クール・ワイズ・メン @ 横浜ベイホール (25th Mar. '07)
- スカしてんじゃねぇよ!? -
春の彩音と書いてハルノザイオン、と呼ぶ。なんとも美しい響きではないだろうか。その日の朝方、実家のほうで巨大地震が起こり、ザイオン=天国なんて縁起でもない! と思っていたのも事実。寒すぎてついつい着膨れていた冬の終わりと、桜のつぼみがふつふつとうごめく時期に開催されたイベントのタイトルとしてこれほどふさわしいものはない。そして、近日imakazのインタビューがこのmagで発表されるであろうクール・ワイズ・メンにいたっては春うんぬんなどどこ吹く風で、さらなる広がりを見せていた。春を用いて言葉遊びをするならば、次からつぎへとつぼみをこさえて膨らませ続けているバンドといったところか。とにかく、余震だの何だのと悩める状態から一気に引き上げてくれた彼らに、この場を借りて感謝したい。
中東を思わせるゆるやかなカーブに彩られ、CWMのライブは始まった。巷ではスカというものに一括りにされているけれど、スカを裏切らずにそれから逸脱した攻めを繰り広げようとする止まらない探究心は浜田光風のパラパラ漫画のような歩みに投影される。自分のペースでいこうとする思いが、ステージの真ん中にたたずむ男の体を通し、耳だけではなく目にも飛びこんでくるのだ。
CWMはジャマイカの歴史のほとんどを吸収していて、僕なんかはダブからダンスホールレゲエへ続く流れがどうもわからずプッツリだけれど、ライターでの着火を実践してしまう濱のお客さん達はそこいらへんをちゃあんと理解している。しかし、ダンスホールレゲエの代わりと言い切るのも何だが、バンドの中に即興でジャムる心意気と一手間加えようとする挑戦は、しかと見た。
ブレイクを待ったトランペットに流れ込む息吹は、ぶれないリズムを信頼した上で成り立っており、エレクトリック・マイルスのようなヤンチャっぷりで金管の肌を撫でては濱を湧かせていく。ホーン隊で重なってみれば、音を上げて下げて抜け出すという美しいメロディの常套手段に、ひとつまた上げるという手間を加えていく。それは馴染んだブレスのタイミングを外すことでもあり、しんどさもついてくるんだろうと想像出来るが、単純に受け手として楽しく踊るお客さんにとって、次へのつながりを思わせ、決して終わりを感じさせないから面白く、また彼らもそれをわかって演っている。
さらに、トリニダード・トバゴのカリプソや生音ながらクラブでDJが繰り出すような四つ打ちやジャングルビートまでも取り込んでいるとなれば、ジャマイカという先入観を錯覚として利用するような、したたかなライブを繰り広げているとしか言いようがない。これらは裏打ちではなく、ジャムバンドの内部でわき起こる衝突のような、試みの結果として溢れてくるのだ。決して「スカだけをしてるんじゃねぇ!」のです、今のCWMはー。
各々の技へ個別にスポットを当てるようになったのはリコと共演してからだと思うが、微笑みをたたえたリコにいじられて、太く強くなっていったのだろう。たとえ客席に例の巨人が紛れ込んでいたとしても微笑み返しで対抗するような、バンドとしての力がみなぎっていた。もうじき、2回目となるリコとのツアーも控えている。きっと、自分達の成長を彼に見せつける姿がそこにあるはずだ。
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report by taiki and photos by maki
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