所も何処かへと吹っ飛んでいってしまった。こんな絶望だらけで残酷な世界に真面目に生きるくらいなら、俺らはならず者の人生を選ぶんだ。そんなメッセージが飛び込んできた気がして不覚にも涙が出てしまったが、会場の熱でそんな涙は直ぐに乾いてしまった。何度彼等のライブを見たとしても、その感動は薄れることは無い。だからまたこの目で彼等のステ―ジを見る事を切望している。
-- setlist --
Six Queens / It Explodes / Edwould / Paul My Dear / John O Ryans / Happy As Annie / Forever Untitled / On Sussex Downs / Ribbon Dance Mews / Well, Love Does Furnish A Life / Cucumber / A Burning Coast
-- encore --
At The Feet Of Re / Downing St Kindling / Silver |
report by sumire and photos by terumi
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2007
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