エンター・シカリ @ HMV、ロンドン (21st Mar. '07)
ジャンル無法地帯警報
初めてラジオで彼らの曲を聴いた時は、思わずいつもと違う番組に合わせたのかと耳を疑った。何か今まで聴いた事も無いレイヴとメタルの奇妙なその結合サウンドに黙っておられずすかさずヴィデオ・クリップもチェックしたら、更に鳥山明の漫画よろしく目玉が飛び出そうに。ロンドン郊外のセント・オルバーンズから参上したこの既存ジャンルの開拓者、エンター・シカリは工夫と試行を重ねこれまで誰も試みた事のなかった自分達の音を発明したとんでもなくユニークな男達だ。
久し振りに超満員となった芋洗い状態の店内では、今流行のクラクソンズにも共通するヴィヴィッドな色の服を身に纏った10代のキッズ達のざわめきが絶えない。開演時刻を20分近く遅れ4人のメンバーがステージに立つと、これまで目にした事の無い様な、本当のギグと何ら変わりない興奮が生まれ出し、1曲目の"ザ・フィースト"のピコピコシンセとベース・ドラムのイントロから観客は狂った様に頭を振り乱して身をのけぞらせ、踊ってるんだかノッてるんだか分かったもんじゃない不思議な動きが続出。トランス気分たっぷりのシャラシャラしたシンセサイザーからは、パラパラでも始まるのかよと突っ込みたくなるが、次の瞬間には地面に亀裂の走る様なヘヴィなクリスのベースとドラムス、ロブのスネアのけたたましい響き、そして極めつけにはヴォーカル、ロウのパンテラばりのデス・ヴォイスと来るので、全く掴み所がないどころか、ダンスもヘッド・バンギングも一緒くたになった一つ所に収まらないこの妙なサウンドは、一度聴いたら忘れられない強烈なインパクトがある。何じゃ、これと思いつつも、目前の彼らの動きの激しいパフォーマンスに更に度肝を抜かれて目が離せない。
"ソーリィ・ユー・アー・ノット・ア・ウィナー"の曲間のバンドとファンによる予定調和のハンズ・クラップ、ドラマーの突然の演奏放棄兼暴れん坊ダンス。ファンの熱狂を取り込み、より燃える彼らの超次元的な世界は、冷静に言えば単にトランス・レイヴとニュー・メタルをごった混ぜにし、切り貼りし直したものにしか聴こえない。が、それでも水と油のような異なるサウンド・スタイルを新たな解釈で構築された音はどうにも普通じゃ無く、そのチャレンジ精神が功を奏してこれだけファンの心を捉えている。沸くに沸いたファンによる異例のワン・モア・ソングの嵐に応えて追加の一撃をお見舞いした若き狩人達の叫びを、今目にせずして何時出来よう。
-- setlist --
The Feast / Danger Wank / Anything Can Happen In The Next Half Hour / Thank You Palaus / Sorry You Are Not A Winner / Ok! Time For Plan B
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report and photos by kaori
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2007
加速するエモ・ポップ特急 : キッズ・イン・グラス・ハウジーズ (17th Mar. @ ココ、ロンドン)
天才とセンティメンタリズム : ブライト・アイズ (16th Mar. @ ココ、ロンドン)
音楽が音楽であるために : ジ・アワーズ (15th Mar. @ KCL、ロンドン)
踊るインベイダー : ザ・レイクス (12th Mar. @ HMV、ロンドン)
怒れるスコッツ : ビッフィ・クライロ (9th Mar. @ HMV、ロンドン)
フィヨルドの咆哮 : マンドゥ・ディアオ (7th Mar. @ KCL、ロンドン)
お茶の間バンドの平均美学 : カイザー・チーフス (2nd Mar. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
妖女の夢は夜ひらく : ハウリング・ベルズ (25th Feb. @ ココ、ロンドン)
闘う女王様 : ゴシップ (24th Feb. @ アストリア、ロンドン)
密色の調べ : デューク・スペシャル (21st Feb. @ ULU、ロンドン)
天使の微笑み、悪魔の囁き : レジーナ・スペクター (16th Feb. @ アストリア、ロンドン)
CD買うより観においで : ザ・ホロウェイズ (14th Feb. @ ココ、ロンドン)
賢者の演奏 : クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー (13th Feb. @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
真冬のカーニヴァル : ラーリキン・ラヴ (12th Feb. @ ココ、ロンドン)
僕らの音がグラマラス : スウィッチーズ (9th Feb. @ ココ、ロンドン)
弾いて、歌って、踊っちゃう : オーケイ・ゴー (4th Feb. @ ココ、ロンドン)
暴れん坊少年、見参 : ジェイミーT (24th Jan. @ アストリア、ロンドン)
大人のメロディ : セブン・フォー・セブンス (23rd Jan. @ ザ・ボーダーライン、ロンドン)
音も人も青春まっただ中 : ザ・ヴュー (22nd Jan. @ HMV、ロンドン)
2006
皇帝、降臨すれども統治せず : カサビアン (19th Dec. @ アールズ・コート、ロンドン)
北の音、弾ける : アイドルワイルド (4th Dec. @ スカラ、ロンドン)
オらがバンド、ザ・ズートンズ! : ザ・ズートンズ (3rd Dec. @ ラウンドハウス、ロンドン)
節目も何も、余裕です : ザ・シャーラタンズ (16th Nov. @ HMV、ロンドン)
上空戦線異状なし : エアー・トラフィック (31st Oct @ 100クラブ、ロンドン)
聡明な音楽 : ザ・ディアーズ(26th Oct @ ココ、ロンドン)
トレ・ビヤン : フィーニックス(21st Oct @ アストリア、ロンドン)
次期王者、決定 : ザ・クークス(19th Oct @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン)
ラップン・ロール : ジェイミーT(19th Oct @ HMV、ロンドン)
打ち込んで、ぶちかませ : ザ・クーパー・テンプル・クロース(18th Oct @ ココ、ロンドン)
メルヘンなのにやかましや : エレクトリック・ソフト・パレード(12th Oct @ ウォーター・ラッツ、ロンドン)
このライヴを観てから死ね : マキシモ・パーク(6th Oct @ ブリクストン・アカデミー、ロンドン)
日曜の夜はライアンと : ライアン・アダケス&ザ・カーディナルズ(1st Oct @ シェパーズ・ブッシュ・エンパイヤ、ロンドン)
王子から体育会系へ : ディレイズ(21th Sep @ ザ・フェズ、レディング)
勢いあれど : アミューズメント・パークス・オン・ファイア(11th Sep @ ルミナール、ロンドン)
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