シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック @ 渋谷クラブクアトロ (25th Mar. '07)
また来たのと言うなかれ
「一夜限りの来日公演」。このところプロモーションで来日した際にこうしたライブを行うバンドが増えている。もちろんトーキョーのみであるから、地方在住者にとっては苦しいところである。世界的に先行き不透明とも思われる音楽産業の商業市場の中で、まだこの国の市場もそれなりに相手にしてもらえるだけの価値は残っているのかもしれないのだろうかとも思う。本当のところはどうなのかなどということはいち消費者である自分には分からないが、こうして年に何度か東京にやって来てしまうことになっているのが実状である。
3月25日の渋谷クラブクアトロ。昨年11月以来、わずか4ヶ月で再び単独来日公演を行った65daysofstatic。単独公演はこの日限り。今月21日に発売されたニュー・シングル『Don't Go Down To Sorrow』及び来月25日に発売されるサード・アルバム『The Destruction Of Small Ideas』のプロモーションを兼ねた来日である。
およそ一週間前、テキサスで開かれていたのSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)に出演していた彼ら。ラジオでのセッションも行っており、そこで演奏された新曲4曲とニュー・シングルを含む合計5曲の新曲が今回の来日公演では披露された。少なくとも、これらの曲を聞く限り、彼らにはもはやブレがない。自分たちの進むべき方向性を改めて確認しカタチにしたのだと感じた。太く、厚く、攻撃的で、皮肉っぽさと繊細さを兼ね備え、決してひとりよがりにはならず、以前からそうであるように、きちんと「対・観客」ということも意識できている。
自分にとっては初めての東京のクラブクアトロ。思っていた以上に多くの人が会場に足を運んでくれていためか、その混雑ぶりさえうれしい光景だった。定刻通りに暗転し、いきなり新曲'The Distant & Mechanised Glow of Eastern European Dance Parties'で幕を開ける。MCはほとんど無く、新旧交えて畳み掛けるように鳴らされていく。中盤、メモを取り出しインストア・イベントの日程と30日に渋谷Music Exchange Duoにて行われる残響レコード(日本での所属レーベル)のイベントでも演奏することをファンに伝えた後、「次の曲は'JAPAN'」と曲紹介し'Fix The Sky A Little'へ。ライブでは定番の曲でありながらもほとんど曲紹介されることのない曲であり、しかもここ日本でその言葉を聞けたということもあって個人的にはこの日のハイライトのひとつとなった。それに続く'Radio Protector'ではやはり観客の盛り上がり方も格別で、ステージ前方ではモッシュ状態だったのではないだろうか。
昨年秋の来日公演で感じた消化不良感。新たな段階へ進んでいながらもまだそれを日本で見ることのできないもどかしさのようなものだったのかもしれない。そう感じていたのは私だけなのかもしれないが、この日のライブはそんな想いを払拭するには充分な内容であった。同時に、さらに大きく世界に向かって羽ばたいて行くバンドの姿を見たような気がした。少なくとも、私の目には、加速度を増しながら進化し続ける彼らの姿はとてもたくましく映った。
今後は地元英国や、昨年に続き欧州大陸、そして初めての米国ツアーとロードに出る日々の続く彼ら。次にライブを見ることができるのはいつになるのかは分からないが、新譜『The Destruction Of Small Ideas』の到着と共に楽しみに待つとしよう。
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--setlist--
The Distant & Mechanised Glow of Eastern European Dance Parties / Await Rescue /
Don't Go Down To Sorrow / I Swallowed Hard, Like I Understood / A Failsafe / When We Were Younger & Better /
Fix The Sky A Little / Radio Protector /This Cat Is A Landmine / These Things You Can't Unlearn
-encore-
AOD / Retreat! Retreat!
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2007
また来たのと言うなかれ : シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック (25th Mar. @ 渋谷クラブクアトロ) : review by miyo
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