buttonヴィック・ルジェーロ & 渡辺俊美
@ 下北沢440 (20th Mar '07)

- バンドを離れた自由人の対決 -


Vic Ruggiero
 手作り感覚あふれる今日のショウは、終始ゆるくて物腰やわらかな笑いあふれるものとなっていた。ステージに目を向ければ、無造作にバスドラムが2台転がっているという表現がぴったりだったけれど、実は計算ずくの絶妙な配置であった。

Vic Ruggiero そんな、一見ちらかり気味のステージにフラッと登場したのは、今日のため特別に作ったTシャツを着ているThe Zoot 16 GB Version。バージョン違いはいくつかあって「GB」がついてないときは基本バンド編成で、飛び入り参加などの場合は渡辺俊美だけってこともある。でも、そのどちらにもステージを見やれば仲間というかファミリーがいて、リズムを刻んでくれたり煽ってくれたりと各自の役割がきっちり振り分けられて、決してひとりというニュアンスではない。こまごま説明するよりも足しげく通ってそれぞれを見たほうが早いかな、とも思う。とにかく自由人だってこと。

 ふと自分ひとり、裸一貫で何ができるか、と思い、そして、リズムを刻んでメロディを乗っける作業を同時にやっちゃってみたらばどうなるか、というところで落ち着いた。ナイロン弦を張ったギターを抱いて、リズムをとるため上下してしまう足にはバスドラムへと通じるペダルをかませるという、シンプルでありながら究極な形を見つけたのだ。

Vic Ruggiero 座る彼の口からはプライベートな話も飛び出したりといつにも増して饒舌だ。親しみが倍増し、皆でくだけたところで、ソウルセット(以下、T1SS)でヴォーカルをとっている"全て光"などを弾きがたる。スペインあたりの雰囲気が漂ってくるけども、どこかデモテイクのような粗さもありかえって生々しい鼓動として響いてくる。もちろんT1SSのオリジナルは完成されていて感嘆するばかりなんだけれど、渡辺俊美に曲のイメージが降ってきたその日その時を再現してくれたような錯覚を覚え、自然と顔だけではなく全身の筋肉が緩んでしまう。そして何より、渡辺俊美自身もザ・スラッカーズとヴィック・ルジェイロのファンということである。ステージから発信してはいるけれど、僕らとなんら変わらないノリでこの日を遊ぼうとしていたのだ。

Vic Ruggiero
 さて、いよいよヴィックだが、こちらの兄ちゃんもいくらかのアルコールが入ったようなたたずまいで、フラリと立ち寄ったかのような気楽さをまとっている。着座すれば、左足は後ろ向きに設置されたバスドラムのペダルへ、右足はハイハットのペダルへと伸び、つま先だけが固定されているといった状況は、一見がんじがらめのようだけれど決してそうではない。ギターをかき鳴らせば、体全体が揺れて、こちらもつられて揺れだしてしまう。自らのルーツとなったブルーズ、フォークにロックンロールがしっかと根をはっていることが容易にうかがえ、こちらは驚いてにやけるばかりだ。手足のみならず口元も忙しく、"Don't Wanna"になった時にはいくらかミュートされたギターに、ザラついた地声とくぐもった声の二つをバランス良くのっけて、間奏になればハーモニカでアクセントをつけていく。調子が激しくなれば、バスドラのペダルが足首に干渉することもいとわずストンプしている。

Vic Ruggiero マディ・ウォーターズやキンクスをカバーし、笑顔の裏に秘めた引き出しの多さを見せるけれど、決して押し売りではなく好きという一心だけで引っぱり出されたものである。ひょっとすると曲順などまるで考えていないかもしれない、雰囲気重視のゆるやかな流れがあり、スラッカーズでも取り上げた"I Shall Be Released(アイ・シャル・ビー・リリースド)"も披露してくれた。そして渡辺俊美とのセッションは、どう言葉でひねろうともセッションとしか言いようがない手探りの感じで、自らの曲と相方の曲をいじっては遊ぶ。クラッシュのカバーで「しくじるなルーディ」と互いにハッパをかけあう光景は、ちょっとしたミスを皮肉って笑いとばしたりと、好き者ならば思わずニヤリとしてしまう。きっと、僕だけではなく皆にとっても忘れることができないものとなったはずだ。それでは、もう今日ですね、ロフトにて、スーツに袖を通したヴィックの違う一面を見てギャップを楽しむとしよう。
Vic Ruggiero

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